その小さな手を
ある日、カガリは風邪をひいて熱を出した。
「大丈夫か…カガリ。何かほしいものがあったら言ってくれ」
2人でいるとき、アスランはこうしてカガリを名前で呼ぶようになっていた。
診療に来た医師が帰ってからもアスランはカガリのベッドに付き添い、離れる気はないようだった。
カガリはぼんやり眼を開けてやっと声を出した。
「アスラン…おまえ仕事…」
「俺のことはいい。仕事のことなんて後でどうにでもなる」
こんなときまで人の仕事のことを気にするカガリが可愛いと思った。
実際アスランが仕事を放り出したのは初めてだ。
こんな状態のカガリを絶対に一人にしたくないと、今日はダコスタに無理を言った。
いや…自分がカガリと一緒にいたいのか…
「仕事…サボったら…おこるぞ…」
まだそんなことを言っているカガリに、アスランは可笑しくなって柔らかく目を細めた。
これも一国の王女ゆえなのだろう。
「きみが怒ると怖そうだな…。分かった。ここで仕事するから、それでいいか?」
「……ん…」
ホッとして微笑んだ彼女の頬に、アスランは優しくキスを落とした。
家族にするような何気ないキスだったけど、してみてアスランは驚いた。
心臓がうるさいほど高鳴り…自分の顔が熱くなっていたのだ。
「…っ……///」
明らかに、今まで経験がない感情と症状だった。