🦒- どうか君も
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「じゃあね、またね!」
さくらはいつもの笑顔を浮かべながら、2番線の列車に乗り込んだ。
ドアが閉まる直前まで何度もこちらに手を振ってくれて、その仕草があまりに自然で、あまりに可愛くて、私は笑顔で応えながらも、どこか胸がきゅっと締めつけられるような気がしていた。
発車のベルが鳴って、電車が少しずつ動き出す。窓際に立ったさくらが、まだ見える?というふうに顔を寄せてくれて、私は小さくうなずいた。
彼女の姿が見えなくなるその瞬間まで、ホームから目を離すことができなかった。
そして、電車が完全に視界から消えたあと、私は深く息を吐いた。
隣のホームにはもう誰もいない。
なのに、ついさっきまでそこにいた彼女の姿が、幻のようにそこに残っているような気がして、私はその場を離れがたくなっていた。
でも、ぼんやりと立ち止まっているだけでは、何も始まらない。私はようやく足を動かして、1番線に向かって歩き出した。
自分の帰り道へと、ゆっくりと戻るように。
ーーーー
さくらとは同期だ。2期生として同じタイミングで加入して、それからずっと同じ時間を過ごしてきた。
最初から特別に仲が良かったわけではない。
グループの中で「いのりとさくらって、いつも一緒にいるよね」と言われるような関係でもなかった。
それでも、何気ない日常の中で、彼女の存在はいつもすぐそばにあった。
仕事で疲れて落ち込んでいたときも、パフォーマンスがうまくいかずに悔しさで眠れなかった夜も、さくらの言葉や笑顔に救われることが何度もあった。
逆に、彼女が緊張しているときは、どうしたら緊張をほぐしてあげられるかを一緒に考えて、ふざけて笑わせようと頑張ったこともあった。
いつの間にか、そんなふうにさくらを気にかける自分がいた。
どんな時でも明るくて、人懐っこくて、ちょっと天然で。
けれど、パフォーマンスになると一気に集中して、鋭くなる眼差し。
そのギャップがたまらなくて、目で追ってしまう。
ある日ふと気づいた。これはもう、ただの「同期」ではいられない気持ちだ、と。
それから私は、少しずつ距離を縮めようとした。
今までなら話さなかったような雑談を自分から振ってみたり、ちょっとした冗談を言ってみたり。
最初は彼女も「どうしたの?」と不思議そうな顔をしていたけれど、だんだんとそれが日常になっていった。
そしてある日、思い切って誘ってみた。
「さくら、今度ボウリング行かへん?」
「いいね!他の2期生も一緒に?」
違う、そうじゃない。さりげなく2人で出かけられるようになんて声をかけようか、そう考えていたのに、私の口はつい、勢いで先走った。
「ちがくて、2人で」
言ってから、自分の言葉の直球さに驚いた。でも取り消すことはできない。
だけど、さくらは少し驚いたあとで、ふわっと笑った。
「え、うん。たのしみ! いのりちゃんが私だけ誘ってくれるなんて初めてだね、うれしい」
その言葉が、胸にまっすぐ届いた。
動物園や水族館だと、いかにも“デート”っぽくなりすぎてしまいそうで、私はあえてボウリングを選んだ。
でも、あの言い方じゃ気づかれても仕方がない。
いや、もしかしたら、少しだけ気づいてほしかったのかもしれない。
ーーーー
そして、今日。
さくらと2人で過ごした時間は、本当に楽しくて、嬉しくて、夢みたいだった。
ボウリング場で思いきり笑って、帰り道はちょっとだけ静かになって。でも沈黙すら、心地よかった。
別れ際に手を振りながら、名残惜しそうにしてくれるさくらの姿に、「次もあるよね?」と聞きたくなったけれど、それはまだ、胸の奥にしまっておいた。
電車の中で、私はスマホを開いて、LINEの文面を何度も打ち直した。
「今日はありがとう。また行こうね」
「さくらって、ほんまにおもしろいなあ」
「帰ったらちゃんと休むんやで」
どれも素直な気持ちなのに、なんだか物足りなくて、消しては書いて、また消して──気づけば降りるはずの駅を通り過ぎていた。
一駅分、歩く羽目になった帰り道。
でも、全然いやじゃなかった。むしろ、こうして彼女のことを考える時間が延びたのが、少し嬉しいと思ってしまったくらいだ。
さくらは今、どんな曲を聴いているんだろう。どんな顔で今日のことを思い返してるんだろう。
私はまだ怖くて、「好き」とは言えないけれど、この恋は確実に前に進んでいる。
この気持ちが、ちゃんと“好きの言葉”として届くその日まで──
少しずつでも、近づいていけたらいい。
深夜0時。リビングのソファに座って、スマホを開いて写真を見返す。
どうか、さくらも私のことを思い出してくれていますように。
今夜、ほんの少しでも──同じ気持ちでいてくれていますように。
