刀剣乱舞
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普段から仲良くしてもらっているお隣の審神者さんにランチのお招きをいただいた。
全国から審神者が集まる定例会と違って非公式の場だし、偶には練度とか人間界での経験値とかとは関係なく近侍を決め、お出かけに連れて行ってあげようと思ったのだが「面倒くさい」「他に用事がある」等々なにかと理由をつけて誰も乗り気になってくれなかった。
え?もしかして私、自分ちの男士達に全然懐かれてない?泣きそう。
しょぼくれていた私の気持ちを押しのけるように、我こそはと立候補してくれたのが他でもない、今目の前にいる刀剣男士だった。
「いやあ、人の身を得ただけでなく外出までさせてもらえるとはなあ!どんな驚きに満ちているのか楽しみだ!」
嫌な予感しかしない。
練度が高くて、人の世にも慣れた鶴丸国永となればいざ知らず、うちのこの鶴丸さんはつい最近顕現したばかりなのだ。
驚きに対する執着が違う。
さながら2歳児である。
審神者歴の長い私が、今頃やっと鶴丸国永を本丸に降ろすに至ったのは、偏に私の鍛刀嫌いが災いしてのことだ。
他でもない審神者、こと私が環境の変化に弱い為、新人を迎えることになる鍛刀は、うちの本丸では滅多に行われない。
今いるみんなと一緒に暮らしているだけでもひーひー言ってるのに、これ以上コミュニケーションの対象を増やして私の身が持つとは思えなかった。
だがしかし、鍛刀も審神者の大事な業務の1つ。
職務怠慢を時の政府からせっつかれ、何か月かぶりに鍛刀を行ってみたところこの鶴丸さんが顕現なさったのだった。
「大丈夫だよ。走り回らないこと、火を触らないこと、大事な話をしている時には静かにしていること、はちゃんと教えておいたから」
とは燭台切光忠ことみっちゃんの言である。
鶴丸さんマジもんの2歳児じゃん…。
「主!あの小さい生き物はなんだ⁉こんのすけとは違うな…」
「あれは犬ですよ」
「おお!あれが!主!あれは何をしているんだ?」
「あれはお魚屋さんです」
「俺が昨夜食べたものはあれか?」
「いえ、あの左端のやつです」
「ん?あれか。随分小さく見えるな」
「開くと大きくなるんですよ。あと店先でそういうこと言うのはやめてください」
「何でだ?」
はい。手土産を買ってからお隣さんにお邪魔しようと思い、街に寄ってみたらこの有様です。
(昨日の買い出し係についでにお願いすればよかった…)
小さいお子さんを連れて買い出しを済ませる全国のお父さんお母さんに敬礼。
「それで手土産は何にするんだ?」
「そこに有名な和菓子屋さんがあって、そこで…」
目的地である和菓子屋の方向を指し示して彼を見上げる。
ひょろっと背の高い鶴丸さんにすぐ隣を歩かれると、見上げるだけでも一苦労だった。
本丸を出発した時にも思ったが、「好奇心で瞳が輝く」なんて言葉の綾だと思っていたのに、彼の場合はその限りではないらしい。
何十分ぶりかに見つめた鶴丸さんの金色の瞳は未だ爛々と光り輝いていて、綺麗な白髪がその光を更に反射しているんじゃないかと思う程眩しい。
(あぁ、顔が良い)
顔立ちが美しいのは刀剣男士全員に言えることだけれど、すらりとした線の細い身体と、はかなげな顔立ちを兼ね備えた鶴丸さんはまさに「美人」そのものだった。
それなのに、
「和菓子屋⁉甘味処か⁉俺は甘い食べ物も好きだぞ。何を買うんだ⁉」
(口を開くとこれなんだもんなあ)
「主?どうした、迷っているなら俺が決めてもいいか?」
「いや『手土産』なので、鶴丸さんの好きなものではなく、相手の…ぎゃ!」
頭上からひっきりなしに降ってくる質問の内容と、隣を歩く美人とのギャップに思わず頭を抱えていたら足元が疎かになっていたらしい。
足がとられ、身体がよろめく。
(ああ、もう…余所行きの良い服を着てきたのに!)
