そこまで言うと、彼は私の方を見てにっこりと笑った。
完璧な推理を披露された私は、顔を赤くしてうんうんと頷くことしかできない。

「なーんだ。強盗犯じゃねーのかよ」
「間違えちゃいましたね……」
「ごめんね………お姉さん」

3人は渋々私の足から離れる。
私が強盗犯ではなかったので少し落ち込んでいるようだ。

「な、なんかごめん……………。君達は探偵？」

なんとか元気付けようと、とりあえず質問をしてみる。
すると3人は目を輝かせながら私の前に整列した。

「俺たちはな」
「この街の平和を守ってる」
「少年探偵団です！」

息ぴったりに決めポーズをする小学生3人。
そして遠巻きにそれを見ている眼鏡の男の子。

少年探偵団…………眼鏡の男の子…………………。
　
「………………あ！美和子と由美が言ってた！」

思い出した。
美和子と由美の会話に度々登場するその単語。

少年探偵団。よく事件現場に遭遇する子供達で、命が危険に晒されることもしばしば。小学生の割に殺人現場に慣れすぎているので、美和子も心配していた。

そしてこの眼鏡の少年。確か名前は江戸川コナン。この子も頻繁に事件に遭遇するらしいが、それはもう死神レベルだそうだ。頭のキレる人物で、事件解決のヒントをよく見つけてくれるらしい。
先程の完璧な推理も彼によるものだった。
美和子達が信頼するのも納得だ。


「お姉さん、佐藤刑事達のこと知ってるの？」

女の子が不思議そうに聞いてきた。

「うん。友達だよ」
「もしかして、ピアノを弾いて変になっちゃうお姉さん？」

予想の斜め上をいく質問にギクっとする。

「そ、そうだけど…………。何で知ってるの………？てか誰情報？」
「前に佐藤刑事が言ってたんだ！可愛いけどピアノ弾くとおかしくなる友達が帰ってきたって」
「…………あーね。私、おかしくなるんじゃなくて集中しすぎちゃうんだ」

美和子め……と心の中で思いながら、やんわり訂正する。

「お姉さん、美人さんだからおかしくなっても大丈夫だよ！わたし、歩美っていうの。よろしくね！」

歩美ちゃんの声に反応して、後ろで喋っていた男子達もこっちに来た。

「歩美だけ仲良くなってずりーぞ！俺は元太！」
「僕は光彦です！」
「僕、江戸川コナン」

殺人現場に慣れてるって聞いてたけど、意外と普通の小学生で安心した。