🐍🌱🧀夢- ライバル
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「さくらちゃん、男装企画楽しみだね〜!」
「璃花!うん、すっごく楽しみ!昔やってた土生さんの男装、めちゃくちゃかっこよかったよね〜」
楽屋の一角。明るく笑い合うさくらと璃花の声が響く。
その笑顔はまるで春の陽だまりのようで、見ているだけで心があたたかくなる。
…いや、違う。
私はその笑顔に、最初から心を奪われていた。
加入してきたあの日から、ずっとだ。
「え〜!ひぃちゃん、かっこいいやん!」
少し離れたところから保乃の声が飛んできた。
その一言に、私の胸の奥がざわつく。ドキリ、と音がした気がした。
やばい。
さくらが楽しみにしてた男装企画。
私が一番にドキドキさせてやろうって思ってたのに、ひかるに先を越されるなんて。
焦りが滲む。
思わず立ち上がろうとしたその瞬間。
「さくらちゃんのところ、男装した玲ちゃんおるで」
保乃が何気なく放った言葉が、爆弾のように空気を弾けさせた。
「え?」
私とひかるが、同時にさくらのほうへと顔を向ける。
さっきまで璃花と楽しそうに話していたはずのさくらは、いつの間にか──男装したゾノに頭を撫でられていた。
ほら、まただ。
ほんとうに、ゾノは放っておくとすぐこれなんだから。
油断も隙もない。
「ちょっとゾノ!」
「玲ちゃん!」
私とひかるの声が同時に飛び出す。
──私たちは、さくらを巡るライバル。
けれど、ゾノの抜け駆けを阻止するという一点においては、最強の連携を見せる。
息ぴったりに、2人並んでさくらのもとへ駆け寄る。
そのとき、さくらはゾノの手からそっと離れて、ぱっと私たちに笑いかけてきた。
「森田さんも、かっこいいですね」
そのひとことに、ひかるは照れたようににやけを抑えきれず、ゾノはあからさまに不満げな顔をする。
けれど──
「大園さんも、森田さんも、かっこいいです! 大好きです!」
そんな言葉を、愛らしい笑顔とともに放つさくらに、ひかるもゾノも、どこか肩透かしをくらったような、けれど満たされたような、そんな表情になる。
私はまだメイクの順番が回ってきていなくて、男装姿にはなれていなかった。
だから少しだけ、置いてけぼりを食らった気分。
だから、つい、口を突いて出てしまった。
「私も男装するから……そのときは、好きって言ってな?」
さくらはこちらを見て、すぐに笑顔になる。
「天さん、もちろん男装もかっこいいと思いますけど……そのままでも、私は大好きですよ?」
その言葉に、心がぐらりと揺れた。
…もう、ずるい。そういうところ。
ゾノとひかるが横で悔しそうに私を睨んでいたから、ちょっと勝ち誇った顔で挑発してやる。
ささやかな仕返しだ。
番組の中では、ちょっとした“胸きゅん劇”を披露するコーナーもあった。
誰と誰がペアになるかは、男装をしていないメンバーのリクエストで決まる。
私は内心、さくらとペアになれたらいいな……
なんて淡い期待を抱いていたけれど、さくらはどのペアにも選ばれず、観客の立場だった。
少しほっとする。ひかるともゾノとも組まなかったのだから、それだけで十分だった。
甘いセリフを囁きながらも、心のなかでは──「ほんとはさくらだけやで」って思ってた。
でもそれは、私だけじゃない。
ゾノも、ひかるも、同じようにさくらのほうをチラチラと見ていた。
本人はそんなことに全く気づかず、嬉しそうに皆を眺めているだけ。
それでも、その笑顔が見られただけで、今日の収録には意味があった。
そして、運命の結果発表。
「誰が一番かっこよかったと思う?」という問いに、さくらがあげた札は──3期生の美羽のものだった。
あっけないような、納得のような。同期を選ぶって、やっぱりそうだよな。
だけど。
ゾノでも、ひかるでもなかった。それだけで、私はちょっと嬉しかった。
収録後、少しだけ急ぎ足で楽屋に戻る。
珍しく私が一番乗り。
ゾノもひかるも、私より後れていた。
これはチャンス。
楽屋の中、1人で座っているさくらの姿を見つける。
足取りが自然と軽くなる。
「さくら、私の男装、かっこよかったー?」
声をかけると、ぱっと笑顔を向けてくれる。
「とってもかっこよかったです!」
うん。その反応が見たくて来たんだよ。
「……嬉しい。わたしの彼女になってもええんやで?」
冗談めかして囁く。
ゾノもひかるもいない、2人だけの時間。
……のはずだったのに。
「天!!!!」
「天ちゃん!!!!」
さくらの左右から、爆風のように現れる2人。
なんでこう、タイミングが悪いのか。
「ちぇー……」
ため息をつきながら、さくらの笑顔をちらりと見る。
──まあ、見られたなら仕方ないか。
そのあとは3人でさくらを囲んで、「誰が一番かっこよかったか」議論が始まる。
けれどさくらは、困ったように目を細めて、笑いながらこう言うだけだった。
「皆さん、かっこよかったですよ?」
その言葉に、私たちはそれぞれ小さな敗北を感じながら、でも不思議と心はあたたかかった。
