🎐🦉- 知恵の輪
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気がついたときには、楽屋には私とまりのちゃんの二人だけになっていた。
さっきまでゾノや天ちゃん、松田のにぎやかな笑い声が響いていたのに、いつの間にかみんな出て行ってしまっていたらしい。
好きな人と二人きり―― …そんなシチュエーションに意味なんてない。
私が何かできるわけでもないし、そもそもこの恋はもう、諦めるって決めたはずだった。
まりのちゃんが私に話しかけてくることも、もちろんない。
最近は仕事のタイミングもほとんど被らなくなって、今でも避けられているのかどうかすら分からない。
ただひとつ分かるのは、この静かな空間がやけに息苦しいということだけだった。
どれくらい時間が経ったのだろう。
無言の空気がただ流れていく中で、私たちってその程度の関係なんだなと実感して、胸の奥がぎゅっと苦しくなった。
そんな気持ちを振り払うように、私はヘッドフォンをつけて大音量で音楽を流し始めた。
目を閉じて、何も考えないように――心を、無理やり切り離すように。
そのとき、背中から肩をとんとんと叩かれた。
「……え」
驚いて振り返ると、そこに立っていたのは、もちろんまりのちゃんだった。
この部屋には彼女しかいないのだから当然なのに、彼女が私に触れたという事実が信じられなくて、心が一瞬だけ跳ねた。
「まりのちゃん、どしたん?」
「マネージャーさんが……10分後にスタジオ集合って」
それは、ただの業務連絡だった。
ああ、そりゃそうだよね。
まりのちゃんが、私にわざわざ話しかけてくる理由なんて、あるわけがない。
少しでも期待してしまった自分が恥ずかしくて、「ありがと」と小さく返して、またヘッドフォンを戻しかけた。
だけど。
「あと……わたし、かりんちゃんのこと好きだから」 「……邪魔してごめん」
一瞬、時が止まったような気がした。
まりのちゃんは、目を伏せながら立ち去ろうとした。
気づいたときには、その腕を掴んでいた。
「まって、今の……なに」
自分でも、驚くほど冷たい声が出てしまった。
すぐに言い直そうとしたけれど、まりのちゃんの瞳はすでに、怯えと悲しみに沈んでいた。
「ごめん、やっぱり今の……忘れて」
そう言ったまりのちゃんの声は、今にも泣き出しそうで。
だから私は、気がついたらまりのちゃんを強く抱きしめていた。
「ごめん……まって。わたしも、好きだから」
そう言った瞬間、まりのちゃんの頬がぱっと真っ赤に染まるのが見えた。
その顔を見たとき、胸の奥から愛おしいという感情があふれ出してきて、
今までとは違って、自然と言葉が次々と口をついて出てくる。
「私も好き。……だから、付き合って」
まりのちゃんは、ぎこちなく小さく頷くと、顔を真っ赤にしたまま目を逸らしながら言った。
「じゃあ、わたし……先にスタジオ行ってくるから」
それだけ言って、勢いよく部屋を飛び出していった。
その背中を見送りながら、私はひとり静かに深呼吸をする。
急に訪れた「両想い」という現実に、戸惑いと嬉しさが混ざって、不思議なくらい体がふわふわしていた。
ひとりでぼんやりしていると、どこからともなくゾノが現れた。
「……まりのんと付き合えたの?」
「え?」
「だってさっき、顔真っ赤にしながら走ってくの見えたもん。かりんちゃん、やったね〜」
「……うん、そうみたい」
「ちなみに今日、ふたりきりになったのは、まりのんに頼まれてわたしが仕組んだおかげだから。感謝してよね?」
「えっ、まりのちゃんが?」
「へへっ。よかったね。おめでとう。……まりのん泣かせたら、ほんとに許さないからね?」
「わかってる。ありがと、ゾノ」
「どういたしまして〜。……ほら、収録遅れないでよ?」
そう言って明るく笑いながら走り去っていくゾノの背中を見送りながら、私は胸いっぱいに広がるこの新しい幸せを、ぎゅっと抱きしめた。
おまけ
収録が終わって、まりのちゃんはどこかなと楽屋をきょろきょろと見回していると、また肩をトントンと軽く叩かれる。
「かりんちゃん……一緒に帰ろ?」
頬を赤く染めながら、少し照れくさそうに言うまりのちゃん。
数時間前までの距離感がまるで嘘だったように、私は自然と笑顔になっていた。
「……うち来る?」
小さく頷いたまりのちゃんの手を取って、私は楽屋をあとにした。
背中越しに、その光景を見た2期生の騒がしい声が聞こえてきたけど、そんなのはどうでもよかった。
まりのちゃんの手を、もう一度ぎゅっと強く握り直す。
「そういえばさ……今日、ふたりきりになったのって、まりのちゃんが頼んでくれたんやな?」
「えっ……」
「ゾノに聞いた」
「ええ……っ」
また顔を真っ赤に染めたまりのちゃんは、手を振りほどいて逃げるように走り出してしまった。
愛おしい背中を追いかけながら、 “今日の晩ごはん、なに食べようかな”なんて、そんな他愛のないことを考えていた。
