Op.3女子高生、そしてポアロ
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とはいっても、この怒りが収まるはずもない。
部屋に着き荷物を乱暴にソファへ放り投げた私は、ピアノ部屋へと直行した。
この部屋は引っ越してきた時、多額のお金を費やして完全防音にしてもらったので、いくら暴れようが奇声を出そうが他の住民に迷惑をかけることはない。
グランドピアノの屋根と蓋を開け、勢いよく椅子に座る。
そして、目の前の鍵盤に手を叩きつけた。
まとまりのない音の塊が部屋に反響する。
いつもは不快に感じる不協和音も、今の不安定な状態の私には心地よく感じた。
私の心を表しているかのようなその響きに安心さえ覚える。
ピアノは私の気持ちをくみ取ってくれている。
「ごめんね、叩いたりして」
残響が消え静かになった部屋で、鍵盤をなぞりながら呟いた。
今度は優しく両手を添える。
次の瞬間、一気に指先に力を込め鍵盤を押し込んだ。そしてそのまま、重々しい音とともに演奏し始める。
ショパン。
ピアノソナタ第2番「葬送」第3楽章。
葬送行進曲として親しまれるこの曲は、ショパンの葬儀の際にも使用されたといわれている。
ずっしりとした重苦しい低音から始まる主題。
疲労、苦悩、絶望を背負いながらも、救いを求め永遠の暗闇を這いつくばる。
そこにふと現れた天国のような場所。
中間部は一転して、ゆるやかに流れるような美しい旋律になる。誰もがそこで救われたと思うだろう。
しかしそれは幻想に過ぎなかった。
再び主題が繰り返され、闇の中を彷徨い続ける。絶望から解放される日は一生こなかったのだ。
自分自身の怒り、憎しみ、悲しみを一つ一つの音に込めながら、そしてその響きを自分の鼓膜で感じながらピアノを弾き続けた。
次の日──────────
「失礼しまーす!」
「失礼します。先生、あの後体調…………って」
「ここにもいないわねー、天宮先生」
「本当だ。どこ行っちゃったんだろう」
この声は蘭ちゃんと園子ちゃんだ。
きっと昨日急に帰った私を心配して、音楽室まで来てくれたのだろう。
しかし今、私はピアノの隣でうつ伏せに倒れ、死にかけている。ちょうど2人の位置からでは死角になって見えないのかもしれない。
部屋に着き荷物を乱暴にソファへ放り投げた私は、ピアノ部屋へと直行した。
この部屋は引っ越してきた時、多額のお金を費やして完全防音にしてもらったので、いくら暴れようが奇声を出そうが他の住民に迷惑をかけることはない。
グランドピアノの屋根と蓋を開け、勢いよく椅子に座る。
そして、目の前の鍵盤に手を叩きつけた。
まとまりのない音の塊が部屋に反響する。
いつもは不快に感じる不協和音も、今の不安定な状態の私には心地よく感じた。
私の心を表しているかのようなその響きに安心さえ覚える。
ピアノは私の気持ちをくみ取ってくれている。
「ごめんね、叩いたりして」
残響が消え静かになった部屋で、鍵盤をなぞりながら呟いた。
今度は優しく両手を添える。
次の瞬間、一気に指先に力を込め鍵盤を押し込んだ。そしてそのまま、重々しい音とともに演奏し始める。
ショパン。
ピアノソナタ第2番「葬送」第3楽章。
葬送行進曲として親しまれるこの曲は、ショパンの葬儀の際にも使用されたといわれている。
ずっしりとした重苦しい低音から始まる主題。
疲労、苦悩、絶望を背負いながらも、救いを求め永遠の暗闇を這いつくばる。
そこにふと現れた天国のような場所。
中間部は一転して、ゆるやかに流れるような美しい旋律になる。誰もがそこで救われたと思うだろう。
しかしそれは幻想に過ぎなかった。
再び主題が繰り返され、闇の中を彷徨い続ける。絶望から解放される日は一生こなかったのだ。
自分自身の怒り、憎しみ、悲しみを一つ一つの音に込めながら、そしてその響きを自分の鼓膜で感じながらピアノを弾き続けた。
次の日──────────
「失礼しまーす!」
「失礼します。先生、あの後体調…………って」
「ここにもいないわねー、天宮先生」
「本当だ。どこ行っちゃったんだろう」
この声は蘭ちゃんと園子ちゃんだ。
きっと昨日急に帰った私を心配して、音楽室まで来てくれたのだろう。
しかし今、私はピアノの隣でうつ伏せに倒れ、死にかけている。ちょうど2人の位置からでは死角になって見えないのかもしれない。