今日のところは──引き分け、ということにしておこう。
「璃花!うん、すっごく楽しみ!昔やってた土生さんの男装、めちゃくちゃかっこよかったよね〜」
楽屋の一角。明るく笑い合うさくらと璃花の声が響く。
その笑顔はまるで春の陽だまりのようで、見ているだけで心があたたかくなる。
…いや、違う。
私はその笑顔に、最初から心を奪われていた。
加入してきたあの日から、ずっとだ。
「え〜!ひぃちゃん、かっこいいやん!」
少し離れたところから保乃の声が飛んできた。
その一言に、私の胸の奥がざわつく。ドキリ、と音がした気がした。
やばい。
さくらが楽しみにしてた男装企画。
私が一番にドキドキさせてやろうって思ってたのに、ひかるに先を越されるなんて。
焦りが滲む。
思わず立ち上がろうとしたその瞬間。
「さくらちゃんのところ、男装した玲ちゃんおるで」
保乃が何気なく放った言葉が、爆弾のように空気を弾けさせた。
「え?」
私とひかるが、同時にさくらのほうへと顔を向ける。
さっきまで璃花と楽しそうに話していたはずのさくらは、いつの間にか──男装したゾノに頭を撫でられていた。
ほら、まただ。
ほんとうに、ゾノは放っておくとすぐこれなんだから。
油断も隙もない。
「ちょっとゾノ!」
「玲ちゃん!」
私とひかるの声が同時に飛び出す。
──私たちは、さくらを巡るライバル。
けれど、ゾノの抜け駆けを阻止するという一点においては、最強の連携を見せる。
息ぴったりに、2人並んでさくらのもとへ駆け寄る。
そのとき、さくらはゾノの手からそっと離れて、ぱっと私たちに笑いかけてきた。
「森田さんも、かっこいいですね」
そのひとことに、ひかるは照れたようににやけを抑えきれず、ゾノはあからさまに不満げな顔をする。
けれど──
「大園さんも、森田さんも、かっこいいです! 大好きです!」
そんな言葉を、愛らしい笑顔とともに放つさくらに、ひかるもゾノも、どこか肩透かしをくらったような、けれど満たされたような、そんな表情になる。
私はまだメイクの順番が回ってきていなくて、男装姿にはなれていなかった。
だから少しだけ、置いてけぼりを食らった気分。
だから、つい、口を突いて出てしまった。
「私も男装するから……そのときは、好きって言ってな?」
さくらはこちらを見て、すぐに笑顔になる。
「天さん、もちろん男装もかっこいいと思いますけど……そのままでも、私は大好きですよ?」
その言葉に、心がぐらりと揺れた。
…もう、ずるい。そういうところ。
ゾノとひかるが横で悔しそうに私を睨んでいたから、ちょっと勝ち誇った顔で挑発してやる。
ささやかな仕返しだ。
番組の中では、ちょっとした“胸きゅん劇”を披露するコーナーもあった。
誰と誰がペアになるかは、男装をしていないメンバーのリクエストで決まる。
私は内心、さくらとペアになれたらいいな……
なんて淡い期待を抱いていたけれど、さくらはどのペアにも選ばれず、観客の立場だった。
少しほっとする。ひかるともゾノとも組まなかったのだから、それだけで十分だった。
甘いセリフを囁きながらも、心のなかでは──「ほんとはさくらだけやで」って思ってた。
でもそれは、私だけじゃない。
ゾノも、ひかるも、同じようにさくらのほうをチラチラと見ていた。
本人はそんなことに全く気づかず、嬉しそうに皆を眺めているだけ。
それでも、その笑顔が見られただけで、今日の収録には意味があった。
そして、運命の結果発表。
「誰が一番かっこよかったと思う?」という問いに、さくらがあげた札は──3期生の美羽のものだった。
あっけないような、納得のような。同期を選ぶって、やっぱりそうだよな。
だけど。
ゾノでも、ひかるでもなかった。それだけで、私はちょっと嬉しかった。
収録後、少しだけ急ぎ足で楽屋に戻る。
珍しく私が一番乗り。
ゾノもひかるも、私より後れていた。
これはチャンス。
楽屋の中、1人で座っているさくらの姿を見つける。
足取りが自然と軽くなる。
「さくら、私の男装、かっこよかったー?」
声をかけると、ぱっと笑顔を向けてくれる。
「とってもかっこよかったです!」
うん。その反応が見たくて来たんだよ。
「……嬉しい。わたしの彼女になってもええんやで?」
冗談めかして囁く。
ゾノもひかるもいない、2人だけの時間。
……のはずだったのに。
「天!!!!」
「天ちゃん!!!!」
さくらの左右から、爆風のように現れる2人。
なんでこう、タイミングが悪いのか。
「ちぇー……」
ため息をつきながら、さくらの笑顔をちらりと見る。
──まあ、見られたなら仕方ないか。
そのあとは3人でさくらを囲んで、「誰が一番かっこよかったか」議論が始まる。
けれどさくらは、困ったように目を細めて、笑いながらこう言うだけだった。
「皆さん、かっこよかったですよ?」
その言葉に、私たちはそれぞれ小さな敗北を感じながら、でも不思議と心はあたたかかった。
今日のところは──引き分け、ということにしておこう。
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