その小さな手を
アスランがなぜ泣いていたなんて聞かない。
カガリには分かっていた。
自分も同じ気持ちなのだから。
「………」
何も言わないカガリを見て、アスランも察した。
カガリが強く心に決めていることを。
ああ
なぜ君は…もっと早く生まれてきてくれなかったんだ…
あと数年でも早かったなら
君を何度も抱いて
愛して
一生忘れられないほど深く溶け合えたのに…
「カガリ…。オーブに帰るんだな…?」
「うん…」
カガリは抱きしめていた腕を解いてアスランを見た。
まっすぐな琥珀の瞳も涙で溢れている。
その肯定の返事も、カガリの瞳も、アスランにとって意外なことではなかった。
全部分かっていた。
もし俺がオーブの問題を解決できたとしても
カガリを止める権利なんて、そんなものは最初からなかった・・
君の意志がすべてだ。
「でもアスラン…私…っ…」
カガリは何か言いかけて、唇を噛んだ。
「……いや。今までありがとう……アスラン」
その後カガリは自室に戻り、自分のベッドに入った。
一人リビングに残ったアスランは、そのままそこで朝を迎えた。
もう苦しすぎて…
「俺もありがとう」なんて言葉は、アスランには言えなかった。