魔入りました!入間くん
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魔生物を教える非常勤講師としてバビルスに勤める私は、先輩教師であるスージー先生の助手のようなこともさせてもらっている。
スージー先生が座学を担当される時間は私の出番。
無人になってしまう魔植物棟に私が残り、棟内の植物の様子を見ておくのだ。
といっても基本的なお世話は毎日の師団活動で生徒たちがやってくれているから、緊急事態でもない限りほとんどすることはない。
今日も今日とて私は適当な場所に腰をかけ、お茶を飲みながらボーッとしているのだった。
「勤務時間中だぞ、苗字・名前」
不機嫌を隠そうともしない声の方を振り向くといつも通り眉間に皺を刻んだカルエゴ先生がそこにいた。
「バビルスは虚空を見つめて茶をすする悪魔の為に給金を払っているわけではない」
「ちょっと休憩してただけですよお。そんな言い方しないでください」
相変わらずよくもこう嫌な言い回しを思いつくものだと感心させられてしまうが、これも彼なりの親愛の証であるということを私は知っている。
カルエゴ先生は嫌いな人に自分から突っかかるようなことはしない。
「何か御用ですか?」
「…あぁ」
おおかた授業で使う薬草を採りに来たのだろうと思っていたのだが、どうにも歯切れが悪い。
いつもなら必要なものだけが書かれたメモをポイッと渡されるか、一言声をかけられたかと思ったら勝手に薬草を採集して去っていくというのに、今目の前にいる先生は目を逸らして咳払いをして…何かを隠している挙動そのものだ。
「えっと…?スージー先生に御用でしたか?今は座学で一年棟におられますよ」
「いや、用があるのはお前だ」
「え」
他でもない私に会いにきてくれたのだと分かってにやつく私に、眉間の皺を深くしたカルエゴ先生。
「そんなお顔しても怖くありませんよーだ。何ですか?何の御用ですか?うわ!」
嬉しさ余ってじりじりと先生ににじり寄る私を牽制するように差し出されたのは細長い箱。
驚きのあまり固まっているとすかさずカルエゴ先生が言葉を発した。
「お前、誕生日なんだろう、今日が」
「は…まぁ、はい」
「…」
「…」
「…」
「え?まさかこれ誕生日プレゼント…」
「いらないというなら捨ててくるが?」
「いります!」
飛びつくようにして受け取ると、箱の中には2、3本の花を束ねた花束が収まっていた。
おそらく店員さんに勧められたのであろう、先生にはおよそ似あわない可愛らしいメッセージカードには Happy Birthday の文字。
「せ、先生が、カルエゴ先生が選んでくれたんですか?」
「お、おい、何で泣いて…」
「先生が選んで、買ってきてくれたんですか?私の為に?」
「あぁ、そうだよ!何で泣くんだ!」
「分かんないです…」
先生の教え子だった時からずっと追いかけてきた。
卒業しても離れたくなくてバビルスの非常勤講師にまでなって、それでも振り向いてもらえる気配なんて1ミリもなかったから。
先生の、側にいられるだけでもいいなんて思ってたのに。
カルエゴ先生が、私の誕生日を覚えててくれて、プレゼントを考えてくれて、こうして渡してくれるなんてまるで夢みたいだった。
プレゼントを抱きしめたまま、俯いてぐずぐすと鼻を啜る私に、大きなため息を吐いた先生の表情は見なくても分かる。
きっと問題児が遂に手に負えなくなった時の呆れた表情。
「おい」
「…はい…」
「こっちを向け」
「嫌です…んぎゃ!」
ぐちゃぐちゃの顔を見られたくなくて拒否しようとしたら、先生の大きな両手が頬を包み、そのまま無理矢理顔を上げさせられた。
「んなななに、なん、なんで、なに」
「少し疲れてるんじゃないのか」
私の頰を包んだまま、親指で優しく目元を拭ってくれた先生は、多分私の目の下にできた隈のことを心配してくれているのだろう。
彫りの深さのせいで影が落ちた目元も、眉間に刻まれた皺も、不機嫌に歪められた口元もいつも通りのはずなのに、私を心配してくれている先生の表情は少し泣きそうにも見えて、胸の奥がギュッとなる。
「あのカルエゴ先生が私の心配をしてる…夢?」
「このままお前の頭を捻じ切ることもできるが?」
「ごめんなさい!」
離れていく先生の両手のうち左手だけを掴んで、今度は私から頰を擦り寄せた。
目を見開いて驚くカルエゴ先生が珍しくておかしくて、嬉しくて仕方がない。
慣れない教職の仕事に追われて、寝る時間があまり取れていないのは本当だった。
嬉しかったからといえ職場であられもなく泣いてしまったのも、ストレスのせいだと言われればそうかもしれない。
そういうのを見抜くのが上手いのだ、この悪魔は。
厳しくて恐ろしくて口が悪いカルエゴ先生を、それでも生徒たちが慕うのは彼のそういうところをちゃんと知っているから。
でも今だけは、皆のカルエゴ先生を少しだけ、独り占めしてもいいかな?