――そんな、小さくて、でも確かに大きな幸せが、今ここにある。
さっきまでゾノや天ちゃん、松田のにぎやかな笑い声が響いていたのに、いつの間にかみんな出て行ってしまっていたらしい。
好きな人と二人きり―― …そんなシチュエーションに意味なんてない。
私が何かできるわけでもないし、そもそもこの恋はもう、諦めるって決めたはずだった。
まりのちゃんが私に話しかけてくることも、もちろんない。
最近は仕事のタイミングもほとんど被らなくなって、今でも避けられているのかどうかすら分からない。
ただひとつ分かるのは、この静かな空間がやけに息苦しいということだけだった。
どれくらい時間が経ったのだろう。
無言の空気がただ流れていく中で、私たちってその程度の関係なんだなと実感して、胸の奥がぎゅっと苦しくなった。
そんな気持ちを振り払うように、私はヘッドフォンをつけて大音量で音楽を流し始めた。
目を閉じて、何も考えないように――心を、無理やり切り離すように。
そのとき、背中から肩をとんとんと叩かれた。
「……え」
驚いて振り返ると、そこに立っていたのは、もちろんまりのちゃんだった。
この部屋には彼女しかいないのだから当然なのに、彼女が私に触れたという事実が信じられなくて、心が一瞬だけ跳ねた。
「まりのちゃん、どしたん?」
「マネージャーさんが……10分後にスタジオ集合って」
それは、ただの業務連絡だった。
ああ、そりゃそうだよね。
まりのちゃんが、私にわざわざ話しかけてくる理由なんて、あるわけがない。
少しでも期待してしまった自分が恥ずかしくて、「ありがと」と小さく返して、またヘッドフォンを戻しかけた。
だけど。
「あと……わたし、かりんちゃんのこと好きだから」 「……邪魔してごめん」
一瞬、時が止まったような気がした。
まりのちゃんは、目を伏せながら立ち去ろうとした。
気づいたときには、その腕を掴んでいた。
「まって、今の……なに」
自分でも、驚くほど冷たい声が出てしまった。
すぐに言い直そうとしたけれど、まりのちゃんの瞳はすでに、怯えと悲しみに沈んでいた。
「ごめん、やっぱり今の……忘れて」
そう言ったまりのちゃんの声は、今にも泣き出しそうで。
だから私は、気がついたらまりのちゃんを強く抱きしめていた。
「ごめん……まって。わたしも、好きだから」
そう言った瞬間、まりのちゃんの頬がぱっと真っ赤に染まるのが見えた。
その顔を見たとき、胸の奥から愛おしいという感情があふれ出してきて、
今までとは違って、自然と言葉が次々と口をついて出てくる。
「私も好き。……だから、付き合って」
まりのちゃんは、ぎこちなく小さく頷くと、顔を真っ赤にしたまま目を逸らしながら言った。
「じゃあ、わたし……先にスタジオ行ってくるから」
それだけ言って、勢いよく部屋を飛び出していった。
その背中を見送りながら、私はひとり静かに深呼吸をする。
急に訪れた「両想い」という現実に、戸惑いと嬉しさが混ざって、不思議なくらい体がふわふわしていた。
ひとりでぼんやりしていると、どこからともなくゾノが現れた。
「……まりのんと付き合えたの?」
「え?」
「だってさっき、顔真っ赤にしながら走ってくの見えたもん。かりんちゃん、やったね〜」
「……うん、そうみたい」
「ちなみに今日、ふたりきりになったのは、まりのんに頼まれてわたしが仕組んだおかげだから。感謝してよね?」
「えっ、まりのちゃんが?」
「へへっ。よかったね。おめでとう。……まりのん泣かせたら、ほんとに許さないからね?」
「わかってる。ありがと、ゾノ」
「どういたしまして〜。……ほら、収録遅れないでよ?」
そう言って明るく笑いながら走り去っていくゾノの背中を見送りながら、私は胸いっぱいに広がるこの新しい幸せを、ぎゅっと抱きしめた。
おまけ
収録が終わって、まりのちゃんはどこかなと楽屋をきょろきょろと見回していると、また肩をトントンと軽く叩かれる。
「かりんちゃん……一緒に帰ろ?」
頬を赤く染めながら、少し照れくさそうに言うまりのちゃん。
数時間前までの距離感がまるで嘘だったように、私は自然と笑顔になっていた。
「……うち来る?」
小さく頷いたまりのちゃんの手を取って、私は楽屋をあとにした。
背中越しに、その光景を見た2期生の騒がしい声が聞こえてきたけど、そんなのはどうでもよかった。
まりのちゃんの手を、もう一度ぎゅっと強く握り直す。
「そういえばさ……今日、ふたりきりになったのって、まりのちゃんが頼んでくれたんやな?」
「えっ……」
「ゾノに聞いた」
「ええ……っ」
また顔を真っ赤に染めたまりのちゃんは、手を振りほどいて逃げるように走り出してしまった。
愛おしい背中を追いかけながら、 “今日の晩ごはん、なに食べようかな”なんて、そんな他愛のないことを考えていた。
――そんな、小さくて、でも確かに大きな幸せが、今ここにある。
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