🎐🦉- 知恵の輪
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数年前までの私は、少なくとも“それなり”には、かりんちゃんに可愛がられていた――そんな自信がある。
最年少でありながら大人びた雰囲気を持っていた天ちゃんは、いつもかりんちゃんと自然体で対等な関係を築いていた。
グループ内で年齢が若い順に並ぶと、天ちゃんの次は私だった。だから、かりんちゃんはことあるごとに「かわいい」と言って、私にカメラを向けてくれた。
「かわいい」って言われるのは、もちろん嬉しい。
けれど、カメラのレンズを向けられてポーズを取るのは、正直ちょっと苦手だった。
それでも私は、かりんちゃんの期待に応えたくて、健気に頑張ったつもりだった。どうすればかわいく見えるか、どんな角度なら自分がよく映るのか、鏡の前でこっそり練習したこともある。
「この写真を見たとき、かりんちゃんが、少しでも私のことを可愛いと思ってくれたら」 ただ、それだけを願ってポーズを決めていた。
あの頃は、まだ気づいていなかった。
自分がかりんちゃんを「好き」だなんて。
ただ、なんとなく「可愛い」と思われたい。その気持ちだけが心の中に静かに広がっていて、でもその意味を理解することはなかった。
――その恋に気づいたのは、3期生が加入してからだった。
けれど、気づいたと同時に、それは終わった。
かりんちゃんの「かわいい枠」――それはかつて私がいたはずのポジション。
そこに、私よりも年下の3期生、瞳月ちゃんがあっけなく入り込んでいた。
驚くほど自然に。まるで最初からそうだったかのように。
別に、瞳月ちゃんのことが嫌いなわけじゃない。恨んでいるわけでもない。 むしろ同期の中でも、私は彼女とかなり仲良くしているという自負さえある。
私にとっても、瞳月ちゃんは本当に可愛い後輩だ。
それでも――その場所に立っているのが自分ではないという事実が、どうしようもなく苦しかった。
かりんちゃんが、瞳月ちゃんに向ける柔らかなまなざし。 その声、その笑顔、その全てが、見ているだけで胸を締めつけた。
「ああ、私はかりんちゃんのことが好きだったんだ」
その自覚が、胸の中で静かに、でも確かに広がっていった。
そしてその瞬間、同時に失恋もした。
今はまだ、瞳月ちゃんはかりんちゃんのことを「先輩」としてしか見ていないかもしれない。 でも、初々しく無邪気に距離を縮めていく彼女に、かりんちゃんは明らかに夢中になっていく。
私が臆病で言えなかったこと、できなかったこと――全部、瞳月ちゃんは自然にやってのけた。
後輩に嫉妬するなんて、バカみたいだと思いながら、それでも私はどうしようもなくその姿が眩しかった。
だから私は、自分の気持ちを、そっと心の奥にしまい込むことにした。
テレビでも、ライブでも、ラジオでも――どこででも、私は「井上梨名ちゃんが好き」と言い続けた。冗談めかして、少し笑いを交えて。
井上梨名ちゃんは困っているようだったが、周囲が面白がってその話を広げてくれたのは、私にとって都合がよかった。
「このままなら、かりんちゃんへの気持ちも、きっと時間とともに薄れていく」 そう思っていた。いや、そう信じたかった。
けれど現実はあまりに残酷で。
私はかりんちゃんを、忘れられなかった。
井上梨名ちゃんが好きだと繰り返せば、少しはこっちを見てくれるかもしれない。そんな期待を抱いてしまった自分が、どうしようもなく情けなかった。
そしてあるとき、かりんちゃんはテレビやラジオで、「優ちゃんが好き」と、別の後輩の名前を出しはじめた。
その瞬間、自分の存在がまるで透明になったように思えて。 惨めで、恥ずかしくて、私はもう誰かを「好き」と言うのをやめた。
後輩たちとは今も良い関係を築けているし、仲の良い同期もいる。かりんちゃんのことは、ただの“メンバー”として割り切ろう。 そう決めて、私は数ヶ月、それなりにうまく過ごしていた。
……あの日までは。
3期生の願いを叶える企画――「人間知恵の輪」
まさか、かりんちゃんとの距離があんなにも近くなるとは、想像もしなかった。
気がつけば、彼女の背中に、自分の身体がぴたりとくっついていた。
平静を保とうと必死だった。でも、どうしても抑えきれない。 暴れるように速くなる心臓。苦しくなるくらいの鼓動。
ああ、私は――やっぱり、かりんちゃんを忘れられてなんて、いなかった。
悔しい。でも、それ以上に。
かりんちゃんが、すぐそこにいる。 触れている。この距離にいる。
それだけで、私はどうしようもなく嬉しかった。
ふと、かりんちゃんの身体から伝わるかすかな鼓動が、自分のものと同じくらい速い気がして。
「まさか……」
そんな淡い期待を抱いてしまう自分に呆れながら、それでもこっそり、かりんちゃんの横顔を見つめた。
