その小さな手を
思えば、初めて会ったときから君に惹かれていた
「アスラン…こわい夢みた…」
ある日、カガリは夜中にアスランの寝室を訪れた。
ポロポロと涙をこぼし、鼻水をすすりながら。
「おいで…カガリ」
アスランは笑って手を差し出して、その小さな体を自分のベッドに引き入れた。
自分を頼ってきてくれたのがたまらなく嬉しかった。
両腕で優しく包み込んで、頭を撫でてやる。
そして額と頬にキスを送る。
まだカガリの唇にしたことはないが、このときすでにもうアスランのキスには特別な想いが込められていた。
「落ち着いた…?」
「うん…ありがとう、アスラン…」
カガリが落ち着いてからも、アスランは少女を抱きしめ続けた。
「じつは…お母様がなくなったときの夢を見たんだ…」
「…そうか…」
カガリの口からそのことを聞いたのは初めてだったが、もちろんアスランは知っていた。
3年前にオーブの王妃が病で亡くなったことを。
身内が亡くなる痛みをアスランはまだ知らない。父も母も健在だ。
自分も経験したことがないような痛みをこんな小さな少女が知っていると思うと…抱きしめる力が強くなった。
「アスランのお母様は元気なのか…?」
「俺の母?」
突然聞かれて少し面食らったが、別に隠すことでもないのでアスランは普通に答えた。
「農業の研究をしてるよ。キャベツの品種改良とか…。最近は会ってないけどな」
「優しいか?」
「ああ、優しいよ」
「そうなんだ…」
カガリから心から嬉しそうな笑顔を向けられ、アスランは瞬きした。
俺のことを…自分のことのように喜んでくれるのか…。
「アスランは…いなくならないよな…?」
「当たり前だ。ずっとカガリのそばにいるよ…」
体を寄せてくるカガリをもう一度強く抱きしめた。
安心しきった少女はそのまま眠りについたが…困ったことにアスランの体には男性特有の熱が生まれてしまっていた。