「おめでとう、は言ってくれないんですか、先生」
「…この俺に要求を突きつけようなんざ1000年早いわ」
「じゃあ1000年一緒にいなきゃ!」
「黙れ。用は済んだ。さっさと仕事に戻れ」
口では冷たいことを言いながら、私に掴まれた左手を振り解くことは絶対にしない。
この優しさが好きだ。今までも、これからもずっと。
(あーあ、この優しさが私だけに向けられたらいいのにな)
「ありがとうございます、カルエゴ先生。すっごく嬉しいです。プレゼントも絶対絶対大事にします。」
本当に嬉しいと、逆に涙が出てくるのは何故なんだろう。
嬉しくて、幸せで、ぽかぽかしている心のうちをきちんと先生に伝えておこうと思ったのに、今自分が上手に笑えているか自信がない。
きっと泣き笑いのようなブサイクな顔になっている私を見て、カルエゴ先生の眉間の皺がこころなしか深くなったように見えた。
「……………苗字、」
幸せ過ぎて私の頭が遂におかしくなったのか、私の頬に添えた左手をそのままに、カルエゴ先生のご尊顔がこちらに近づいてきているように感じた。
しかも、悩まし気に私の名前を囁きながら。
「あら?カルエゴ先生?」
なにこれ何のご褒美⁉夢でもいい!醒めないで!
なんて1人心の中で興奮していたら、どこからともなく聞きなれた朗らかな声が聞こえてきた。
「スージー先生!お帰りなさい!」
そこはかとなく良い雰囲気だったのをぶち壊されたことよりも、照れが勝ってしまった私は、半ばカルエゴ先生を突き飛ばすようにしていつも以上のハイテンションでスージー先生を出迎える。
もちろん、恐ろしすぎてカルエゴ先生の顔は見られない。
「ただいま、名前さん。お留守番ご苦労様。」
「スージー先生こそ、授業お疲れ様です!」
「カルエゴ先生はなんの御用でこちらに?」
「え⁉あーえっと、それは…」
「実は生徒から密告がありまして」
「は」
「密告?」
もちろんそんなことは初耳の私は、スージー先生と一緒に首をかしげる。
その流れで見ることになってしまったカルエゴ先生のお顔のなんと怖いこと!