彼女は、何も気づかずに笑っていた。
それが、少しだけ悲しくて、でもやっぱり、愛しかった。
最年少でありながら大人びた雰囲気を持っていた天ちゃんは、いつもかりんちゃんと自然体で対等な関係を築いていた。
グループ内で年齢が若い順に並ぶと、天ちゃんの次は私だった。だから、かりんちゃんはことあるごとに「かわいい」と言って、私にカメラを向けてくれた。
「かわいい」って言われるのは、もちろん嬉しい。
けれど、カメラのレンズを向けられてポーズを取るのは、正直ちょっと苦手だった。
それでも私は、かりんちゃんの期待に応えたくて、健気に頑張ったつもりだった。どうすればかわいく見えるか、どんな角度なら自分がよく映るのか、鏡の前でこっそり練習したこともある。
「この写真を見たとき、かりんちゃんが、少しでも私のことを可愛いと思ってくれたら」 ただ、それだけを願ってポーズを決めていた。
あの頃は、まだ気づいていなかった。
自分がかりんちゃんを「好き」だなんて。
ただ、なんとなく「可愛い」と思われたい。その気持ちだけが心の中に静かに広がっていて、でもその意味を理解することはなかった。
――その恋に気づいたのは、3期生が加入してからだった。
けれど、気づいたと同時に、それは終わった。
かりんちゃんの「かわいい枠」――それはかつて私がいたはずのポジション。
そこに、私よりも年下の3期生、瞳月ちゃんがあっけなく入り込んでいた。
驚くほど自然に。まるで最初からそうだったかのように。
別に、瞳月ちゃんのことが嫌いなわけじゃない。恨んでいるわけでもない。 むしろ同期の中でも、私は彼女とかなり仲良くしているという自負さえある。
私にとっても、瞳月ちゃんは本当に可愛い後輩だ。
それでも――その場所に立っているのが自分ではないという事実が、どうしようもなく苦しかった。
かりんちゃんが、瞳月ちゃんに向ける柔らかなまなざし。 その声、その笑顔、その全てが、見ているだけで胸を締めつけた。
「ああ、私はかりんちゃんのことが好きだったんだ」
その自覚が、胸の中で静かに、でも確かに広がっていった。
そしてその瞬間、同時に失恋もした。
今はまだ、瞳月ちゃんはかりんちゃんのことを「先輩」としてしか見ていないかもしれない。 でも、初々しく無邪気に距離を縮めていく彼女に、かりんちゃんは明らかに夢中になっていく。
私が臆病で言えなかったこと、できなかったこと――全部、瞳月ちゃんは自然にやってのけた。
後輩に嫉妬するなんて、バカみたいだと思いながら、それでも私はどうしようもなくその姿が眩しかった。
だから私は、自分の気持ちを、そっと心の奥にしまい込むことにした。
テレビでも、ライブでも、ラジオでも――どこででも、私は「井上梨名ちゃんが好き」と言い続けた。冗談めかして、少し笑いを交えて。
井上梨名ちゃんは困っているようだったが、周囲が面白がってその話を広げてくれたのは、私にとって都合がよかった。
「このままなら、かりんちゃんへの気持ちも、きっと時間とともに薄れていく」 そう思っていた。いや、そう信じたかった。
けれど現実はあまりに残酷で。
私はかりんちゃんを、忘れられなかった。
井上梨名ちゃんが好きだと繰り返せば、少しはこっちを見てくれるかもしれない。そんな期待を抱いてしまった自分が、どうしようもなく情けなかった。
そしてあるとき、かりんちゃんはテレビやラジオで、「優ちゃんが好き」と、別の後輩の名前を出しはじめた。
その瞬間、自分の存在がまるで透明になったように思えて。 惨めで、恥ずかしくて、私はもう誰かを「好き」と言うのをやめた。
後輩たちとは今も良い関係を築けているし、仲の良い同期もいる。かりんちゃんのことは、ただの“メンバー”として割り切ろう。 そう決めて、私は数ヶ月、それなりにうまく過ごしていた。
……あの日までは。
3期生の願いを叶える企画――「人間知恵の輪」
まさか、かりんちゃんとの距離があんなにも近くなるとは、想像もしなかった。
気がつけば、彼女の背中に、自分の身体がぴたりとくっついていた。
平静を保とうと必死だった。でも、どうしても抑えきれない。 暴れるように速くなる心臓。苦しくなるくらいの鼓動。
ああ、私は――やっぱり、かりんちゃんを忘れられてなんて、いなかった。
悔しい。でも、それ以上に。
かりんちゃんが、すぐそこにいる。 触れている。この距離にいる。
それだけで、私はどうしようもなく嬉しかった。
ふと、かりんちゃんの身体から伝わるかすかな鼓動が、自分のものと同じくらい速い気がして。
「まさか……」
そんな淡い期待を抱いてしまう自分に呆れながら、それでもこっそり、かりんちゃんの横顔を見つめた。
彼女は、何も気づかずに笑っていた。
それが、少しだけ悲しくて、でもやっぱり、愛しかった。