N夢短編
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Nさまが旅に出られて早数ヶ月。Nさまは城のポケモンたちを連れて行かなかったから、残されたポケモンたちの世話はわたしたちプラズマ団員に任されていた。世話といっても、ご飯の用意をして一緒に遊ぶだけだから、外回りの仕事よりはずっと楽だ。同僚は退屈だと言っていたが、わたしはやりがいをもってこの任務にあたっている。Nさまの大切な「お友だち」を任せていただけるだなんて、至極光栄だ。
ポケモンたちの昼食を持って部屋に入るなり、Nさまのゾロアがすぐさま駆け寄ってきた。まるで催促するように激しく尻尾を振って、わたしの膝元に前足をかけてくる。「これじゃ動けませんよ」とゾロアを宥め、部屋の奥へと足を進める。わたしの横にぴったりとくっついて離れないせっかちなゾロアと、その無邪気な様子に思わず笑みをこぼしてしまうわたしを、Nさまのヒヒダルマが穏やかな表情を浮かべて眺めていた。さらにその後ろで、遊具の影からNさまのコロモリが顔を半分覗かせてこちらを窺っている。臆病なコロモリは、なかなか警戒心を解いてくれない。少し悲しいけれど、焦っても仕方ない。だってNさまのポケモンたちは、かつて人間から虐げられ、心に深い傷を負っているのだから。
「どうぞ、召し上がってください」
食事を床に置くと、ゾロアは待ってましたと言わんばかりにガツガツと食べ始めた。ヒヒダルマはおもむろに起き上がり、ゆったりとした動作で食事を口に運ぶ。隠れていたコロモリもおそるおそる出てきて、食事に口をつけ始めた。三匹とも食欲ばっちり、至って健康な様子だ。
三匹の食事の様子を微笑ましく思って観察していると、それまで食事に夢中になっていたゾロアが突如両耳をピンと立て、勢いよく顔を上げた。そしてドアの方へと駆けていく。来客だろうか。ゾロアがあんなにも目を輝かせて興奮しているのは、まさか、もしかして……。
そこで扉が開き、その人が姿を見せた。
「……Nさま!」
Nさまは慣れた手つきでゾロアを抱き上げ、その頭をそっと撫でた。ゾロアが嬉しそうに鳴き声を上げる。ヒヒダルマもコロモリも、ゾロアに続くようにNさまに駆け寄った。わたしはNさまの突然のお帰りに驚きと喜びとで胸がいっぱいになり、その場に呆然と立ち尽くしていた。
「キミがボクのトモダチの世話をしてくれていたのかい?」
Nさまに尋ねられて、困惑を隠せないわたしは「は、はい」と吃り気味に答えた。
「ゾロアが教えてくれたよ。いつもキミに一緒に遊んでもらって、ボクが居ない間も楽しく過ごしていた、と」
ありがとう、とNさまは続けた。恐れ多いお言葉に、わたしは「とんでもございません!」と首を振る。わたしは何も特別なことはしていない。ただ任を全うしているだけだ。
Nさまはしばらくポケモンたちと戯れた後、おもむろに腰を上げて、再びわたしに目を向けた。Nさまの表情は決意に満ちていたが、なぜか瞳には僅かに迷いのようなものが見え隠れしていた。
「これからもトモダチのことを頼むよ。ボクは世界を変えるための数式を解かなければならない」
そう言い残して、Nさまは部屋を出ていかれた。残されたポケモンたちとわたしは、閉ざされた扉の向こうをただ見つめていた。
ポケモンたちの昼食を持って部屋に入るなり、Nさまのゾロアがすぐさま駆け寄ってきた。まるで催促するように激しく尻尾を振って、わたしの膝元に前足をかけてくる。「これじゃ動けませんよ」とゾロアを宥め、部屋の奥へと足を進める。わたしの横にぴったりとくっついて離れないせっかちなゾロアと、その無邪気な様子に思わず笑みをこぼしてしまうわたしを、Nさまのヒヒダルマが穏やかな表情を浮かべて眺めていた。さらにその後ろで、遊具の影からNさまのコロモリが顔を半分覗かせてこちらを窺っている。臆病なコロモリは、なかなか警戒心を解いてくれない。少し悲しいけれど、焦っても仕方ない。だってNさまのポケモンたちは、かつて人間から虐げられ、心に深い傷を負っているのだから。
「どうぞ、召し上がってください」
食事を床に置くと、ゾロアは待ってましたと言わんばかりにガツガツと食べ始めた。ヒヒダルマはおもむろに起き上がり、ゆったりとした動作で食事を口に運ぶ。隠れていたコロモリもおそるおそる出てきて、食事に口をつけ始めた。三匹とも食欲ばっちり、至って健康な様子だ。
三匹の食事の様子を微笑ましく思って観察していると、それまで食事に夢中になっていたゾロアが突如両耳をピンと立て、勢いよく顔を上げた。そしてドアの方へと駆けていく。来客だろうか。ゾロアがあんなにも目を輝かせて興奮しているのは、まさか、もしかして……。
そこで扉が開き、その人が姿を見せた。
「……Nさま!」
Nさまは慣れた手つきでゾロアを抱き上げ、その頭をそっと撫でた。ゾロアが嬉しそうに鳴き声を上げる。ヒヒダルマもコロモリも、ゾロアに続くようにNさまに駆け寄った。わたしはNさまの突然のお帰りに驚きと喜びとで胸がいっぱいになり、その場に呆然と立ち尽くしていた。
「キミがボクのトモダチの世話をしてくれていたのかい?」
Nさまに尋ねられて、困惑を隠せないわたしは「は、はい」と吃り気味に答えた。
「ゾロアが教えてくれたよ。いつもキミに一緒に遊んでもらって、ボクが居ない間も楽しく過ごしていた、と」
ありがとう、とNさまは続けた。恐れ多いお言葉に、わたしは「とんでもございません!」と首を振る。わたしは何も特別なことはしていない。ただ任を全うしているだけだ。
Nさまはしばらくポケモンたちと戯れた後、おもむろに腰を上げて、再びわたしに目を向けた。Nさまの表情は決意に満ちていたが、なぜか瞳には僅かに迷いのようなものが見え隠れしていた。
「これからもトモダチのことを頼むよ。ボクは世界を変えるための数式を解かなければならない」
そう言い残して、Nさまは部屋を出ていかれた。残されたポケモンたちとわたしは、閉ざされた扉の向こうをただ見つめていた。
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