刀剣乱舞
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今思えば朝から何もかもがダメだった。
気づかないうちに止めてしまっていた目覚まし時計のせいで寝坊したし、そのせいで本丸の朝礼はすっぽかして、本部との定例会議には寝癖をつけたまま参加。その後やっと食べられた朝食の席では味噌汁を盛大に溢して服を着替えるどころかお風呂まで入ることになってしまって、立て込んだ仕事を思って焦っていたら浴場で転んで膝と肘にあざを作ってしまった。
こんな状態で畑仕事の手伝いをしようなんて思い立ったわたしが悪い。完璧に。
「主君!大丈夫ですか!」
大量に収穫したトマトの箱を持ち上げようとしたら手を滑らせ、中身を全てぶちまけた上に箱の角が右の爪先に直撃した。
声もなくうずくまっている私を発見した前田がマントをひらめかせてすっ飛んできたのはそのすぐ後だ。
「さ、さすが短刀極だねぇ」
「そんなこと言ってる場合ですか!」
「大丈夫だよ、爪先ぶつけただけだから」
「爪先は1番脆いんです!こんな重い箱が直撃したのなら骨折の可能性もあるんですよ!」
どちらかといえば心のダメージの方が大きかったが、目の前で青ざめている前田を見ていると少し救われたような気分になる。
「とにかく動かないでください!今すぐに誰か…」
「どうしたの?」
「加州さん!主君が、足を…!」
「足?」
清光の目が厳しくなったのが分かった。
同じ世話係でも、体調を崩したり怪我をしたりするとむちゃくちゃに甘やかしてくれる長谷部と違い、清光からはいつも自己管理がなってないと一蹴されるのが常だった。
「ま、前田くんや、ちょっと大袈裟だよ」
「大袈裟じゃありません!本当に折れてたらどうするんですか!」
遂に目に涙まで浮かべ始めた前田。
こちらは色んな意味で気が気じゃない。
「だ、だーいじょーぶ!折れてたらさすがに自分で気づくし!なーんでもないよー、これくらい」
ふらふらと右足を動かしてみると小さな両手でびたっと押さえつけられた。
「またそんなこと言って!熱があることに気づかずお仕事を続けて倒れたこと、僕忘れてませんからね!」
「まえだー!ごめーん!」
遂に泣き出してしまった前田をたまらず抱きしめる。
そうだった。そんなことあったな、忘れてた。口にはとても出せないけど。
「とかいって、忘れてたでしょ」
目敏い清光が後ろから指摘する。
「その時の近侍が誰だったかも忘れてんじゃないの」
「前田くんです!本当にごめんなさい!」
そのまま平謝りを続けてしばらくすると、落ち着いたらしい前田がもそもそと私の腕の中から出てきた。
「とにかく…今日はもう安静にしててください」
「はい…」
目元を真っ赤にした彼にそんなことを言われてノーと言える人がいるなら会ってみたい。
大人しく了解の返事をして立ち上がろうとしたら体がふわっと浮いた。
「うわぁあ⁉︎」
「前田、主がぶちまけたトマト片しておいたから。あとよろしくね」
「はい。加州さんも、主君のことよろしくお願いします!」
「はーい」
何気なく前田と会話をしているが、この加州清光なんと私をお姫様抱っこしているのである。
「はぁ?」
「はぁ?じゃない。ありがとうございますでしょ」
「ありがとうございます…というか私別に歩けるけど」
「前田の前で?歩けるの?本当に?」
「すいませんでした。お願いします。」
こんな小競り合いの間にもスタスタと屋敷へと進む清光。
言っちゃ悪いけど私を軽々と抱えて移動できるのが意外だった。
「ごめんね、重いでしょ」
「誰に言ってんの、刀剣男士だよ?俺」
少し上から聞こえる声はいつも通りのはずなのに、いつもならありえない近さにいる分逆にくぐもって聞こえる。
「今日、調子悪いんじゃないの」
「ほんとにねぇ」
「ほんとにねぇ、じゃなくて…体調が悪いんじゃないのって言ってんの!」
「悪くないよ、別に」
「ほんとかよ」
疑うなら聞くなよと言いたいところだが前科があるので大口は叩けない。
「みんな心配してたよ、主の様子がおかしいって」
「そっか。迷惑かけちゃったね、悪いことしたなぁ」
「はぁ?」
「え、何」
