その小さな手を



「おまえのおかげで助かったぞ。ありがとな!」


少女はにっこりと元気よく笑って言った。

何の曇りも企みも無い、純粋無垢な笑顔…。

しばらく会っていない母親を思い出す。
策謀だらけの世界にいるアスランにとって、この笑顔はとてもめずらしいものだった。


「………」

しかしこの子は…一体…


立って向かい合うと、改めてその身長差が浮き彫りになる。アスランは少女を計るように見た。

白いシャツに、動きやすそうなワイン色のショートパンツ。
一見なんでもない服装だが、ちょっとした飾りやデザイン、生地などは一般人の着るものじゃないとアスランは直感した。
だいたい一般人はこんなところまで入れるはずがない。


「君は…?」


本部にいるということは…議員の誰かの娘だろうか。
それならその人の所へ連れていってやらねば…とアスランは考えた。

しかし少女はアスランの想像を遥かに超える返答をしてきた。


「ぶれいもの。たすけてくれたことには感謝するが、おまえが先に名のるべきだろう」


その小さな姿に似合わない、凛とした口調だった。


「それとも、それが一国の王族に対するプラントのれいぎなのか」


「お…王族…!?」



地球の小国、オーブ王国――――

その第一王女、カガリ・ユラ・アスハ姫、10歳。



それが、この威勢のいい少女の正体だった。

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