その小さな手を



泣いていたカガリが止まった。
もちろんカガリもそんなことを言われたのは初めてだったのだ。

ゆっくり顔をあげて、アスランの言葉の意味を確認するように見つめてきた。



「君が15になったら、オーブに迎えに行ってもいい?」



「…アス……っ」



またカガリの目からは涙がこぼれ落ちて、嗚咽をもらしながらアスランのシャツにしがみついた。

そして、返事をもらえると思ってアスランは黙って待っていたのだが
飛んできたのは文句の声だった。


「ばか…!私の方から行くつもりだったんだからな…っ!」

「え?」


「一度オーブに帰って…お父様を安心させて、私が王女としてするべきことをしたら…正式にプラントに留学しようと思ってた…!」



カガリの告白に、今度はアスランの目が点になる番だった。
彼女がそんなことを考えていたなんて、アスランは夢にも思わなかったのだ。


「留学って…」

「もう人質なんかじゃない…、オーブとプラントで条約が結ばれたら、きっとアスランと対等な立場で会えるって思って…っ」


またもカガリの歳に似合わないすごい言葉が出てきて、アスランは苦笑した。
カガリに驚かされたのは一体何度目だろうか。


「ほんと君は……とんでもないお姫様だな」


クーデターのとき、キラが言っていた言葉だった。

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