────そして迎えたコンクール。　

結果は優勝。


コンクール経験もない無名ピアニストの演奏、そしてその優勝に世界中の演奏家が注目した。


その日を境に『Rei』の大躍進が始まる。

出場したコンクールでは多くの功績を残し、その実力を認めた音楽家達がこぞって演奏依頼を申し込んだ。

そして気づいた時には、「謎の天才美人ピアニストRei」や「日本が生み出した音楽界の天使Rei」などと謳われ、有名人になってしまった。

あくまで有名になったのは『Rei』。

舞台に立つ時以外は、フランスの音大生天宮⚪︎りよとして、髪は白いものの普通の音大生活を送っていた。


そして今年、課程を終えた私は無事卒業試験に合格し、日本に戻ってきたというわけだ。もちろん黒髪で。






「──────とまぁ、このような感じですかね。たまたま先生と友達とのノリで『Rei』ができてしまったというか…………」

校長にピアノ人生を語りながら、ここまでよくがんばったなと自分でも関心する。
それと同時に、『Rei』の誕生した理由があまりにくだらないので、恥ずかしくなってしまった。

「いやぁ、実に貴重な話を聞かせていただきました。ありがとうございます」

どうやら校長は満足した様子だ。

その後、その場で教員としての採用が決定し、校長室を後にする。
この時「『Rei』については他言無用でお願いします」ということは忘れずに伝えた。



帝丹高校からの帰り道──────

やっとのんびり暮らせる！
生徒さんと仲良くできるかな？
お洒落なカフェとか開拓したい。
てか、早くあの2人に会いたい。
今度一人旅でもしよう。

私は、新しく始まる米花町ライフに胸を高鳴らせるのだった。