🎯🌱🧸主- ドリーマー
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小学生の頃から、私たちはずっと一緒にいた。
「美青!」
いつものように、明るく名前を呼んでくれるさくらの声。
くしゃっと笑ったその顔を見つめながら、私は胸の奥にほのかな温かさを覚える。
そう、私はこの笑顔が、ずっと、ずっと好きだった。
私にとって、さくらは特別な存在だ。
——そして、きっと、さくらにとっても私がそうであると信じていた。
気がついたときには、恋をしていた。
それがいつからだったのか、はっきりと思い出せないけれど、手を繋いで帰った帰り道や、一緒にお弁当を食べながら笑い合った昼休み、ふとした瞬間に見せる無防備な寝顔……
そんなひとつひとつが、私の心に少しずつ色を差していった。
春。
私たちは同じ高校に進学した。
新しい制服に身を包み、少し大きな鞄を肩にかけて、緊張と期待が入り混じる心を抱えながら校門をくぐったあの日。
これから始まる高校生活の中で、恋をする人がきっと増えていく。
だったら、私たちも……そろそろ、付き合ってもいいんじゃないか。
そんな淡い夢を、私は本気で描いていた。
運命は私に微笑んだようで、一年目のクラスはさくらと同じだった。
教室の名簿に並んだ名前を見て、心の中で小さくガッツポーズをしたのを覚えている。
放課後にはふたり並んで帰り、昼休みには机を寄せてお弁当を食べる。
テスト前には勉強がちょっぴり苦手なさくらに問題を出してあげて、さくらはさくらで、昨日見たテレビや新しくハマった漫画の話を夢中でしてくる。
私は、ただ頷きながらその話を聞くのが好きだった。
何も変わらない。
小学生の頃から続いてきた関係が、高校になってもそのまま続いている。
それが、何よりも幸せだった。
告白なんてしなくても、このままでいいんじゃないかな。
そんな風に、ちょっとだけ甘えた気持ちも芽生えていた。
けれど、そんな平穏な日々は、ある日ふいに訪れた一言で崩れてしまった。
「ねぇ、美青はさ、好きな人とかいないの?」
さくらが、いたずらっぽい笑みを浮かべながら聞いてきた。
それは、小学校の頃から何度も見てきた顔。
こういうときのさくらは、自分の話も聞いてほしいときだ。
けれど、今の問いかけは——あまりにも、核心に触れすぎていた。
好きな人……?
まさか、私のこと……?
けれど、そんな素振りはこれまでなかった。
だとしたら、別の誰かのこと?
言葉を選びながら、なんとか聞き返す。
「…じゃあ、さくらは? 好きな人、いるの?」
私の声に、さくらは待ってましたとばかりに顔を明るくさせて、はっきりと名前を告げた。
「わたしはねー、田村先輩!」
その瞬間、世界が音を失った気がした。
さくらの口から、私ではない誰かの名前が出てきたという事実が、胸の中で鋭く弾けた。
「へー、そうなんだ…」
ようやく絞り出したその言葉は、自分の耳には遠くの誰かが話しているみたいに聞こえた。
声は震えていなかっただろうか。
笑えていただろうか。
いつも通りの私を、ちゃんと演じられていただろうか。
そのあとのさくらの声は、もうほとんど耳に入ってこなかった。
田村先輩がどんな人で、どこが好きで、どんなふうに接しているのか——
そんな話を楽しそうに続けるさくらの横で、私はただ相槌を打つふりをしながら、心の中で静かに崩れていった。
「応援してくれる?」
かろうじて届いたその言葉に、私はうなずいた。
うなずくことしか、もうできなかった。
「美青!」
いつものように、明るく名前を呼んでくれるさくらの声。
くしゃっと笑ったその顔を見つめながら、私は胸の奥にほのかな温かさを覚える。
そう、私はこの笑顔が、ずっと、ずっと好きだった。
私にとって、さくらは特別な存在だ。
——そして、きっと、さくらにとっても私がそうであると信じていた。
気がついたときには、恋をしていた。
それがいつからだったのか、はっきりと思い出せないけれど、手を繋いで帰った帰り道や、一緒にお弁当を食べながら笑い合った昼休み、ふとした瞬間に見せる無防備な寝顔……
そんなひとつひとつが、私の心に少しずつ色を差していった。
春。
私たちは同じ高校に進学した。
新しい制服に身を包み、少し大きな鞄を肩にかけて、緊張と期待が入り混じる心を抱えながら校門をくぐったあの日。
これから始まる高校生活の中で、恋をする人がきっと増えていく。
だったら、私たちも……そろそろ、付き合ってもいいんじゃないか。
そんな淡い夢を、私は本気で描いていた。
運命は私に微笑んだようで、一年目のクラスはさくらと同じだった。
教室の名簿に並んだ名前を見て、心の中で小さくガッツポーズをしたのを覚えている。
放課後にはふたり並んで帰り、昼休みには机を寄せてお弁当を食べる。
テスト前には勉強がちょっぴり苦手なさくらに問題を出してあげて、さくらはさくらで、昨日見たテレビや新しくハマった漫画の話を夢中でしてくる。
私は、ただ頷きながらその話を聞くのが好きだった。
何も変わらない。
小学生の頃から続いてきた関係が、高校になってもそのまま続いている。
それが、何よりも幸せだった。
告白なんてしなくても、このままでいいんじゃないかな。
そんな風に、ちょっとだけ甘えた気持ちも芽生えていた。
けれど、そんな平穏な日々は、ある日ふいに訪れた一言で崩れてしまった。
「ねぇ、美青はさ、好きな人とかいないの?」
さくらが、いたずらっぽい笑みを浮かべながら聞いてきた。
それは、小学校の頃から何度も見てきた顔。
こういうときのさくらは、自分の話も聞いてほしいときだ。
けれど、今の問いかけは——あまりにも、核心に触れすぎていた。
好きな人……?
まさか、私のこと……?
けれど、そんな素振りはこれまでなかった。
だとしたら、別の誰かのこと?
言葉を選びながら、なんとか聞き返す。
「…じゃあ、さくらは? 好きな人、いるの?」
私の声に、さくらは待ってましたとばかりに顔を明るくさせて、はっきりと名前を告げた。
「わたしはねー、田村先輩!」
その瞬間、世界が音を失った気がした。
さくらの口から、私ではない誰かの名前が出てきたという事実が、胸の中で鋭く弾けた。
「へー、そうなんだ…」
ようやく絞り出したその言葉は、自分の耳には遠くの誰かが話しているみたいに聞こえた。
声は震えていなかっただろうか。
笑えていただろうか。
いつも通りの私を、ちゃんと演じられていただろうか。
そのあとのさくらの声は、もうほとんど耳に入ってこなかった。
田村先輩がどんな人で、どこが好きで、どんなふうに接しているのか——
そんな話を楽しそうに続けるさくらの横で、私はただ相槌を打つふりをしながら、心の中で静かに崩れていった。
「応援してくれる?」
かろうじて届いたその言葉に、私はうなずいた。
うなずくことしか、もうできなかった。
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