「迷惑なんて一言も言ってないんだけど」
「えぇ…?」
「あのねぇ、心配してるって言ってんの!迷惑なんて思ってない!」
「おぉ…そっかそっか」
「…まさか違いが分からない?あんた何年人間やってんの」
適当に答えたのがばれて、清光を余計に不機嫌にさせてしまった。
吐き捨てるように主を侮辱するこの彼の姿。
そういえば私が風邪に気づかずに倒れた時にも見た気がする。
「…清光もいつも心配してくれてたの?」
「…」
「そっか、迷惑かけられて怒ってるのかと思ってた」
「はぁ?そんなわけないでしょ!あんたバカァ?」
「おぉ、名言」
「茶化すな」
「はい、すいません」
近くで聞いてる分ドスの効いた声の迫力もひとしおだった。
「とにかく、自分のことをもっとちゃんと把握しててよね。主は周りに甘え過ぎ」
「あぁ、『自己管理』ってそういうことか」
「今更すぎる…」
呆れ返るのも無理はない。
もう何年も一緒にいて、同じことを繰り返し言われてきたにも関わらず今やっと「自己管理」の本当の意味を知ったなんて自分でもびっくりだ。
「迷惑だから自己管理してくれ」と「心配するから自己管理してくれ」では微妙に違う。
そりゃあ両者の行き違いも深まるというもの。
とどのつまりこの近侍を含めた我が本丸の刀剣男士達は「体調が悪いのなら我慢せずにすぐに言ってくれ、心配だから」ということを伝えてくれていたらしい。
「清光、いつもありがとうね」
「は…え、なに」
「確かに私甘え過ぎだったかも。清光がいつも言ってる『自己管理』頑張ってみるよ」
「いや…うん、そうだね…」
「あれ、私またなんか間違った?」
「………別に甘えてほしくないわけじゃないんだけど…」
「ツンデレめんどくせえな!」
「は、はぁ⁉︎ツンデレじゃねぇし!」
「少しは長谷部を見習えよ!むちゃくちゃわかりやすいから‼︎扱いやすいから!」
「普通この状況で他の刀剣の話する⁉︎アンタ今誰の腕の中にいるか分かってんの⁉︎」
「うるせー!清光はいちいち感情表現が重い!」
「重いのは主の方だろ!ちょっとは運動しろ!」
「うわーーーーん!はせべーーーーー!」
「あーーーーー!うるさーーーーーい!」
気づかないうちに止めてしまっていた目覚まし時計のせいで寝坊したし、そのせいで本丸の朝礼はすっぽかして、本部との定例会議には寝癖をつけたまま参加。その後やっと食べられた朝食の席では味噌汁を盛大に溢して服を着替えるどころかお風呂まで入ることになってしまって、立て込んだ仕事を思って焦っていたら浴場で転んで膝と肘にあざを作ってしまった。
こんな状態で畑仕事の手伝いをしようなんて思い立ったわたしが悪い。完璧に。
「主君!大丈夫ですか!」
大量に収穫したトマトの箱を持ち上げようとしたら手を滑らせ、中身を全てぶちまけた上に箱の角が右の爪先に直撃した。
声もなくうずくまっている私を発見した前田がマントをひらめかせてすっ飛んできたのはそのすぐ後だ。
「さ、さすが短刀極だねぇ」
「そんなこと言ってる場合ですか!」
「大丈夫だよ、爪先ぶつけただけだから」
「爪先は1番脆いんです!こんな重い箱が直撃したのなら骨折の可能性もあるんですよ!」
どちらかといえば心のダメージの方が大きかったが、目の前で青ざめている前田を見ていると少し救われたような気分になる。
「とにかく動かないでください!今すぐに誰か…」
「どうしたの?」
「加州さん!主君が、足を…!」
「足?」
清光の目が厳しくなったのが分かった。
同じ世話係でも、体調を崩したり怪我をしたりするとむちゃくちゃに甘やかしてくれる長谷部と違い、清光からはいつも自己管理がなってないと一蹴されるのが常だった。
「ま、前田くんや、ちょっと大袈裟だよ」
「大袈裟じゃありません!本当に折れてたらどうするんですか!」
遂に目に涙まで浮かべ始めた前田。
こちらは色んな意味で気が気じゃない。
「だ、だーいじょーぶ!折れてたらさすがに自分で気づくし!なーんでもないよー、これくらい」
ふらふらと右足を動かしてみると小さな両手でびたっと押さえつけられた。
「またそんなこと言って!熱があることに気づかずお仕事を続けて倒れたこと、僕忘れてませんからね!」