(いや、今日に限っては私なにも悪いことしてなくない⁉)
「スージー先生がおられない間、苗字先生が魔植物棟で仕事をサボッているという密告です」
「まぁ!」
「違います、スージー先生!」
「違うの?」
「ちが!いや、ち、違う…ことは…」
優しくて穏やかなスージー先生。
大好きな悪魔の前では嘘のつけない私である。
「事実確認の為に来てみたら案の定このザマです。まあ、今回は厳重注意で…」
「残念ねえ。私は苗字先生のこと信頼してたのに」
「ごめんなさい!スージー先生!でもサボッていたというのは大げさで!誓って仕事を全くしてなかった訳では…」
「特別指導が必要ね」
「すううじいいせんせえええ!」
顔に似合わず穏やかな処置で済ませようとするカルエゴ先生と、号泣しながら足元に縋り付く私を尻目に、スージー先生が話をどんどんと進めていってしまう。
「カルエゴ先生、お願いできますか?」
「は?」
「うぇ?」
状況の飲めない私とカルエゴ先生が間抜けな声を出したのはほぼ同時だった。
「苗字さん、教職に就いたばかりで不慣れなことが多いみたいなの。ついサボりたくなるのはそのせいね。バビルス教員としてのイロハを叩きこんでくださる?」
「いや、それは直属の上司であるスージー先生がご担当された方が…」
「いやあねえ、ご謙遜なさらないで!筆頭教師のカルエゴ先生に勝る指導者なんていませんよ!」
いつも通りのおっとりとした調子で、しかし確実にカルエゴ先生を追い込んでいくスージー先生。
珍しくタジタジと狼狽えているカルエゴ先生を見て、そういえばスージー先生の方が先輩なんだっけ、なんて鼻を啜りながら暢気に構えている私は見逃さなかった。
スージー先生が私へ向けたウィンクを。
「カルエゴ先生が、私に指導してくださるんですか…?」
「いや、まだ決まったわけでは…」
「そうよ、早速今日の放課後なんてどうかしら?」
「…つまり私は、他でもない自分の誕生日にカルエゴ先生と放課後デートができるということですね!」
「うーん…全部言っちゃうのね…」
「スージー先生、優しい!好きです!」
「ふふ、ありがとう。私も頑張り屋さんな苗字さんが大好きよ」
「おい待てコラ。放課後デートとは何だ。指導だろうが」
「ということは引き受けてくださるんですね、カルエゴ先生!」
「よろしくお願いしますね、カルエゴ先生」
思いの外すぐにやってきた、カルエゴ先生を独り占めできる機会にドキドキが止まらない私は、この後、愛しのカルエゴ先生からむちゃくちゃ普通に厳しい指導を受けることになることを知らないのだった。
来年の誕生日こそはロマンチックな記念日にしてみせるんだから!
スージー先生が座学を担当される時間は私の出番。
無人になってしまう魔植物棟に私が残り、棟内の植物の様子を見ておくのだ。
といっても基本的なお世話は毎日の師団活動で生徒たちがやってくれているから、緊急事態でもない限りほとんどすることはない。
今日も今日とて私は適当な場所に腰をかけ、お茶を飲みながらボーッとしているのだった。
「勤務時間中だぞ、苗字・名前」
不機嫌を隠そうともしない声の方を振り向くといつも通り眉間に皺を刻んだカルエゴ先生がそこにいた。
「バビルスは虚空を見つめて茶をすする悪魔の為に給金を払っているわけではない」
「ちょっと休憩してただけですよお。そんな言い方しないでください」
相変わらずよくもこう嫌な言い回しを思いつくものだと感心させられてしまうが、これも彼なりの親愛の証であるということを私は知っている。
カルエゴ先生は嫌いな人に自分から突っかかるようなことはしない。
「何か御用ですか?」
「…あぁ」
おおかた授業で使う薬草を採りに来たのだろうと思っていたのだが、どうにも歯切れが悪い。
いつもなら必要なものだけが書かれたメモをポイッと渡されるか、一言声をかけられたかと思ったら勝手に薬草を採集して去っていくというのに、今目の前にいる先生は目を逸らして咳払いをして…何かを隠している挙動そのものだ。
「えっと…?スージー先生に御用でしたか?今は座学で一年棟におられますよ」
「いや、用があるのはお前だ」
「え」
他でもない私に会いにきてくれたのだと分かってにやつく私に、眉間の皺を深くしたカルエゴ先生。
