仮初めなんかじゃなかった
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何でもなかったその日常に、私の時間はまた動き出す。
その日。
いつものようにスターレスへ着くと見覚えのある後ろ姿。
「…夜光さん?」
『えっ、あ…帝さん』
振り向いたその人はスタッフ用の服を着てエントランスに立っている。
『いらっしゃいませ』
「え、あの、どうして」
そう聞くと以前と同じように眉を下げて
『えっと…まぁ、ここで話すと長くなるんだけど』
そう答える。
「あっ、そうですよね。ごめんなさい」
『あ、いや。帝さんが謝ることではなくて、その』
『…ショーが終わったら待っててもらえる?よければ家まで送るよ』
「はい」
夜光さんに返事をしてテーブルへと通される。
正直ショーのことは覚えていない。
料理も何を食べたのかあまり記憶にない。
リンドウさんの付くテーブルだったから夜光さんのことを聞くにも聞けない。
私のその数時間は夜光さんのことでいっぱいだった。
『…お待たせ』
「あっ、はい」
その声に振り返ると夜光さんが思ってもみなかった顔をしている。
「?」
『バカだな。俺のことなんて、置いて帰れば良かったのに』
「えっ」
『俺があなたにしてしまったように…』
そう小さく呟くと
『……さ、行こう』
夜光さんは前を歩く。
「は、はい」
私はその後ろを付いていくように歩く。
家までに着く道のりで話す内容は在り来たりなことで
肝心なことにはお互い踏み込まない。
それを聞くには急すぎて、心の準備が出来ていない。
『えっと。家、ここだったよね?』
「…はい」
マンションの前に到着すると夜光さんが
『じゃ』
と言って背中を向ける。
「…まっ」
待って。
私、まだ何も聞けていない。
何でスターレスにいたのか。
これからまた夜光さんのいるショーが見られるのか。
あの場所に戻ってきてくれるのか。
そんな気持ちだけが先走って夜光さんの手首を掴む。
『んっ…?』
少し驚いた顔で振り向く夜光さんに
「あのっ、夜光さんが良ければ、お話しませんか?」
『話?』
「はい」
夜光さんは掴んでいた手とは逆の手を私の手と重ねる。
『…うん、話そう』
夜光さんの返事を聞いて部屋へと上がってもらう。
「どうぞ」
電気を点けてソファに腰をかけた夜光さんにお茶を差し出す。
『ありがとう』
二人きりの空間になるとさっきまでより緊張感が増す。
『…えっと、何が聞きたい?』
「!」
夜光さんに聞かれて自分の手を強く握る。
そもそも私たちは付き合ってもないのに、凄く図図しい。
たった一度だけ、夜光さんの気紛れで夢を見ただけなのに。
「えっと」
『…』
そんなことを思っていると夜光さんから声を掛けられる。
『俺がいない間、何かあった?面白いことがあったなら聞かせてよ』
「あっ、…はい。今年のブライダル公演はPとWの同時公演になって…」
『うん』
私が話す言葉に対して頷く夜光さん。
少しずつ夜光さんがいなかった期間の話をすると、その距離は前までと同じように近付く。
「それでですね、真珠さんは鷹見さんにパソコンを習う…って。あっ」
『ん?』
「すみません。私ばっかり話して」
『いや、いいよ。あなたの声を聞いているの心地いい』
「えっ?」
『仕事で疲れてるのかも。らしくないよな、今までだって働いてた経験なんてあるのに』
そう言って夜光さんの頭が右肩に乗っかる。
『…あなたが嫌じゃなければ、このままでもいい?』
「っ!い、嫌だなんてそんなこと」
『ふふ。ありがとう』
そう言ってしばらくすると夜光さんは静かに寝息を立てる。
「(結局、何も聞けなかったな…)」
そんなことを思って夜光さんを見る。
『(スヤスヤ)』
「ふふっ、口が半分開いてる」
