その小さな手を
カガリがぐっすり眠ったその部屋で、アスランは仕事を始めた。
しかし先ほどのキスの反動でなかなか仕事に集中できないのが現状であった。
「~~~~っ」
時おり頭を掻きむしり、パソコンの画面はまったく動かない。
カガリの方が気になって仕方ない。
そして、先ほど頬にキスした感覚も…。
「…自分からしておいて、一体何してるんだ俺は…」
まるで思春期のような反応をしている自分が信じられなかった。
でも…こんな自分は決して嫌ではなく…
むしろカガリの顔を見るともう一度キスしたいという思いにかられてしまう。
「……さま…」
ふいにカガリの口から声がもれた。
起こしてしまったのだろうかと、あわててカガリの枕元に行ったら、彼女はまだ夢の中にいた。
「おとう…さま……」
「…!」
カガリの目から一筋の…なみだ。
「カガリ……」
カガリの漏らした言葉に胸を痛めながらも、アスランは頭を撫でてやることしかできなかった。
そうだ…まだ10歳なんだ。
いつも元気に走り回っていても、王女としても風格を持っていても
こんな遠い地でたった独りで…寂しくて仕方なかったに違いない。
ずっと気を張っていたのか…。
「カガリ…大丈夫だ。俺がいるから……」
歳の差なんて関係ない、ただ…この存在が愛しいと思った。
一人になりたいと思っていた頃が嘘のようだった。
…俺はカガリと一緒にいたい。
もう一度その朱い頬に口づけて――――
アスランは自分のこの想いを、正直に認めた。