🧸- 恋する
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ずっと昔から、保乃は、王子様みたいな人が好きやった。
スマートで、優しくて、かっこよくて。
どんなこともさらりとこなして、だけどその裏では、きっと誰よりも努力してる。
そういう人が、理想だった。
それは、今だって変わってない。
たぶん、きっと、変わってない。
だからこそ、同期の中では、自然と目がいくのはひぃちゃんだった。
完璧で、憧れで、理想そのもの。
気づけば彼女のことを話す機会が増えて、番組やインタビューでも、好意が隠しきれない自分がいた。
ファンの方々もそんなわたしたちの関係を「森田村」と呼んでくれて、たくさんの愛情を向けてくれた。
いつからだろう、仕事現場ではひぃちゃんの隣にいることが増えていて、自然と、それが当たり前になっていた。
保乃も、嫌じゃなかった。
むしろ、嬉しかった。
ひぃちゃんのことは、大好き。
でも――じゃあ「いちばん仲良い同期」は誰かと聞かれたら、それはまた違う答えになる。
いちばん近くにいるのは、きっと、さくらちゃんだった。
加入したその日から、彼女はずっとわたしのそばにいた。
歳は少し離れていたけど、そんなの感じないくらい、自然で、心地よくて。
わたしたちはなんでも言い合える関係だった。
たとえば収録の合間、みんながふざけているのを、わたしはちょっと離れた場所から笑いながら見ているのがいつもの光景。
だけど、さくらちゃんがふざけると、なぜかその輪の中に入りたくなる。
無意識に、わたしまでふざけてしまう。
彼女が引き金になって、わたしたち同期にふざけの連鎖が起こるあの雰囲気が、本当に好きだった。
そして、そんな風に自然にふざけ合える相手は、わたしにとって、さくらちゃんしかいなかった。
それは、さくらちゃんとわたしの間に“恋愛感情”なんてものが一切存在しない、という確信があったからだと思う。
たぶん、そう思っていたのは、わたしだけじゃない。
さくらちゃんも、きっと、そう思っていたはずだった。
それなのに。
――あの日を境に、すべてが少しずつ、音を立てて崩れていった。
ライブの本番前、わたしは自信を無くして、楽屋の隅でうずくまっていた。
言葉にすれば、泣いてしまいそうだった。
気づかれたくなくて、誰にも見つからないようにしていたのに。
ふいに、背中から優しいぬくもりが降ってきた。
なにも言わずに、ぎゅっと抱きしめてくれたその腕。
頭に乗せられた手のひらは、あたたかくて、優しくて、壊れそうなわたしの心を、静かに包み込んでくれた。
――さくらちゃん、だった。
年下なのに、あの瞬間の彼女は、すごく頼もしく見えた。
年上なのはわたしなのに、逆に守られてしまっている気がした。
今までも、何度も慰めあった。
悲しいとき、落ち込んだとき、お互いの弱さを隠さずに見せ合ってきた。
でも、あの日のさくらちゃんの横顔は、まるで初めて見る人みたいで。
気づけば、息が詰まるほど胸が苦しくなっていた。
わたし、今、どうしてこんなに苦しいの?
さくらちゃんに抱きしめられて、鼓動がうるさくて、何も考えられない。
悩んでいたことなんて、全部、どうでもよくなった。
――嘘でしょ、保乃。
まさか、わたし、本気になってる?
そんなはずない。
だって、さくらちゃんは、ふわふわしてて、まるでお姫様みたいな子。
かわいくて、笑い上戸で、女の子らしくて。
今までだったら、まっすぐ「好みじゃない」と言い切れるタイプだった。
なのに、いま、どうして。
さくらちゃんの声も、仕草も、笑い方も、全部が特別に見えてしまう。
心臓の音がうるさいのは、彼女みたいな存在がわたしの人生に初めてできたから?