あいにく態勢を咄嗟に立て直すことができる程の運動神経は持ち合わせていない。
盛大に転ぶこと前提で、お気に入りの服が汚れてしまうことに精神的ダメージを負いながら、私はぎゅっと目を閉じた。
「おっと。大丈夫か、主」
目を開くとそこは雪国だった。
嘘です。鶴丸さんの腕の中でした。
彼の真っ白なお召し物のせいで視界が一面真っ白なのは本当。
どうやら鶴丸さんは、咄嗟に私の腕を引いて身体を抱き寄せる形で、主たる私がすっころぶのを阻止してくれたらしい。
「主?」
少し体を離して、今度は私の顔を覗きこむ鶴丸さん。
ついさっきまで子どものようなキラキラを湛えていた瞳が、今度は一丁前に心配の色を滲ませている。
彼の体温に包まれているからか、前髪が触れ合うような距離に顔を寄せ合っているからか、彼の金色の両目が余計に美しく見える。
「どこか痛めたか」
「………はい、いえ」
「うん?どっちだ、それは」
怪訝そうに眉根を寄せた鶴丸さんを見て漸く正気を取り戻した私は半ば飛びのくように彼の腕の中から抜け出した。
顔から火が出るとはよく言ったもので、今の私は何なら耳まで熱いのを感じる。
「大丈夫です!すいません!ありがとうございます!」
「…はは!おかしな主だな」
私の急な動きに少し驚いた様子だったけれど、すぐにいつもの調子を取り戻した鶴丸さんは朗らかに笑いながら、よろめいた拍子に落としたらしい私の荷物を拾い上げてくれた。
鶴丸さんに「おかしい」なんて言われるのは不本意極まりないが、今の私の挙動ではぐうの音も出ない。
(ああ!まだ心臓がうるさい!顔が熱い!)
純白の衣装がよく似合う色素の薄い見た目のせいで、線が細いイメージだったけれど、完全な誤解だった。
背も高いし肩幅も広いし、隣で突然転びそうになる成人女性をいとも簡単に支えることができる筋力もある。
2歳児?美人?とんでもない。
こんなのどこをどうとっても正しく大人の男性じゃないか。
「それで、その和菓子屋とやらはどこなんだ?」
こうなると彼の落ち着いた低い声でさえ変に意識してしまう。
声がみっともなく上擦ったりしないように、小さく深呼吸をしてから鶴丸さんの方に直る。
「すぐそこです。あの赤い看板の…ん?」
言いながら、鶴丸さんが拾ってくれた私の荷物を受け取ろうとすると、ひょいと上にあげられてしまった。
「え、あの」
「これは俺が持ってやろう。主では危なっかしい」
「いや、ただのハンドバッグですよ。重くもなんともないので大丈夫です」
「まあまあ。代わりと言ってはなんだがこっちを持っていてくれ」
「…」
「ほら」
「変わった手袋ですね」
「ああ、格好いいだろう」
「そうじゃなくて。何なんですか、この手は」
「また転ばないように手を繋いで歩いた方がいいだろう」
「あ大丈夫です」
「何でだ!」
「何でも何も普通に嫌ですよ。そんな子どもみたいな…」
「おいおい、こう見えても俺は平安生まれだぞ。主なんか産まれたての赤子みたいなもんだ」
「産まれたての赤子じゃないので大丈夫です。バッグ返してください」
「あはは!何もないところで躓いているようじゃ説得力に欠けるぞ、主!」
「う…」
女性用の小さなバッグを小脇に抱え、もう片方の手をこちらに差し出したまま一歩も引かない鶴丸さん。
嫌がる私をにやにやと見下ろすさまはさながらガキ大将である。
(どっちが子どもなんだか)
「ほら、早くしないと遅刻してしまうんじゃないか?」
「分かりましたよ、はい」
