🦒- どうか君も
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いのりちゃんに誘われたのは、ほんの数日前だった。
「ボウリング行かへん?」
そう言われて、最初は当然のように他の2期生も一緒だと思った。
「いいね!他の2期生も──」
けれど、いのりちゃんの返事は私の想定よりも一瞬早くて、そして、ちょっとだけ声の調子が違った。
「ちがくて、2人で」
その瞬間、ふと心がざわめいた。
なんとなく、気づいていた。
いのりちゃんが最近よく話しかけてくれるようになったこと、目が合ったときの表情、ちょっとした間の取り方。
どれも、今までの“同期”としての距離感とは、少し違っていて。
でも私は、それに気づかないふりをした。
いや、気づかないふりをすることでしか、自分の気持ちを守れなかったのかもしれない。
いのりちゃんが、私のことを想ってくれているのが分かるほどに、私は自分に自信がなくなる。
こんな私なんかが、その気持ちを受け取ってもいいのかなって──そんなふうに思ってしまう。
ボウリングの日は、本当に楽しかった。
2人きりで出かけるのなんて初めてだったけど、自然と笑い合えたし、変に気を使うこともなくて、ずっと安心していられた。
いのりちゃんは、私のことを笑わせようとしてくれてるのが伝わってくるし、時々真剣に話を聞いてくれるところが好き。
何も言わなくても、察してくれる瞬間があって、ずるいなって思うくらい優しい。
でも──それだけじゃ、私は不安なんだ。
だって、いのりちゃんは誰にでも優しいし、頼られる存在だし、しっかりしてて、自分の気持ちをちゃんと持ってる人だ。
それに比べて私は、まだまだ未熟で、自分のことも好きになれてなくて。
そんなどこか情けない自分が、いのりちゃんの「特別」でいていいのかなって思うと、胸の奥が苦しくなる。
帰り際、電車に乗る前、2番線のホームから手を振ったとき、いのりちゃんは最後までずっとこっちを見てくれていた。
私は、その視線の意味を知っている。あの表情の中に、私への気持ちが滲んでいることに、ちゃんと気づいてる。
でも、それでも。
私はまだ、その気持ちに応える勇気が持てない。
だって、ほんの少しだけでいいから──
もう少しだけ、いのりちゃんに想われていたい。
“好きになってもらえている私”のままで、あと少しだけ時間が欲しい。
自分が誰かの特別になることが怖くて、自信がなくて。
だけど、いのりちゃんを失うことも怖い。
帰宅して、22時過ぎ。
私は自分の部屋でスマホを手にして、いのりちゃんからのLINEを待っていた。
通知は来たけれど、あえてすぐには開かなかった。
すぐに返事を返したら、嬉しさがバレてしまいそうで、そんな自分を見せるのが怖かった。
通知の数字を何度も見て、そっと画面を閉じる。
明日、どんな顔で会えばいいんだろう。
あの子が次に何を言ってくれるのか、私はまた期待してしまうんだろうな。
深夜0時。
リビングに響く静かな音楽。何気なく流れてきたバラードの歌詞が、今の自分に重なって、ちょっとだけ泣きそうになる。
いのりちゃんが、今夜も私のことを考えてくれていたらいいな。
でも、私はもう少しだけ、気づかないふりをさせてね。
もう少しだけ── 想われている時間を、味わっていたいから。
「ボウリング行かへん?」
そう言われて、最初は当然のように他の2期生も一緒だと思った。
「いいね!他の2期生も──」
けれど、いのりちゃんの返事は私の想定よりも一瞬早くて、そして、ちょっとだけ声の調子が違った。
「ちがくて、2人で」
その瞬間、ふと心がざわめいた。
なんとなく、気づいていた。
いのりちゃんが最近よく話しかけてくれるようになったこと、目が合ったときの表情、ちょっとした間の取り方。
どれも、今までの“同期”としての距離感とは、少し違っていて。
でも私は、それに気づかないふりをした。
いや、気づかないふりをすることでしか、自分の気持ちを守れなかったのかもしれない。
いのりちゃんが、私のことを想ってくれているのが分かるほどに、私は自分に自信がなくなる。
こんな私なんかが、その気持ちを受け取ってもいいのかなって──そんなふうに思ってしまう。
ボウリングの日は、本当に楽しかった。
2人きりで出かけるのなんて初めてだったけど、自然と笑い合えたし、変に気を使うこともなくて、ずっと安心していられた。
いのりちゃんは、私のことを笑わせようとしてくれてるのが伝わってくるし、時々真剣に話を聞いてくれるところが好き。
何も言わなくても、察してくれる瞬間があって、ずるいなって思うくらい優しい。
でも──それだけじゃ、私は不安なんだ。
だって、いのりちゃんは誰にでも優しいし、頼られる存在だし、しっかりしてて、自分の気持ちをちゃんと持ってる人だ。
それに比べて私は、まだまだ未熟で、自分のことも好きになれてなくて。
そんなどこか情けない自分が、いのりちゃんの「特別」でいていいのかなって思うと、胸の奥が苦しくなる。
帰り際、電車に乗る前、2番線のホームから手を振ったとき、いのりちゃんは最後までずっとこっちを見てくれていた。
私は、その視線の意味を知っている。あの表情の中に、私への気持ちが滲んでいることに、ちゃんと気づいてる。
でも、それでも。
私はまだ、その気持ちに応える勇気が持てない。
だって、ほんの少しだけでいいから──
もう少しだけ、いのりちゃんに想われていたい。
“好きになってもらえている私”のままで、あと少しだけ時間が欲しい。
自分が誰かの特別になることが怖くて、自信がなくて。
だけど、いのりちゃんを失うことも怖い。
帰宅して、22時過ぎ。
私は自分の部屋でスマホを手にして、いのりちゃんからのLINEを待っていた。
通知は来たけれど、あえてすぐには開かなかった。
すぐに返事を返したら、嬉しさがバレてしまいそうで、そんな自分を見せるのが怖かった。
通知の数字を何度も見て、そっと画面を閉じる。
明日、どんな顔で会えばいいんだろう。
あの子が次に何を言ってくれるのか、私はまた期待してしまうんだろうな。
深夜0時。
リビングに響く静かな音楽。何気なく流れてきたバラードの歌詞が、今の自分に重なって、ちょっとだけ泣きそうになる。
いのりちゃんが、今夜も私のことを考えてくれていたらいいな。
でも、私はもう少しだけ、気づかないふりをさせてね。
もう少しだけ── 想われている時間を、味わっていたいから。