友達よりも近くて、恋人じゃない。
でも、誰よりも知っていて、誰よりも知ってもらってる。
彼女はきっと知っている。
わたしが王子様みたいな人が好きだってことも。
自分のことが「タイプじゃない」ってことも。
わたしはきっと、バカだった。
なんで、あんなこと言ってしまったんだろう。
さくらちゃんへの気持ちに気づいてからというもの、わたしは、彼女にどう接していいのかわからなくなった。
今まで通り、軽口を叩いて、ふざけ合えばいい。
それだけのはずなのに、言葉がうまく出てこない。
視線の置き方も、間の取り方も、全部がぎこちなくて。
笑顔一つで動揺して、声をかけられるたびに心臓が跳ねる。
なのに、さくらちゃんは、何も変わらず、無邪気に笑っている。
わたしの変化に気づくこともなく、今日も、いつものようにわたしの横で、馬鹿みたいにふざけてる。
ああ、やめて。
そんなふうに笑わないで。
その笑顔が、今はつらい。
わたしはさくらちゃんのこと、タイプじゃないって、ずっと思ってたはずなのに。
「保乃」って呼ぶその声だけで、こんなにも胸が痛くなるなんて、思ってもみなかった。
最近のわたしは、明らかに変だ。
自分でも、制御できない。
さくらちゃんが笑いかけてくれる。
たったそれだけで、世界が一瞬で明るくなったような気がしてしまう。
――それだけで、幸せ。
そう思い込もうとしてるのに、気持ちはどんどん欲張りになっていく。
この関係を壊すくらいなら、こんな想いなんて捨ててしまいたい。
でも、どうしても、捨てられない。
伝えたところで、きっと彼女は困るだけだ。
今の距離が壊れるのは、怖い。
とてもじゃないけど、そんなリスクは背負えない。
それでも。
たった一瞬でいい。
ふざけ合いのフリをしてでもいいから、わたしの手を取って、 「ただの同期だなんて、思ったことない」 って言ってほしい。
女の子として、わたしを見て。
一度でいいから、わたしに触れて。
そんな気持ちが膨らんでいくのに、わたしは今日もまた、バカのフリをして、さくらちゃんの隣で、笑うことしかできない。
――この気持ちに、名前なんてつけたくない。
でも、きっと、もう戻れない。
スマートで、優しくて、かっこよくて。
どんなこともさらりとこなして、だけどその裏では、きっと誰よりも努力してる。
そういう人が、理想だった。
それは、今だって変わってない。
たぶん、きっと、変わってない。
だからこそ、同期の中では、自然と目がいくのはひぃちゃんだった。
完璧で、憧れで、理想そのもの。
気づけば彼女のことを話す機会が増えて、番組やインタビューでも、好意が隠しきれない自分がいた。
ファンの方々もそんなわたしたちの関係を「森田村」と呼んでくれて、たくさんの愛情を向けてくれた。
いつからだろう、仕事現場ではひぃちゃんの隣にいることが増えていて、自然と、それが当たり前になっていた。
保乃も、嫌じゃなかった。
むしろ、嬉しかった。
ひぃちゃんのことは、大好き。
でも――じゃあ「いちばん仲良い同期」は誰かと聞かれたら、それはまた違う答えになる。
いちばん近くにいるのは、きっと、さくらちゃんだった。
加入したその日から、彼女はずっとわたしのそばにいた。
歳は少し離れていたけど、そんなの感じないくらい、自然で、心地よくて。
わたしたちはなんでも言い合える関係だった。
たとえば収録の合間、みんながふざけているのを、わたしはちょっと離れた場所から笑いながら見ているのがいつもの光景。
だけど、さくらちゃんがふざけると、なぜかその輪の中に入りたくなる。
無意識に、わたしまでふざけてしまう。
彼女が引き金になって、わたしたち同期にふざけの連鎖が起こるあの雰囲気が、本当に好きだった。
そして、そんな風に自然にふざけ合える相手は、わたしにとって、さくらちゃんしかいなかった。
それは、さくらちゃんとわたしの間に“恋愛感情”なんてものが一切存在しない、という確信があったからだと思う。
たぶん、そう思っていたのは、わたしだけじゃない。
さくらちゃんも、きっと、そう思っていたはずだった。
それなのに。
――あの日を境に、すべてが少しずつ、音を立てて崩れていった。
ライブの本番前、わたしは自信を無くして、楽屋の隅でうずくまっていた。
言葉にすれば、泣いてしまいそうだった。
気づかれたくなくて、誰にも見つからないようにしていたのに。
ふいに、背中から優しいぬくもりが降ってきた。
なにも言わずに、ぎゅっと抱きしめてくれたその腕。
頭に乗せられた手のひらは、あたたかくて、優しくて、壊れそうなわたしの心を、静かに包み込んでくれた。
――さくらちゃん、だった。
年下なのに、あの瞬間の彼女は、すごく頼もしく見えた。
年上なのはわたしなのに、逆に守られてしまっている気がした。
今までも、何度も慰めあった。
悲しいとき、落ち込んだとき、お互いの弱さを隠さずに見せ合ってきた。
でも、あの日のさくらちゃんの横顔は、まるで初めて見る人みたいで。
気づけば、息が詰まるほど胸が苦しくなっていた。
わたし、今、どうしてこんなに苦しいの?
