その小さな手を
「2年くらい前に“キャベツの品種改良の本はある?”って聞かれたときも驚いたな。そんなのさすがに持ってないしねー」
「キャベ…ツ…」
先日アスランの実家に行ったとき、確かにカガリは母親とそんな話で盛り上がっていた。
あんな専門的な話、カガリの年齢を差し引いても分かる方がおかしい。
「カガリが…ほんとに…!?」
「あ…、僕がしゃべったことは内緒ね。口止めされてるから」
タブーを口に出そうとしているくせに、キラは意図的に言った。
「アスランに近づきたい、いつかお嫁さんになってアスランの役に立ちたいから、ってさ」
「―――っ…!!」
心が震えた。
押し寄せてくる喜びに
一瞬で涙腺が緩みそうになって…唇を噛んでこらえた。
カガリがそんなことを
全部…俺のために…
カガリがそんなにも俺を必要としてくれていたなんて――――
「…ありがとうキラ!」
そう短く言って、アスランは書斎を出た。
向かう先は2階のカガリの部屋しかなかった。
きっと俺が何を言っても、カガリが明日発つことに変わりはない。
それでも…
君の心に触れられたから…
俺の心にも触れてほしいと思う