「うん、人間素直が一番だぞ」
おかしな作りの手袋に包まれた、大きくて節くれだった手は、確かに私の手をすっかり覆えるほどのしっかりとした男性の手だった。
男所帯に長く暮らしているとは言え、こんな風に誰かと手を繋いで歩くなんてことはほぼなかったので動揺してしまう。
まるで恋人のようだ、なんて邪な思いがよぎった自分の精神に喝を入れる為、ため息混じりに何とか会話を続ける。
「全くどこでこんな余計な事を学んだんですか」
「余計な事?」
「子どもとは手を繋いで歩きましょう、なんてことです」
「ああ…まあ、それは体の良い言い訳だ」
「は?」
「ほら、着いたぞ。ここじゃないのか、和菓子屋」
この時はすっかりはぐらかされてしまったけれど、結局その日は本丸に帰るまでずっと手を繋がされた。
手を繋ぎ、隣り合って歩いている間、言われてみれば鶴丸さんの耳がほんのり桃色だったかもしれない、なんてことに思い至ったのは、後日のこと。
今剣から短刀達の間で流行っている少女漫画を、鶴丸さんが愛読しているという話を聞いてからだった。
(なに、手を繋ぎたい理由ってもしかしてそういうこと⁉)
「おっと、危ない」
悶々としながら歩いていたのが悪かった。
曲がり角で誰かと正面衝突してしまった私はその相手を確認して絶句する。
「なんだ、主。相変わらず危なっかしいな」
「つ、鶴丸さん…」
「また俺が手を繋いで歩いてやろうか?」
尻餅をついてしまった私を引き起こす為に鶴丸さんが差し出してくれた手にさえ過剰反応してしまった私の声が、次の瞬間本丸中に響き渡った。
「いや、その『体の良い言い訳』もう通用しませんから!」
全国から審神者が集まる定例会と違って非公式の場だし、偶には練度とか人間界での経験値とかとは関係なく近侍を決め、お出かけに連れて行ってあげようと思ったのだが「面倒くさい」「他に用事がある」等々なにかと理由をつけて誰も乗り気になってくれなかった。
え?もしかして私、自分ちの男士達に全然懐かれてない?泣きそう。
しょぼくれていた私の気持ちを押しのけるように、我こそはと立候補してくれたのが他でもない、今目の前にいる刀剣男士だった。
「いやあ、人の身を得ただけでなく外出までさせてもらえるとはなあ!どんな驚きに満ちているのか楽しみだ!」
嫌な予感しかしない。
練度が高くて、人の世にも慣れた鶴丸国永となればいざ知らず、うちのこの鶴丸さんはつい最近顕現したばかりなのだ。
驚きに対する執着が違う。
さながら2歳児である。
審神者歴の長い私が、今頃やっと鶴丸国永を本丸に降ろすに至ったのは、偏に私の鍛刀嫌いが災いしてのことだ。
他でもない審神者、こと私が環境の変化に弱い為、新人を迎えることになる鍛刀は、うちの本丸では滅多に行われない。
今いるみんなと一緒に暮らしているだけでもひーひー言ってるのに、これ以上コミュニケーションの対象を増やして私の身が持つとは思えなかった。
だがしかし、鍛刀も審神者の大事な業務の1つ。
職務怠慢を時の政府からせっつかれ、何か月かぶりに鍛刀を行ってみたところこの鶴丸さんが顕現なさったのだった。
「大丈夫だよ。走り回らないこと、火を触らないこと、大事な話をしている時には静かにしていること、はちゃんと教えておいたから」
とは燭台切光忠ことみっちゃんの言である。
鶴丸さんマジもんの2歳児じゃん…。
「主!あの小さい生き物はなんだ⁉こんのすけとは違うな…」
「あれは犬ですよ」
