N夢短編
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キミは知っているかい?イッシュ建国神話には、こんな逸話が残されている。ーーその昔、神と人との間に生まれた双子の兄弟は、当時国を治めていた勢力からその存在をひどく恐れられ、森に捨てられた。二人は運良くその森でポケモンに育てられ、無事に成人したのち、王権を奪還してイッシュを建国したという。彼らと似たような生い立ちをもつボクは、その話に深く共感を覚えていた。だからこそ、自分がイッシュの英雄を目指すことに何の違和感も抱かなかった。
ボクがゲーチス に拾われたのは随分昔のことだ。城の中での暮らしは、それまでの森での生活と比べれば、何一つ不自由などなかった。けれど、そこでのポケモンたちとの長く歪な共同生活は、ボクという個人のあり方に深い影響を及ぼした。ボクの部屋には定期的にポケモンたちが連れてこられた。元のトレーナーによって体にも心にも傷を負った彼らはなかなか心を開いてくれず、時に差し伸べたボクの手に噛みつき、襲いかかってくることさえあった。ボクはそれが人間に対する恐怖心からの行動であるということを理解していたから、体よりも寧ろ心の方が痛んだ。ボクはポケモンを傷つける人間が許せなかった。ポケモンをモンスターボールに閉じ込めて、ポケモンの意思に関係なく戦わせ、弱ければ捨ててしまう、そんな身勝手な人間が。もちろん世の中そんな人間ばかりではないということは、ボクと志を同じくするプラズマ団員たちとの関わりを通して重々承知していたが、それでもボクは傷ついたポケモンたちの声を聴けば聴くほど人間という愚かな生き物に嫌気がさし、人間がポケモンにとって害悪であるという思想と人間への不信感とを強めていった。
やがて時が満ち、レシラムーーイッシュ建国に携わったとされる伝説のドラゴンポケモンーーとトモダチになるべく、長年暮らした城を離れて旅に出ることになったボクは、久々に目にした外の世界に眩暈を覚えた。幼少期は森でポケモンに育てられ、ゲーチス に引き取られてからも城の中でポケモンたちと共に生活してきたボクにとって、こんなにも多くの人間が行き交う世界に身を置くのは初めての体験だった。
人間とポケモンとの共生は不可能であり、ポケモンは人間の手から解放されてはじめて幸せに生きることができる。当時のボクはそれが真実だと信じて疑わなかった。そしてポケモンにとって幸福な世界を実現させるため、英雄となってレシラムとトモダチになり、チャンピオンを超えること、それはボクの信念であり、また夢でもあった。けれど、旅を通してーーそしてあのトレーナーに出会ってーーボクは己れの信ずる道に疑念を抱きはじめた。生まれて初めて人間を好きだと言うポケモンに出会い、また道行く先でボクに協力してくれたポケモン がボクとの別れを惜しむ様子を目の当たりにして、ボクはますます自身に対する疑いを深めていった。
後に分かったことだが、それまでボクが信じて疑わなかった真実は、あくまで自身の固定観念の中での姿に過ぎなかった。あのトレーナーは大きな夢と確固たる理想とをもってボクと対峙し、ボクに解けなかった数式の解を、世界の可能性を見せてくれた。ボクは彼に感謝している。彼が今どこで何をしているのか、己れの夢を叶えることができたのか、ボクには分からない。またどこかで会えればいいと、そう願っている。……いや、いつの日か彼と再開する未来が、ボクにはもう見えているよ。
……話が長くなってしまったね。人に身の上話をするのはキミが初めてだよ。人間に心を開くことなんてあり得ないと思っていたが……キミは不思議な人だ。次はキミの話を聴かせてくれたまえ。キミのことを、もっと知りたいんだ。
ボクが
やがて時が満ち、レシラムーーイッシュ建国に携わったとされる伝説のドラゴンポケモンーーとトモダチになるべく、長年暮らした城を離れて旅に出ることになったボクは、久々に目にした外の世界に眩暈を覚えた。幼少期は森でポケモンに育てられ、
人間とポケモンとの共生は不可能であり、ポケモンは人間の手から解放されてはじめて幸せに生きることができる。当時のボクはそれが真実だと信じて疑わなかった。そしてポケモンにとって幸福な世界を実現させるため、英雄となってレシラムとトモダチになり、チャンピオンを超えること、それはボクの信念であり、また夢でもあった。けれど、旅を通してーーそしてあのトレーナーに出会ってーーボクは己れの信ずる道に疑念を抱きはじめた。生まれて初めて人間を好きだと言うポケモンに出会い、また道行く先でボクに協力してくれた
後に分かったことだが、それまでボクが信じて疑わなかった真実は、あくまで自身の固定観念の中での姿に過ぎなかった。あのトレーナーは大きな夢と確固たる理想とをもってボクと対峙し、ボクに解けなかった数式の解を、世界の可能性を見せてくれた。ボクは彼に感謝している。彼が今どこで何をしているのか、己れの夢を叶えることができたのか、ボクには分からない。またどこかで会えればいいと、そう願っている。……いや、いつの日か彼と再開する未来が、ボクにはもう見えているよ。
……話が長くなってしまったね。人に身の上話をするのはキミが初めてだよ。人間に心を開くことなんてあり得ないと思っていたが……キミは不思議な人だ。次はキミの話を聴かせてくれたまえ。キミのことを、もっと知りたいんだ。
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