🌺- 秘密の味
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日はバレンタイン。
廊下を歩いていると、いろんなところで「ありがとう」とか「かわい〜!」なんて声が飛び交ってて、教室の中もチョコレートの甘い匂いで満ちている。
バレンタインって、好きな人に告白する日ってイメージだったけど、最近は友チョコとか感謝チョコとか、いろんなかたちがあるから、ちょっとしたイベント感覚で好きだったりする。
私も、いくつか小さなカップケーキを焼いてきた。
ラッピングもちゃんとして、かわいく仕上げたつもり。
本命……ってほどじゃない。
でも、誰に渡すかは、ちゃんと考えた。
ひとつ、紙袋の中に残ったカップケーキ。
あげようか、やめようか、さっきからずっと迷っていた。
その子とは、そこまで仲良いわけじゃない。
会話もたまにする程度。
名前はもちろん知ってるし、共通の友達もいる。
ひかるとも仲が良さそうだし。
なんとなく、気になる子。
というより、目で追ってしまう子——だった。
いつも楽しそうに笑ってて、ちょっとドジなときもあって、それでもまっすぐで飾らない。
誰にでも「大好き!」って言ってしまうような、まるで子犬みたいな無邪気さがある。
だからこそ、怖かった。
そんな彼女に、私の気持ちなんて、軽く受け流されてしまうんじゃないかって。
でも、今日くらいは。
伝わらなくてもいい。
ほんの少しでも、記憶に残れば。
そう思って、カップケーキを握りしめて歩き出した。
見つけた彼女は、ひかるや保乃ちゃんと楽しそうにチョコを分け合っていた。
声をかけるタイミングを何度か見逃した後、やっとの思いで彼女のそばに立つ。
「さくら、これあげる」
カップケーキを差し出すと、彼女は目をまん丸にしてこっちを見た。
「えー、どしたのこれ?」
「今日、バレンタインでしょ」
私の声は、少し震えていたかもしれない。
でも、彼女の返事は想像以上に明るくて、まっすぐだった。
「えー!ありがとう!え、うれしい、大好き!」
あっけらかんとした声。思わず笑ってしまいそうになる。
ああ、やっぱりこの子、こういう子なんだって。
でも次の瞬間、彼女の顔が急に真剣になった。
「でも待ってごめん、私返せるもんないわ」
「全然いいよ。渡したかっただけ」
それは、本当だった。見返りなんて、求めてなかった。
ただ、今日という日に、ほんの少し、勇気を出してみたかっただけ。
「絶対ホワイトデー返すね!!!ありがと!!!」
彼女の声が響く。
思わず笑って、私はその場を離れた。
振り返らなかったけれど、きっと彼女はチョコを見つめてる。
——気付いてほしい、とは特別思わなかった。
でも、もしほんの少しでも、彼女の心に引っかかってくれたなら。
そんなことを思いながら、廊下を歩いていると、遠くから聞こえてくる声があった。
「それ本命じゃん!」
——ああ、気付かれてるじゃん。
その声に、つい顔がほころんでしまう。
さくらは、きっとまだ気付いてない。
それでいい。今はそれで、十分。
ただの友チョコみたいな顔をして、ラッピングにはこっそり「特別」を詰め込んだ。
私のカップケーキ。
彼女がいつか、意味にたどり着いてくれたら
——それで、いい。
廊下を歩いていると、いろんなところで「ありがとう」とか「かわい〜!」なんて声が飛び交ってて、教室の中もチョコレートの甘い匂いで満ちている。
バレンタインって、好きな人に告白する日ってイメージだったけど、最近は友チョコとか感謝チョコとか、いろんなかたちがあるから、ちょっとしたイベント感覚で好きだったりする。
私も、いくつか小さなカップケーキを焼いてきた。
ラッピングもちゃんとして、かわいく仕上げたつもり。
本命……ってほどじゃない。
でも、誰に渡すかは、ちゃんと考えた。
ひとつ、紙袋の中に残ったカップケーキ。
あげようか、やめようか、さっきからずっと迷っていた。
その子とは、そこまで仲良いわけじゃない。
会話もたまにする程度。
名前はもちろん知ってるし、共通の友達もいる。
ひかるとも仲が良さそうだし。
なんとなく、気になる子。
というより、目で追ってしまう子——だった。
いつも楽しそうに笑ってて、ちょっとドジなときもあって、それでもまっすぐで飾らない。
誰にでも「大好き!」って言ってしまうような、まるで子犬みたいな無邪気さがある。
だからこそ、怖かった。
そんな彼女に、私の気持ちなんて、軽く受け流されてしまうんじゃないかって。
でも、今日くらいは。
伝わらなくてもいい。
ほんの少しでも、記憶に残れば。
そう思って、カップケーキを握りしめて歩き出した。
見つけた彼女は、ひかるや保乃ちゃんと楽しそうにチョコを分け合っていた。
声をかけるタイミングを何度か見逃した後、やっとの思いで彼女のそばに立つ。
「さくら、これあげる」
カップケーキを差し出すと、彼女は目をまん丸にしてこっちを見た。
「えー、どしたのこれ?」
「今日、バレンタインでしょ」
私の声は、少し震えていたかもしれない。
でも、彼女の返事は想像以上に明るくて、まっすぐだった。
「えー!ありがとう!え、うれしい、大好き!」
あっけらかんとした声。思わず笑ってしまいそうになる。
ああ、やっぱりこの子、こういう子なんだって。
でも次の瞬間、彼女の顔が急に真剣になった。
「でも待ってごめん、私返せるもんないわ」
「全然いいよ。渡したかっただけ」
それは、本当だった。見返りなんて、求めてなかった。
ただ、今日という日に、ほんの少し、勇気を出してみたかっただけ。
「絶対ホワイトデー返すね!!!ありがと!!!」
彼女の声が響く。
思わず笑って、私はその場を離れた。
振り返らなかったけれど、きっと彼女はチョコを見つめてる。
——気付いてほしい、とは特別思わなかった。
でも、もしほんの少しでも、彼女の心に引っかかってくれたなら。
そんなことを思いながら、廊下を歩いていると、遠くから聞こえてくる声があった。
「それ本命じゃん!」
——ああ、気付かれてるじゃん。
その声に、つい顔がほころんでしまう。
さくらは、きっとまだ気付いてない。
それでいい。今はそれで、十分。
ただの友チョコみたいな顔をして、ラッピングにはこっそり「特別」を詰め込んだ。
私のカップケーキ。
彼女がいつか、意味にたどり着いてくれたら
——それで、いい。