🌱- はにかみ
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楽屋の空気は、今日も相変わらずのんびりしていて、ちょっとだけ緩くて。
レッスン終わりのメンバーたちがそれぞれ自分のタイミングで着替えたり、差し入れのドーナツをつついたり、メイクを直したり。
そんな中で、ひときわ楽しそうな声が聞こえてくる。
「髪長いっ子ってさ〜やっぱかわいいよね〜。なんか、女の子って感じするし、ふわふわしてて愛おしくなる〜」
「ふわふわロングしか勝たん、ってやつ!」
笑い声が混じるその声の主は、やっぱりさくらだった。
誰かに話しかけるでもなく、でもちゃんと周りの子たちが笑ってくれていて、自然と輪の中心にいる。
彼女は、そういう人だ。無邪気で、あたたかくて、どこにいても誰かに好かれる。私が惹かれた理由のひとつ。
── さくらは、なんとなく話していただけ。
冗談半分の、ノリみたいなもの。
本気じゃないって、分かってる。分かってるはずなのに。
気づけば私は、自分の姿を鏡の中に探していた。
肩につくかどうか、ぎりぎりの長さの髪。
湿気で外ハネした毛先を無意識に撫でて、そこから視線を落とす。
さくらは、私のことを「かわいい」って何度も言ってくれる。
仕事でも、プライベートでも、ふとした瞬間にそう言ってくれる。
でも……やっぱり本当は、髪の長い女の子のほうが、好みだったりするのかな。
そんなことを考えてしまう自分が嫌だった。
だけど、そうやって比べてしまう自分が確かにここにいた。
──髪、伸ばしてみようかな。
その晩、帰りの車両の窓に映る自分の顔は、少しだけ揺れていた。
次の日、私はスタッフさんに「髪を伸ばしてみたい」と伝えた。
アイドルとしてのビジュアルは、個人の好みだけでは決められないのは分かっていたから、許可が降りるかどうかは半分諦めながら。
「今のイメージがファンにも定着してるし、急に伸ばすのはねえ……」
最初は渋られた。でも、それでも私は伝えた。
少しずつでもいいから、伸ばしてみたいって。
しばらくやり取りを重ねて、ようやく、ゆるやかな許可が下りた。
「じゃあ、少しずつね」って。
そのとき、胸の奥にふわっと何かが灯った気がした。
どこかで期待している自分がいる。
さくらに、もっとかわいいって思ってもらえるかもしれないって。
……そんなこと考えてるなんて、私らしくないな。
ひとりで顔を熱くしながら、スマホのカメラをそっと立ち上げた。
伸ばしかけの髪。ほんの少しだけ、それが愛おしく思えた。
季節が変わって、髪は静かに、でも確実に伸びていった。
肩を超えて、鎖骨を越えて、気づけば胸元あたりまで届くようになっていた。
ドライヤーに時間がかかるのは少し面倒だったけど、それすら楽しく感じていた。
だってこれは、さくらの言葉から始まったことだから。
そんなある日のこと。
レッスン後、楽屋でメイクを落としていると、後ろからふわりと柔らかい手が伸びてきた。
「ひかる〜、やっぱ髪、めっちゃ長くなったね!」
驚いたような、でもどこか嬉しそうな声がすぐ耳元に落ちる。
「ほんと新鮮〜!ひかるのロングってなんか大人っぽく見えるね。なんで伸ばし始めたの〜?」
その問いかけに、思わず息をのむ。
いよいよこの時が来たか、なんて構えていたわけじゃないのに、頭がふわふわして答えに迷った。
「えー……なんとなく、かな? さくらは……長い方が好き?」
思ってたよりも真面目な声が出てしまって、自分でも少し驚いた。
でも、気になって仕方がなかった。
今の自分が、さくらにとってどう映っているのかを。
さくらは小さく唇を尖らせて考え込むように首を傾げる。
「うーん、もちろん長いのも可愛いよ? でもね……」
「私、ひかると付き合い始めたとき、ひかる髪短かったじゃん。だからあの頃のイメージもすごく思い入れあって、好きなんだよね」
「でもね、どっちも好きだよ?」
