その小さな手を



その日から、二人は毎晩一緒に寝ることになった。
カガリ曰く“アスランはあったかくて安心する”らしい。

しかし、2人が一緒に眠る上でたった一つ問題がある。
それはアスランが大人の男であるということだった。


アスランは毎晩死ぬ気で熱を抑え込んだ。
今までどんな女を抱いてもこんな強い衝動は無かったのに…
よりによって、手を出せるはずもない幼い少女に対してそれが湧き起こるなんて。

その苦痛は並大抵のものではなかったが、それよりもカガリを抱きしめて眠ることの幸せが上回った。
自分の欲を押さえつけるかのように、アスランは抱きしめる腕に力をこめて眠った。





カガリが11歳のとき、アスランは仕事で2週間プラントを離れることになった。

秘書官のダコスタもアスランに同行するため、彼にカガリのことを頼めない。
アスランは親友のキラに毎日顔を出してもらうよう頼み、そのうえ敷地を囲むようにしてザフト軍を配備してもらった。
「職権乱用じゃないの」と親友は若干苦笑していたが。



「ずっとそばにいるって言ったのにな…。ごめん、カガリ」

「仕事なんだから仕方ないだろっ。私は気にしてないぞ!」


別れ際は、少女より17も年長の男の方が情けない顔をしていた。


「すぐ帰ってくる。毎日連絡する。風邪とかひくなよ。それから…」

「わかったってば、アスラン」

「寂しくなったら、いつでも連絡するんだぞ」

「ああ!」


そしてアスランは名残惜しそうにプラントを旅立った。


俺はこんなに不安なのに…
カガリは平気なのだろうか…。

別れ際のカガリの元気な笑顔が、少し苦しかった。

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