さくらはいつもの笑顔を浮かべながら、2番線の列車に乗り込んだ。
ドアが閉まる直前まで何度もこちらに手を振ってくれて、その仕草があまりに自然で、あまりに可愛くて、私は笑顔で応えながらも、どこか胸がきゅっと締めつけられるような気がしていた。
発車のベルが鳴って、電車が少しずつ動き出す。窓際に立ったさくらが、まだ見える?というふうに顔を寄せてくれて、私は小さくうなずいた。
彼女の姿が見えなくなるその瞬間まで、ホームから目を離すことができなかった。
そして、電車が完全に視界から消えたあと、私は深く息を吐いた。
隣のホームにはもう誰もいない。
なのに、ついさっきまでそこにいた彼女の姿が、幻のようにそこに残っているような気がして、私はその場を離れがたくなっていた。
でも、ぼんやりと立ち止まっているだけでは、何も始まらない。私はようやく足を動かして、1番線に向かって歩き出した。
自分の帰り道へと、ゆっくりと戻るように。
ーーーー
さくらとは同期だ。2期生として同じタイミングで加入して、それからずっと同じ時間を過ごしてきた。
最初から特別に仲が良かったわけではない。
グループの中で「いのりとさくらって、いつも一緒にいるよね」と言われるような関係でもなかった。
それでも、何気ない日常の中で、彼女の存在はいつもすぐそばにあった。
仕事で疲れて落ち込んでいたときも、パフォーマンスがうまくいかずに悔しさで眠れなかった夜も、さくらの言葉や笑顔に救われることが何度もあった。
逆に、彼女が緊張しているときは、どうしたら緊張をほぐしてあげられるかを一緒に考えて、ふざけて笑わせようと頑張ったこともあった。
いつの間にか、そんなふうにさくらを気にかける自分がいた。
どんな時でも明るくて、人懐っこくて、ちょっと天然で。
けれど、パフォーマンスになると一気に集中して、鋭くなる眼差し。
そのギャップがたまらなくて、目で追ってしまう。
ある日ふと気づいた。これはもう、ただの「同期」ではいられない気持ちだ、と。
それから私は、少しずつ距離を縮めようとした。
今までなら話さなかったような雑談を自分から振ってみたり、ちょっとした冗談を言ってみたり。
最初は彼女も「どうしたの?」と不思議そうな顔をしていたけれど、だんだんとそれが日常になっていった。
そしてある日、思い切って誘ってみた。
「さくら、今度ボウリング行かへん?」
「いいね!他の2期生も一緒に?」
違う、そうじゃない。さりげなく2人で出かけられるようになんて声をかけようか、そう考えていたのに、私の口はつい、勢いで先走った。
「ちがくて、2人で」
言ってから、自分の言葉の直球さに驚いた。でも取り消すことはできない。
だけど、さくらは少し驚いたあとで、ふわっと笑った。
「え、うん。たのしみ! いのりちゃんが私だけ誘ってくれるなんて初めてだね、うれしい」
その言葉が、胸にまっすぐ届いた。
動物園や水族館だと、いかにも“デート”っぽくなりすぎてしまいそうで、私はあえてボウリングを選んだ。
でも、あの言い方じゃ気づかれても仕方がない。
いや、もしかしたら、少しだけ気づいてほしかったのかもしれない。
ーーーー
そして、今日。
さくらと2人で過ごした時間は、本当に楽しくて、嬉しくて、夢みたいだった。
ボウリング場で思いきり笑って、帰り道はちょっとだけ静かになって。でも沈黙すら、心地よかった。
別れ際に手を振りながら、名残惜しそうにしてくれるさくらの姿に、「次もあるよね?」と聞きたくなったけれど、それはまだ、胸の奥にしまっておいた。
電車の中で、私はスマホを開いて、LINEの文面を何度も打ち直した。
「今日はありがとう。また行こうね」
「さくらって、ほんまにおもしろいなあ」
「帰ったらちゃんと休むんやで」
どれも素直な気持ちなのに、なんだか物足りなくて、消しては書いて、また消して──気づけば降りるはずの駅を通り過ぎていた。
一駅分、歩く羽目になった帰り道。
でも、全然いやじゃなかった。むしろ、こうして彼女のことを考える時間が延びたのが、少し嬉しいと思ってしまったくらいだ。
さくらは今、どんな曲を聴いているんだろう。どんな顔で今日のことを思い返してるんだろう。
私はまだ怖くて、「好き」とは言えないけれど、この恋は確実に前に進んでいる。
この気持ちが、ちゃんと“好きの言葉”として届くその日まで──
少しずつでも、近づいていけたらいい。
深夜0時。リビングのソファに座って、スマホを開いて写真を見返す。
どうか、さくらも私のことを思い出してくれていますように。
今夜、ほんの少しでも──同じ気持ちでいてくれていますように。
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