にこっと笑う彼女の顔を見たとき、なんだか胸がきゅっと苦しくなってしまって、思わず口が勝手に動いた。
「さくらが髪長い子好きって言ってたから伸ばしてたのに、そんなこと言われたら私、馬鹿みたいじゃん……」
声に出した瞬間、取り返しがつかない気がして怖くなった。
だけどもう、引っ込められなかった。
「えっ、ひかる、そうだったの……?」
「そうだよ。自分は髪短いのに、恋人にロングが好きって言われる気持ち、わかんないでしょ!?」
声が少し荒れてしまう。
でももう止められなかった。
全部言わなきゃ、気が済まなかった。
でも、そんな私の前髪をやさしく撫でながら、さくらは変わらない笑顔で言った。
「ごめんね、ひかる」
「私ね、毎日ひかるのことがもっともっと好きになってくの。たしかにロングの女の子好きかもしれないけど、それすらどうでもよくなっちゃうくらい、ひかるが好き」
「それに何よりね……私のために髪を伸ばしてくれてたひかるが、もう、本当に……かわいくて、たまらないくらい大好き」
その言葉に、私の中で固まっていた感情が、静かに溶けていく。
そして、柔らかく私を抱きしめてくるさくらの腕に、自然と身体を預けてしまった。
「さくらが、もし短いほうが好きなら……切ろうかな」
小さく呟いた私に、さくらはほんの一瞬だけ固まって、それから慌てて首を振った。
「まって!まだ切らないで!ひかるが私のひと言で髪伸ばしてたなんて……そんなの、可愛すぎて噛み締めないと損でしょ……!」
あまりに本気でふざけたようなことを言うから、私は小さくお腹をこづいた。
「ばか」
「うっ、い、いた〜い!ひかるさん、暴力はんたーい!」
さくらが騒いでいるけれど、もう怒る気なんてすっかりなくなっていて。
そのまままた、彼女の胸の中に収まった。
心臓の音が、やさしく耳に響いてくる。
──この人には、どうやったって敵わない。
私は、心の底からそう思った。
そしてその感情は、これからもずっと変わらない気がした。
レッスン終わりのメンバーたちがそれぞれ自分のタイミングで着替えたり、差し入れのドーナツをつついたり、メイクを直したり。
そんな中で、ひときわ楽しそうな声が聞こえてくる。
「髪長いっ子ってさ〜やっぱかわいいよね〜。なんか、女の子って感じするし、ふわふわしてて愛おしくなる〜」
「ふわふわロングしか勝たん、ってやつ!」
笑い声が混じるその声の主は、やっぱりさくらだった。
誰かに話しかけるでもなく、でもちゃんと周りの子たちが笑ってくれていて、自然と輪の中心にいる。
彼女は、そういう人だ。無邪気で、あたたかくて、どこにいても誰かに好かれる。私が惹かれた理由のひとつ。
── さくらは、なんとなく話していただけ。
冗談半分の、ノリみたいなもの。
本気じゃないって、分かってる。分かってるはずなのに。
気づけば私は、自分の姿を鏡の中に探していた。
肩につくかどうか、ぎりぎりの長さの髪。
湿気で外ハネした毛先を無意識に撫でて、そこから視線を落とす。
さくらは、私のことを「かわいい」って何度も言ってくれる。
仕事でも、プライベートでも、ふとした瞬間にそう言ってくれる。
でも……やっぱり本当は、髪の長い女の子のほうが、好みだったりするのかな。
そんなことを考えてしまう自分が嫌だった。
だけど、そうやって比べてしまう自分が確かにここにいた。
──髪、伸ばしてみようかな。
その晩、帰りの車両の窓に映る自分の顔は、少しだけ揺れていた。
次の日、私はスタッフさんに「髪を伸ばしてみたい」と伝えた。
アイドルとしてのビジュアルは、個人の好みだけでは決められないのは分かっていたから、許可が降りるかどうかは半分諦めながら。
「今のイメージがファンにも定着してるし、急に伸ばすのはねえ……」
最初は渋られた。でも、それでも私は伝えた。
少しずつでもいいから、伸ばしてみたいって。
しばらくやり取りを重ねて、ようやく、ゆるやかな許可が下りた。