「そんなお顔しても怖くありませんよーだ。何ですか?何の御用ですか?うわ!」
嬉しさ余ってじりじりと先生ににじり寄る私を牽制するように差し出されたのは細長い箱。
驚きのあまり固まっているとすかさずカルエゴ先生が言葉を発した。
「お前、誕生日なんだろう、今日が」
「は…まぁ、はい」
「…」
「…」
「…」
「え?まさかこれ誕生日プレゼント…」
「いらないというなら捨ててくるが?」
「いります!」
飛びつくようにして受け取ると、箱の中には2、3本の花を束ねた花束が収まっていた。
おそらく店員さんに勧められたのであろう、先生にはおよそ似あわない可愛らしいメッセージカードには Happy Birthday の文字。
「せ、先生が、カルエゴ先生が選んでくれたんですか?」
「お、おい、何で泣いて…」
「先生が選んで、買ってきてくれたんですか?私の為に?」
「あぁ、そうだよ!何で泣くんだ!」
「分かんないです…」
先生の教え子だった時からずっと追いかけてきた。
卒業しても離れたくなくてバビルスの非常勤講師にまでなって、それでも振り向いてもらえる気配なんて1ミリもなかったから。
先生の、側にいられるだけでもいいなんて思ってたのに。
カルエゴ先生が、私の誕生日を覚えててくれて、プレゼントを考えてくれて、こうして渡してくれるなんてまるで夢みたいだった。
プレゼントを抱きしめたまま、俯いてぐずぐすと鼻を啜る私に、大きなため息を吐いた先生の表情は見なくても分かる。
きっと問題児が遂に手に負えなくなった時の呆れた表情。
「おい」
「…はい…」
「こっちを向け」
「嫌です…んぎゃ!」
ぐちゃぐちゃの顔を見られたくなくて拒否しようとしたら、先生の大きな両手が頬を包み、そのまま無理矢理顔を上げさせられた。
「んなななに、なん、なんで、なに」
「少し疲れてるんじゃないのか」
私の頰を包んだまま、親指で優しく目元を拭ってくれた先生は、多分私の目の下にできた隈のことを心配してくれているのだろう。
彫りの深さのせいで影が落ちた目元も、眉間に刻まれた皺も、不機嫌に歪められた口元もいつも通りのはずなのに、私を心配してくれている先生の表情は少し泣きそうにも見えて、胸の奥がギュッとなる。
「あのカルエゴ先生が私の心配をしてる…夢?」
「このままお前の頭を捻じ切ることもできるが?」
「ごめんなさい!」
離れていく先生の両手のうち左手だけを掴んで、今度は私から頰を擦り寄せた。
目を見開いて驚くカルエゴ先生が珍しくておかしくて、嬉しくて仕方がない。
慣れない教職の仕事に追われて、寝る時間があまり取れていないのは本当だった。
嬉しかったからといえ職場であられもなく泣いてしまったのも、ストレスのせいだと言われればそうかもしれない。
そういうのを見抜くのが上手いのだ、この悪魔は。
厳しくて恐ろしくて口が悪いカルエゴ先生を、それでも生徒たちが慕うのは彼のそういうところをちゃんと知っているから。
でも今だけは、皆のカルエゴ先生を少しだけ、独り占めしてもいいかな?
「おめでとう、は言ってくれないんですか、先生」
「…この俺に要求を突きつけようなんざ1000年早いわ」
「じゃあ1000年一緒にいなきゃ!」
「黙れ。用は済んだ。さっさと仕事に戻れ」
口では冷たいことを言いながら、私に掴まれた左手を振り解くことは絶対にしない。
この優しさが好きだ。今までも、これからもずっと。
(あーあ、この優しさが私だけに向けられたらいいのにな)
「ありがとうございます、カルエゴ先生。すっごく嬉しいです。プレゼントも絶対絶対大事にします。」
本当に嬉しいと、逆に涙が出てくるのは何故なんだろう。
嬉しくて、幸せで、ぽかぽかしている心のうちをきちんと先生に伝えておこうと思ったのに、今自分が上手に笑えているか自信がない。
きっと泣き笑いのようなブサイクな顔になっている私を見て、カルエゴ先生の眉間の皺がこころなしか深くなったように見えた。
「……………苗字、」
幸せ過ぎて私の頭が遂におかしくなったのか、私の頬に添えた左手をそのままに、カルエゴ先生のご尊顔がこちらに近づいてきているように感じた。
しかも、悩まし気に私の名前を囁きながら。
「あら?カルエゴ先生?」
なにこれ何のご褒美⁉夢でもいい!醒めないで!