「おお!あれが!主!あれは何をしているんだ?」
「あれはお魚屋さんです」
「俺が昨夜食べたものはあれか?」
「いえ、あの左端のやつです」
「ん?あれか。随分小さく見えるな」
「開くと大きくなるんですよ。あと店先でそういうこと言うのはやめてください」
「何でだ?」
はい。手土産を買ってからお隣さんにお邪魔しようと思い、街に寄ってみたらこの有様です。
(昨日の買い出し係についでにお願いすればよかった…)
小さいお子さんを連れて買い出しを済ませる全国のお父さんお母さんに敬礼。
「それで手土産は何にするんだ?」
「そこに有名な和菓子屋さんがあって、そこで…」
目的地である和菓子屋の方向を指し示して彼を見上げる。
ひょろっと背の高い鶴丸さんにすぐ隣を歩かれると、見上げるだけでも一苦労だった。
本丸を出発した時にも思ったが、「好奇心で瞳が輝く」なんて言葉の綾だと思っていたのに、彼の場合はその限りではないらしい。
何十分ぶりかに見つめた鶴丸さんの金色の瞳は未だ爛々と光り輝いていて、綺麗な白髪がその光を更に反射しているんじゃないかと思う程眩しい。
(あぁ、顔が良い)
顔立ちが美しいのは刀剣男士全員に言えることだけれど、すらりとした線の細い身体と、はかなげな顔立ちを兼ね備えた鶴丸さんはまさに「美人」そのものだった。
それなのに、
「和菓子屋⁉甘味処か⁉俺は甘い食べ物も好きだぞ。何を買うんだ⁉」
(口を開くとこれなんだもんなあ)
「主?どうした、迷っているなら俺が決めてもいいか?」
「いや『手土産』なので、鶴丸さんの好きなものではなく、相手の…ぎゃ!」
頭上からひっきりなしに降ってくる質問の内容と、隣を歩く美人とのギャップに思わず頭を抱えていたら足元が疎かになっていたらしい。
足がとられ、身体がよろめく。
(ああ、もう…余所行きの良い服を着てきたのに!)
あいにく態勢を咄嗟に立て直すことができる程の運動神経は持ち合わせていない。
盛大に転ぶこと前提で、お気に入りの服が汚れてしまうことに精神的ダメージを負いながら、私はぎゅっと目を閉じた。
「おっと。大丈夫か、主」
目を開くとそこは雪国だった。
嘘です。鶴丸さんの腕の中でした。
彼の真っ白なお召し物のせいで視界が一面真っ白なのは本当。
どうやら鶴丸さんは、咄嗟に私の腕を引いて身体を抱き寄せる形で、主たる私がすっころぶのを阻止してくれたらしい。
「主?」
少し体を離して、今度は私の顔を覗きこむ鶴丸さん。
ついさっきまで子どものようなキラキラを湛えていた瞳が、今度は一丁前に心配の色を滲ませている。
彼の体温に包まれているからか、前髪が触れ合うような距離に顔を寄せ合っているからか、彼の金色の両目が余計に美しく見える。
「どこか痛めたか」
「………はい、いえ」
「うん?どっちだ、それは」
怪訝そうに眉根を寄せた鶴丸さんを見て漸く正気を取り戻した私は半ば飛びのくように彼の腕の中から抜け出した。
顔から火が出るとはよく言ったもので、今の私は何なら耳まで熱いのを感じる。
「大丈夫です!すいません!ありがとうございます!」
「…はは!おかしな主だな」
私の急な動きに少し驚いた様子だったけれど、すぐにいつもの調子を取り戻した鶴丸さんは朗らかに笑いながら、よろめいた拍子に落としたらしい私の荷物を拾い上げてくれた。
鶴丸さんに「おかしい」なんて言われるのは不本意極まりないが、今の私の挙動ではぐうの音も出ない。
(ああ!まだ心臓がうるさい!顔が熱い!)