でも夜光さんのその顔を見たらどうでもよくなってくる。
一緒にいられる時間を過ごせるだけで今はいい。
その日。
いつものようにスターレスへ着くと見覚えのある後ろ姿。
「…夜光さん?」
『えっ、あ…帝さん』
振り向いたその人はスタッフ用の服を着てエントランスに立っている。
『いらっしゃいませ』
「え、あの、どうして」
そう聞くと以前と同じように眉を下げて
『えっと…まぁ、ここで話すと長くなるんだけど』
そう答える。
「あっ、そうですよね。ごめんなさい」
『あ、いや。帝さんが謝ることではなくて、その』
『…ショーが終わったら待っててもらえる?よければ家まで送るよ』
「はい」
夜光さんに返事をしてテーブルへと通される。
正直ショーのことは覚えていない。
料理も何を食べたのかあまり記憶にない。
リンドウさんの付くテーブルだったから夜光さんのことを聞くにも聞けない。
私のその数時間は夜光さんのことでいっぱいだった。
『…お待たせ』
「あっ、はい」
その声に振り返ると夜光さんが思ってもみなかった顔をしている。
「?」
『バカだな。俺のことなんて、置いて帰れば良かったのに』
「えっ」
『俺があなたにしてしまったように…』
そう小さく呟くと
『……さ、行こう』
夜光さんは前を歩く。
「は、はい」
私はその後ろを付いていくように歩く。
家までに着く道のりで話す内容は在り来たりなことで
肝心なことにはお互い踏み込まない。
それを聞くには急すぎて、心の準備が出来ていない。
『えっと。家、ここだったよね?』
「…はい」
マンションの前に到着すると夜光さんが
『じゃ』
と言って背中を向ける。
「…まっ」
待って。
私、まだ何も聞けていない。
何でスターレスにいたのか。
これからまた夜光さんのいるショーが見られるのか。
あの場所に戻ってきてくれるのか。
そんな気持ちだけが先走って夜光さんの手首を掴む。
『んっ…?』
少し驚いた顔で振り向く夜光さんに
「あのっ、夜光さんが良ければ、お話しませんか?」
『話?』
「はい」
夜光さんは掴んでいた手とは逆の手を私の手と重ねる。
『…うん、話そう』
夜光さんの返事を聞いて部屋へと上がってもらう。
「どうぞ」
電気を点けてソファに腰をかけた夜光さんにお茶を差し出す。
『ありがとう』
二人きりの空間になるとさっきまでより緊張感が増す。
『…えっと、何が聞きたい?』
「!」
夜光さんに聞かれて自分の手を強く握る。
そもそも私たちは付き合ってもないのに、凄く図図しい。
たった一度だけ、夜光さんの気紛れで夢を見ただけなのに。
「えっと」
『…』
そんなことを思っていると夜光さんから声を掛けられる。
『俺がいない間、何かあった?面白いことがあったなら聞かせてよ』
「あっ、…はい。今年のブライダル公演はPとWの同時公演になって…」
『うん』
私が話す言葉に対して頷く夜光さん。
少しずつ夜光さんがいなかった期間の話をすると、その距離は前までと同じように近付く。
「それでですね、真珠さんは鷹見さんにパソコンを習う…って。あっ」
『ん?』
「すみません。私ばっかり話して」
『いや、いいよ。あなたの声を聞いているの心地いい』
「えっ?」
『仕事で疲れてるのかも。らしくないよな、今までだって働いてた経験なんてあるのに』
そう言って夜光さんの頭が右肩に乗っかる。
『…あなたが嫌じゃなければ、このままでもいい?』
「っ!い、嫌だなんてそんなこと」
『ふふ。ありがとう』
そう言ってしばらくすると夜光さんは静かに寝息を立てる。
「(結局、何も聞けなかったな…)」
そんなことを思って夜光さんを見る。
『(スヤスヤ)』
「ふふっ、口が半分開いてる」
でも夜光さんのその顔を見たらどうでもよくなってくる。
一緒にいられる時間を過ごせるだけで今はいい。