「天宮先生……ですよね？これ、隣のクラスの先生から預かってきました」

そう言って差し出されたのは薄いファイル。
透けて音符が見えるのでおそらく楽譜だろう。

「わざわざ来てくれたんだ！ありがとね」
「いえいえ。それに個人的に話したいこともあったので」
「話したいこと？」

なんだろうと思い首を傾げる。

「実は、佐藤刑事から父を紹介してあげてって頼まれたんです」
「佐藤刑事って……美和子のこと？」

女子高生の口から刑事の友達の名前が出たことに驚き、つい聞き返してしまった。

「そうです。この前事件があった時たまたまお会いして」

事件でたまたまお会いしたって何！？

つい声に出しそうになるも、あまりに彼女が普通のことの様に話すのでぐっとこらえる。

「人探しをしてるんですよね？」
「そうだけど……」
「父が探偵なんです。毛利小五郎って言うんですけど、もしかしたらお力になれるかなって」

毛利小五郎……。
確か前に美和子が話してた気がする。
なんでも数々の難事件を解決してるんだとか。

でもそんな凄い人に、片想いの相手を探してくれなんて頼めない。

「あの有名な毛利小五郎さんだよね？こんな一般人の人探しなんて、申し訳ないし頼みづらいよ」

私は遠慮がちに苦笑いする。

「そんなことないですよ。……それじゃあ一回相談に来てみませんか？」

名案とばかりに笑顔で提案する彼女。

なんとなく断りにくい雰囲気だったで、相談だけならとお願いすることにした。

「この後って予定あります？」
「仕事は終わったんだけど、この部屋の片………………」

この部屋の片付けに時間かかりそう。
彼女から音楽室に目線を移した私は、そう言おうとした。

しかし、さっきの荒れた部屋はどこにいったのやら。綺麗な音楽室に戻っていたのだ。


「はい、先生！拾っときましたよ」

急に横から声がしてびくっとする。
そこにいたのは、黒帯の子と一緒にいたカチューシャ少女。

私達が話している間に片付けてくれたらしい。