さくらちゃんに抱きしめられて、鼓動がうるさくて、何も考えられない。
悩んでいたことなんて、全部、どうでもよくなった。
――嘘でしょ、保乃。
まさか、わたし、本気になってる?
そんなはずない。
だって、さくらちゃんは、ふわふわしてて、まるでお姫様みたいな子。
かわいくて、笑い上戸で、女の子らしくて。
今までだったら、まっすぐ「好みじゃない」と言い切れるタイプだった。
なのに、いま、どうして。
さくらちゃんの声も、仕草も、笑い方も、全部が特別に見えてしまう。
心臓の音がうるさいのは、彼女みたいな存在がわたしの人生に初めてできたから?
友達よりも近くて、恋人じゃない。
でも、誰よりも知っていて、誰よりも知ってもらってる。
彼女はきっと知っている。
わたしが王子様みたいな人が好きだってことも。
自分のことが「タイプじゃない」ってことも。
わたしはきっと、バカだった。
なんで、あんなこと言ってしまったんだろう。
さくらちゃんへの気持ちに気づいてからというもの、わたしは、彼女にどう接していいのかわからなくなった。
今まで通り、軽口を叩いて、ふざけ合えばいい。
それだけのはずなのに、言葉がうまく出てこない。
視線の置き方も、間の取り方も、全部がぎこちなくて。
笑顔一つで動揺して、声をかけられるたびに心臓が跳ねる。
なのに、さくらちゃんは、何も変わらず、無邪気に笑っている。
わたしの変化に気づくこともなく、今日も、いつものようにわたしの横で、馬鹿みたいにふざけてる。
ああ、やめて。
そんなふうに笑わないで。
その笑顔が、今はつらい。
わたしはさくらちゃんのこと、タイプじゃないって、ずっと思ってたはずなのに。
「保乃」って呼ぶその声だけで、こんなにも胸が痛くなるなんて、思ってもみなかった。
最近のわたしは、明らかに変だ。
自分でも、制御できない。
さくらちゃんが笑いかけてくれる。
たったそれだけで、世界が一瞬で明るくなったような気がしてしまう。
――それだけで、幸せ。
そう思い込もうとしてるのに、気持ちはどんどん欲張りになっていく。
この関係を壊すくらいなら、こんな想いなんて捨ててしまいたい。
でも、どうしても、捨てられない。
伝えたところで、きっと彼女は困るだけだ。
今の距離が壊れるのは、怖い。
とてもじゃないけど、そんなリスクは背負えない。
それでも。
たった一瞬でいい。
ふざけ合いのフリをしてでもいいから、わたしの手を取って、 「ただの同期だなんて、思ったことない」 って言ってほしい。
女の子として、わたしを見て。
一度でいいから、わたしに触れて。
そんな気持ちが膨らんでいくのに、わたしは今日もまた、バカのフリをして、さくらちゃんの隣で、笑うことしかできない。
――この気持ちに、名前なんてつけたくない。
でも、きっと、もう戻れない。
1/2ページ