「まえだー!ごめーん!」
遂に泣き出してしまった前田をたまらず抱きしめる。
そうだった。そんなことあったな、忘れてた。口にはとても出せないけど。
「とかいって、忘れてたでしょ」
目敏い清光が後ろから指摘する。
「その時の近侍が誰だったかも忘れてんじゃないの」
「前田くんです!本当にごめんなさい!」
そのまま平謝りを続けてしばらくすると、落ち着いたらしい前田がもそもそと私の腕の中から出てきた。
「とにかく…今日はもう安静にしててください」
「はい…」
目元を真っ赤にした彼にそんなことを言われてノーと言える人がいるなら会ってみたい。
大人しく了解の返事をして立ち上がろうとしたら体がふわっと浮いた。
「うわぁあ⁉︎」
「前田、主がぶちまけたトマト片しておいたから。あとよろしくね」
「はい。加州さんも、主君のことよろしくお願いします!」
「はーい」
何気なく前田と会話をしているが、この加州清光なんと私をお姫様抱っこしているのである。
「はぁ?」
「はぁ?じゃない。ありがとうございますでしょ」
「ありがとうございます…というか私別に歩けるけど」
「前田の前で?歩けるの?本当に?」
「すいませんでした。お願いします。」
こんな小競り合いの間にもスタスタと屋敷へと進む清光。
言っちゃ悪いけど私を軽々と抱えて移動できるのが意外だった。
「ごめんね、重いでしょ」
「誰に言ってんの、刀剣男士だよ?俺」
少し上から聞こえる声はいつも通りのはずなのに、いつもならありえない近さにいる分逆にくぐもって聞こえる。
「今日、調子悪いんじゃないの」
「ほんとにねぇ」
「ほんとにねぇ、じゃなくて…体調が悪いんじゃないのって言ってんの!」
「悪くないよ、別に」
「ほんとかよ」
疑うなら聞くなよと言いたいところだが前科があるので大口は叩けない。
「みんな心配してたよ、主の様子がおかしいって」
「そっか。迷惑かけちゃったね、悪いことしたなぁ」
「はぁ?」
「え、何」
「迷惑なんて一言も言ってないんだけど」
「えぇ…?」
「あのねぇ、心配してるって言ってんの!迷惑なんて思ってない!」
「おぉ…そっかそっか」
「…まさか違いが分からない?あんた何年人間やってんの」
適当に答えたのがばれて、清光を余計に不機嫌にさせてしまった。
吐き捨てるように主を侮辱するこの彼の姿。
そういえば私が風邪に気づかずに倒れた時にも見た気がする。
「…清光もいつも心配してくれてたの?」
「…」
「そっか、迷惑かけられて怒ってるのかと思ってた」
「はぁ?そんなわけないでしょ!あんたバカァ?」
「おぉ、名言」
「茶化すな」
「はい、すいません」
近くで聞いてる分ドスの効いた声の迫力もひとしおだった。
「とにかく、自分のことをもっとちゃんと把握しててよね。主は周りに甘え過ぎ」
「あぁ、『自己管理』ってそういうことか」
「今更すぎる…」
呆れ返るのも無理はない。
もう何年も一緒にいて、同じことを繰り返し言われてきたにも関わらず今やっと「自己管理」の本当の意味を知ったなんて自分でもびっくりだ。
「迷惑だから自己管理してくれ」と「心配するから自己管理してくれ」では微妙に違う。
そりゃあ両者の行き違いも深まるというもの。
とどのつまりこの近侍を含めた我が本丸の刀剣男士達は「体調が悪いのなら我慢せずにすぐに言ってくれ、心配だから」ということを伝えてくれていたらしい。
「清光、いつもありがとうね」
「は…え、なに」
「確かに私甘え過ぎだったかも。清光がいつも言ってる『自己管理』頑張ってみるよ」
「いや…うん、そうだね…」
「あれ、私またなんか間違った?」
「………別に甘えてほしくないわけじゃないんだけど…」
「ツンデレめんどくせえな!」
「は、はぁ⁉︎ツンデレじゃねぇし!」
「少しは長谷部を見習えよ!むちゃくちゃわかりやすいから‼︎扱いやすいから!」
「普通この状況で他の刀剣の話する⁉︎アンタ今誰の腕の中にいるか分かってんの⁉︎」
「うるせー!清光はいちいち感情表現が重い!」
「重いのは主の方だろ!ちょっとは運動しろ!」
「うわーーーーん!はせべーーーーー!」
「あーーーーー!うるさーーーーーい!」