なんて1人心の中で興奮していたら、どこからともなく聞きなれた朗らかな声が聞こえてきた。
「スージー先生!お帰りなさい!」
そこはかとなく良い雰囲気だったのをぶち壊されたことよりも、照れが勝ってしまった私は、半ばカルエゴ先生を突き飛ばすようにしていつも以上のハイテンションでスージー先生を出迎える。
もちろん、恐ろしすぎてカルエゴ先生の顔は見られない。
「ただいま、名前さん。お留守番ご苦労様。」
「スージー先生こそ、授業お疲れ様です!」
「カルエゴ先生はなんの御用でこちらに?」
「え⁉あーえっと、それは…」
「実は生徒から密告がありまして」
「は」
「密告?」
もちろんそんなことは初耳の私は、スージー先生と一緒に首をかしげる。
その流れで見ることになってしまったカルエゴ先生のお顔のなんと怖いこと!
(いや、今日に限っては私なにも悪いことしてなくない⁉)
「スージー先生がおられない間、苗字先生が魔植物棟で仕事をサボッているという密告です」
「まぁ!」
「違います、スージー先生!」
「違うの?」
「ちが!いや、ち、違う…ことは…」
優しくて穏やかなスージー先生。
大好きな悪魔の前では嘘のつけない私である。
「事実確認の為に来てみたら案の定このザマです。まあ、今回は厳重注意で…」
「残念ねえ。私は苗字先生のこと信頼してたのに」
「ごめんなさい!スージー先生!でもサボッていたというのは大げさで!誓って仕事を全くしてなかった訳では…」
「特別指導が必要ね」
「すううじいいせんせえええ!」
顔に似合わず穏やかな処置で済ませようとするカルエゴ先生と、号泣しながら足元に縋り付く私を尻目に、スージー先生が話をどんどんと進めていってしまう。
「カルエゴ先生、お願いできますか?」
「は?」
「うぇ?」
状況の飲めない私とカルエゴ先生が間抜けな声を出したのはほぼ同時だった。
「苗字さん、教職に就いたばかりで不慣れなことが多いみたいなの。ついサボりたくなるのはそのせいね。バビルス教員としてのイロハを叩きこんでくださる?」
「いや、それは直属の上司であるスージー先生がご担当された方が…」
「いやあねえ、ご謙遜なさらないで!筆頭教師のカルエゴ先生に勝る指導者なんていませんよ!」
いつも通りのおっとりとした調子で、しかし確実にカルエゴ先生を追い込んでいくスージー先生。
珍しくタジタジと狼狽えているカルエゴ先生を見て、そういえばスージー先生の方が先輩なんだっけ、なんて鼻を啜りながら暢気に構えている私は見逃さなかった。
スージー先生が私へ向けたウィンクを。
「カルエゴ先生が、私に指導してくださるんですか…?」
「いや、まだ決まったわけでは…」
「そうよ、早速今日の放課後なんてどうかしら?」
「…つまり私は、他でもない自分の誕生日にカルエゴ先生と放課後デートができるということですね!」
「うーん…全部言っちゃうのね…」
「スージー先生、優しい!好きです!」
「ふふ、ありがとう。私も頑張り屋さんな苗字さんが大好きよ」
「おい待てコラ。放課後デートとは何だ。指導だろうが」
「ということは引き受けてくださるんですね、カルエゴ先生!」
「よろしくお願いしますね、カルエゴ先生」
思いの外すぐにやってきた、カルエゴ先生を独り占めできる機会にドキドキが止まらない私は、この後、愛しのカルエゴ先生からむちゃくちゃ普通に厳しい指導を受けることになることを知らないのだった。
来年の誕生日こそはロマンチックな記念日にしてみせるんだから!
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