その小さな手を
その後のことは、アスランに記憶はなかった。
あまりに突然のことで、現状を理解するのが精一杯だったのだ。
気がつけば帰宅していてリビングのソファーに座っていた。
カガリは向かいのソファーでおとなしく本を読んでいる。
「……っ…」
その愛しい人の姿を見て苦しくなる…。
カガリが帰ってしまう
ここからいなくなる…!
そんなこと微塵も考えていなかった。
いや考えないようにしていた。
ずっとここにいると思っていた…!
まさかこんな簡単に
こんなあっけなく…カガリが…。
―――俺は、カガリが人質だという事実から目を背けていた――――
カガリがここにいる背景には、プラントがオーブを支配している現実があるということを。
何がカガリの保護者だ…
何が最高評議会議員だ…
カガリは誰の力も借りず、自分の手でオーブを救った。
俺は何もできなかった。
“私は国をまもりたいんだ…!”
10歳の女の子があんなこと言って、たった3年で本当にやってのけた――――
王女であることを誇りとしているカガリ。
そして自分の身を犠牲にしてまで守りたいと願ったオーブ。
カガリは喜んで国に帰るだろう…。
俺に…カガリを止める権利なんて
ない――――