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さくらに、初めて告白されたとき。
「どうしてそんなにまっすぐなの」って、思った。
正直、戸惑った。
でも——同時に、うれしかった。
ふわっとした声で、目をまっすぐ見つめて「好きです」と言われたあの瞬間のことを、私はずっと忘れられない。
付き合うようになってからも、彼女は変わらなかった。
名前で呼んでほしい、とか、
他の3期生と仲良くしすぎるのはちょっと嫉妬します、とか。
そんなことまで、ちゃんと口にしてくれた。
たぶん普通なら、重いって思うのかもしれない。
でも私は……ただ、怖かった。
あの子の言葉も、想いも、全部が真っ直ぐすぎて。
それをちゃんと受け止めきれる自信が、なかった。
私が返したのは、曖昧な笑顔と、頷くだけの反応ばかり。
拒絶するつもりはなかった。むしろ、嬉しくて仕方なかった。
……でも、私があの子に与えていたのは、ただの“やさしい人”の仮面だったのかもしれない。
私の中にはいつも、迷いがあった。
好きだって言葉にすれば、踏み込めば、どこかでさくらを壊してしまう気がして。
だから、私は優しさの裏に逃げ続けていた。
レッスン終わりに、さくらに呼び止められた日。
「藤吉さん、今日の帰り……少しだけ、お時間いいですか?」
その声が、どこか遠くて。
いつもと同じように笑って返したけど、心のどこかで、なにかが違うと感じていた。
「どしたの? いいけど」
でも、それ以上は聞かなかった。
だって、もし踏み込んだら、何かが終わってしまう気がして——
また、私は怖くなった。
誰もいない楽屋。
そこにひとりでいるさくらを見た瞬間、胸がざわついた。
俯いて、両手を握りしめて、小さく震えている。
あの子がそんな姿を見せるなんて、これまで一度もなかったのに。
「さくら? どしたの?」
なるべく、いつも通りの声で呼んだ。
でも、あの子の口から出てきたのは、思いもしなかった言葉だった。
「……藤吉さん、もう……終わりにしましょう」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「えっ? なに言って——」
「私のわがままに、ずっと合わせてくれてありがとうございました。……もう、大丈夫です。無理、させてすみませんでした」
バッグを持って立ち上がろうとした彼女の腕を、反射的に掴んでいた。
……このままじゃダメだって、本能が叫んでいた。
頬に手を添えて、顔をこっちに向けさせる。
「……全然、意味が分からない。さくら、そんな顔して、何言ってるの」
「だから、別れましょうって。……もう、いいんです」
「いいわけないでしょ」
そして気づいたら、唇を重ねていた。
初めてだった。
こんなに、あの子に触れたいって、思ったのは。
「ちょっ……藤吉さん……」
「なに? さくら、もう私のこと好きじゃなくなったの? 他に好きな人できた?」
「そんなこと、あるわけないじゃないですか……」
「じゃあ、なんで別れるなんて言うの?」
「……藤吉さんが優しすぎて。優しいだけで、好きって言葉は、ずっと……なくて……」
その言葉を聞いて、胸がぎゅっと締め付けられた。
「……そっか、ごめん」
さくらを泣かせていたのは、全部私だった。
「さくらがあまりにも純粋で、まっすぐで……なんか、私が壊しそうで怖かった。だから、踏み込めなかったんだ。でも、ちゃんと、好きだから」
やっと本音が口から出た。
そのときのさくらの目。忘れられない。
「……ちゃんと、好きって言葉でも、行動でも伝えてくれるなら……もう一回だけ、チャンスあげます」
言いたいことはたくさんあるのに言葉が出てこなくて、 ただ抱きしめることで、すべてを伝えようとした。
「ありがとう、……さくら、だいすき」
そのあと、彼女がぽつりと言った。
「あと……藤吉さん、私そんなに純粋じゃないです」
「……え」
「だいすきですよ。……帰りましょ」
その言葉に、ようやく笑えた。
手を繋ぎながら、私は小さく言う。
「ねえ、さくら。今日、うち来て」
「……はい。藤吉さんの家、久しぶりでうれしいです」
手のひらのぬくもりが、信じられないくらいに愛しくて、
この夜が、どうかずっと続いてほしいと願ってしまう。
「さくら、好きだよ」
ずっと言えなかった言葉を、今は何度でも言える。
言いたい。伝えたい。触れながら、確かめたい。
私が彼女を好きだという気持ちは、本物なんだと。
ようやく伝えられる今が、何よりも幸せだった。
「……わたしもですよ、藤吉さん」
「ねえ、さくらも……下の名前で呼んで?」
「……へへ、夏鈴さん、大好きです」
「……うん。疲れたでしょ。さくら。おやすみ」
「おやすみなさい、夏鈴さん」
——どうか、この日々がずっと続いていきますように。
今度は逃げない。
ちゃんと、手を繋いで、隣にいる。
それが私にとっての、愛のかたち。
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