■喫茶店にて
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結局、タイミングよく割って入ってきた店主にまの達は追い出されてしまった。バータイムに入る準備をするから、追加で何か頼むか出て行くかしてくれとぶっきらぼうに言われたため、男のまの観察にはピリオドが打たれ、まのは晴れて帰路につけたというわけだ。
あんなに盛り上がっていたのに、隣の青年らはまの達と同じように店主から声をかけられるとあっさり会計を告げてさっさと退店してしまった。
ほんの僅かに残ったアイスコーヒーに沢山の細かい氷がゆっくり浸食して、がらんとした机の上で「からり」とそれは神経質そうな音を奏でた。
じりじりとゆっくりそれでいて着実にアイスコーヒーを犯し続けている証拠のその音はまののこともじりじりと焦らせる。否、まのは無自覚に焦ろうとしている。
安直で浮ついた香水の香りが暈けて感じ取れなくなってきたあたりで、彼らがこの空間から恐らくいなくなったのだろうと伏せ目のまのは推測した。
だから、片方の青年がまのと男のことを含みのある目で一瞥していたことを知らない。いつだって俯いているから、知り得ない。
まのは店主が話しかけてきた時だって俯いたままで、ようやっとあげられたかと思われた顔は明らかな不安が滲んでいたのに「帰ります」の一言が口をつくことはなく、向かいの男の一存に大人しく委ねようと恐る恐る瞳をあげる姿は、どんなに肌を隠す服を着たってどんなに型通りに言いつけを守ったって、詰まるところ意思薄弱で自己主張が出来ない女そのものだった。
向かいの男がにへらと笑って、自身の交差した両人差し指を無骨そうな店主にむけてくれなかったらずっとここに居続けるつもりだったのだろうか。
干上がった砂浜の貝殻みたく色褪せたヤドヴィガが腕をかざし見つめる方角を、まのは首を軋ませ追ってみるとそこには出入り口の扉。またも神経質な音を立てる置きっぱなしのコーヒーグラス。
誰かが予め指示していたかのように追い詰めてくる焦りに身動きの取れなくなっているまのはなんの理由もなく再度襟を引っ張り上げる。 石竹 色の小さな爪が綺麗にそろった細い指先は淋しい青みがさしていて、それを眺める男の瞳も変わらず青かった。
二人の男女が席を立ってしまうと、あとは流しに捨てられる運命を待つだけの酸っぱい珈琲と渋い紅茶の水面は死のように静まり返った。
あんなに盛り上がっていたのに、隣の青年らはまの達と同じように店主から声をかけられるとあっさり会計を告げてさっさと退店してしまった。
ほんの僅かに残ったアイスコーヒーに沢山の細かい氷がゆっくり浸食して、がらんとした机の上で「からり」とそれは神経質そうな音を奏でた。
じりじりとゆっくりそれでいて着実にアイスコーヒーを犯し続けている証拠のその音はまののこともじりじりと焦らせる。否、まのは無自覚に焦ろうとしている。
安直で浮ついた香水の香りが暈けて感じ取れなくなってきたあたりで、彼らがこの空間から恐らくいなくなったのだろうと伏せ目のまのは推測した。
だから、片方の青年がまのと男のことを含みのある目で一瞥していたことを知らない。いつだって俯いているから、知り得ない。
まのは店主が話しかけてきた時だって俯いたままで、ようやっとあげられたかと思われた顔は明らかな不安が滲んでいたのに「帰ります」の一言が口をつくことはなく、向かいの男の一存に大人しく委ねようと恐る恐る瞳をあげる姿は、どんなに肌を隠す服を着たってどんなに型通りに言いつけを守ったって、詰まるところ意思薄弱で自己主張が出来ない女そのものだった。
向かいの男がにへらと笑って、自身の交差した両人差し指を無骨そうな店主にむけてくれなかったらずっとここに居続けるつもりだったのだろうか。
干上がった砂浜の貝殻みたく色褪せたヤドヴィガが腕をかざし見つめる方角を、まのは首を軋ませ追ってみるとそこには出入り口の扉。またも神経質な音を立てる置きっぱなしのコーヒーグラス。
誰かが予め指示していたかのように追い詰めてくる焦りに身動きの取れなくなっているまのはなんの理由もなく再度襟を引っ張り上げる。
二人の男女が席を立ってしまうと、あとは流しに捨てられる運命を待つだけの酸っぱい珈琲と渋い紅茶の水面は死のように静まり返った。