純白の衣装がよく似合う色素の薄い見た目のせいで、線が細いイメージだったけれど、完全な誤解だった。
背も高いし肩幅も広いし、隣で突然転びそうになる成人女性をいとも簡単に支えることができる筋力もある。
2歳児?美人?とんでもない。
こんなのどこをどうとっても正しく大人の男性じゃないか。
「それで、その和菓子屋とやらはどこなんだ?」
こうなると彼の落ち着いた低い声でさえ変に意識してしまう。
声がみっともなく上擦ったりしないように、小さく深呼吸をしてから鶴丸さんの方に直る。
「すぐそこです。あの赤い看板の…ん?」
言いながら、鶴丸さんが拾ってくれた私の荷物を受け取ろうとすると、ひょいと上にあげられてしまった。
「え、あの」
「これは俺が持ってやろう。主では危なっかしい」
「いや、ただのハンドバッグですよ。重くもなんともないので大丈夫です」
「まあまあ。代わりと言ってはなんだがこっちを持っていてくれ」
「…」
「ほら」
「変わった手袋ですね」
「ああ、格好いいだろう」
「そうじゃなくて。何なんですか、この手は」
「また転ばないように手を繋いで歩いた方がいいだろう」
「あ大丈夫です」
「何でだ!」
「何でも何も普通に嫌ですよ。そんな子どもみたいな…」
「おいおい、こう見えても俺は平安生まれだぞ。主なんか産まれたての赤子みたいなもんだ」
「産まれたての赤子じゃないので大丈夫です。バッグ返してください」
「あはは!何もないところで躓いているようじゃ説得力に欠けるぞ、主!」
「う…」
女性用の小さなバッグを小脇に抱え、もう片方の手をこちらに差し出したまま一歩も引かない鶴丸さん。
嫌がる私をにやにやと見下ろすさまはさながらガキ大将である。
(どっちが子どもなんだか)
「ほら、早くしないと遅刻してしまうんじゃないか?」
「分かりましたよ、はい」
「うん、人間素直が一番だぞ」
おかしな作りの手袋に包まれた、大きくて節くれだった手は、確かに私の手をすっかり覆えるほどのしっかりとした男性の手だった。
男所帯に長く暮らしているとは言え、こんな風に誰かと手を繋いで歩くなんてことはほぼなかったので動揺してしまう。
まるで恋人のようだ、なんて邪な思いがよぎった自分の精神に喝を入れる為、ため息混じりに何とか会話を続ける。
「全くどこでこんな余計な事を学んだんですか」
「余計な事?」
「子どもとは手を繋いで歩きましょう、なんてことです」
「ああ…まあ、それは体の良い言い訳だ」
「は?」
「ほら、着いたぞ。ここじゃないのか、和菓子屋」
この時はすっかりはぐらかされてしまったけれど、結局その日は本丸に帰るまでずっと手を繋がされた。
手を繋ぎ、隣り合って歩いている間、言われてみれば鶴丸さんの耳がほんのり桃色だったかもしれない、なんてことに思い至ったのは、後日のこと。
今剣から短刀達の間で流行っている少女漫画を、鶴丸さんが愛読しているという話を聞いてからだった。
(なに、手を繋ぎたい理由ってもしかしてそういうこと⁉)
「おっと、危ない」
悶々としながら歩いていたのが悪かった。
曲がり角で誰かと正面衝突してしまった私はその相手を確認して絶句する。
「なんだ、主。相変わらず危なっかしいな」
「つ、鶴丸さん…」
「また俺が手を繋いで歩いてやろうか?」
尻餅をついてしまった私を引き起こす為に鶴丸さんが差し出してくれた手にさえ過剰反応してしまった私の声が、次の瞬間本丸中に響き渡った。
「いや、その『体の良い言い訳』もう通用しませんから!」