「でも安心したなー。りよ、恋愛についてあんま話さないじゃんか？ちょっと心配してたんだよー」

由美はお酒をぐいっと飲むと、テーブルに頬杖をつきながら言った。

「私もよ。このままピアノと結婚するとか言い出したらどうしようって」

美和子も我が子を見るような目でこちらを見てくる。


私ってそんなに恋愛に疎いのだろうか。

言われてみれば最近きゅんとした出来事なんてなかった気がする。
強いて言えばドラマくらい。
それに男に好意を寄せられても何も感じない。
女としてあるべき欲求も無い。

学生の時はドキドキしたり嫉妬したりキスしてみたいとか考えてみたり、ちゃんと健全な女子の思考を持っていた。

多分降谷くんがいなくなってからだ。
それ以来ただひたすらピアノに打ち込んでいたから、恋の楽しみを忘れかけていたんだと思う。

虚しすぎるよ、私。



1人で感傷的な気分になっていると両肩に重味を感じた。
見ると2人の手が乗っている。

「まずは見つけるとこからね。だいじょーぶ！この由美様にかかればちょちょいのちょい！」
「捜査一課もいるんだから安心してよ」

そう言ってガッツポーズを作る由美と美和子。
どうやら私を応援してくれるらしい。

お世話になってばっかりだな……。

やる気満々の2人を見ていると、なんだか降谷くんもひろくんも見つかる気がしてくる。

「ありがとう！頑張る！」

私は満面の笑みを浮かべ弾んだ声で言った。








帰り道。

久々に2人と話せて満足した私は、王石街道を軽い足取りで歩いていた。

今日の恋バナを思い出して顔をほころばせる。

そういえばひろくんともやってたなぁ。
降谷くんをどやったら落とせるか議論したり。
バレンタインチョコを一緒に作ったこともあったよね。
懐かしいなぁ。


そんな風に昔の思い出に浸っていると、私の横を1台の青い車が通過した。
それも猛スピードで。

なんだろうと車道を見る。