「じゃあ、少しずつね」って。
そのとき、胸の奥にふわっと何かが灯った気がした。
どこかで期待している自分がいる。
さくらに、もっとかわいいって思ってもらえるかもしれないって。
……そんなこと考えてるなんて、私らしくないな。
ひとりで顔を熱くしながら、スマホのカメラをそっと立ち上げた。
伸ばしかけの髪。ほんの少しだけ、それが愛おしく思えた。
季節が変わって、髪は静かに、でも確実に伸びていった。
肩を超えて、鎖骨を越えて、気づけば胸元あたりまで届くようになっていた。
ドライヤーに時間がかかるのは少し面倒だったけど、それすら楽しく感じていた。
だってこれは、さくらの言葉から始まったことだから。
そんなある日のこと。
レッスン後、楽屋でメイクを落としていると、後ろからふわりと柔らかい手が伸びてきた。
「ひかる〜、やっぱ髪、めっちゃ長くなったね!」
驚いたような、でもどこか嬉しそうな声がすぐ耳元に落ちる。
「ほんと新鮮〜!ひかるのロングってなんか大人っぽく見えるね。なんで伸ばし始めたの〜?」
その問いかけに、思わず息をのむ。
いよいよこの時が来たか、なんて構えていたわけじゃないのに、頭がふわふわして答えに迷った。
「えー……なんとなく、かな? さくらは……長い方が好き?」
思ってたよりも真面目な声が出てしまって、自分でも少し驚いた。
でも、気になって仕方がなかった。
今の自分が、さくらにとってどう映っているのかを。
さくらは小さく唇を尖らせて考え込むように首を傾げる。
「うーん、もちろん長いのも可愛いよ? でもね……」
「私、ひかると付き合い始めたとき、ひかる髪短かったじゃん。だからあの頃のイメージもすごく思い入れあって、好きなんだよね」
「でもね、どっちも好きだよ?」
にこっと笑う彼女の顔を見たとき、なんだか胸がきゅっと苦しくなってしまって、思わず口が勝手に動いた。
「さくらが髪長い子好きって言ってたから伸ばしてたのに、そんなこと言われたら私、馬鹿みたいじゃん……」
声に出した瞬間、取り返しがつかない気がして怖くなった。
だけどもう、引っ込められなかった。
「えっ、ひかる、そうだったの……?」
「そうだよ。自分は髪短いのに、恋人にロングが好きって言われる気持ち、わかんないでしょ!?」
声が少し荒れてしまう。
でももう止められなかった。
全部言わなきゃ、気が済まなかった。
でも、そんな私の前髪をやさしく撫でながら、さくらは変わらない笑顔で言った。
「ごめんね、ひかる」
「私ね、毎日ひかるのことがもっともっと好きになってくの。たしかにロングの女の子好きかもしれないけど、それすらどうでもよくなっちゃうくらい、ひかるが好き」
「それに何よりね……私のために髪を伸ばしてくれてたひかるが、もう、本当に……かわいくて、たまらないくらい大好き」
その言葉に、私の中で固まっていた感情が、静かに溶けていく。
そして、柔らかく私を抱きしめてくるさくらの腕に、自然と身体を預けてしまった。
「さくらが、もし短いほうが好きなら……切ろうかな」
小さく呟いた私に、さくらはほんの一瞬だけ固まって、それから慌てて首を振った。
「まって!まだ切らないで!ひかるが私のひと言で髪伸ばしてたなんて……そんなの、可愛すぎて噛み締めないと損でしょ……!」
あまりに本気でふざけたようなことを言うから、私は小さくお腹をこづいた。
「ばか」
「うっ、い、いた〜い!ひかるさん、暴力はんたーい!」
さくらが騒いでいるけれど、もう怒る気なんてすっかりなくなっていて。
そのまままた、彼女の胸の中に収まった。
心臓の音が、やさしく耳に響いてくる。
──この人には、どうやったって敵わない。
私は、心の底からそう思った。
そしてその感情は、これからもずっと変わらない気がした。
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