空も風も
卒業式までの間、俺はベッドで塞ぎ込んでは河川敷へカガリの姿を探しにいくということを
バカみたいに繰り返した。
カガリは、卒業式の翌日に出立すると言っていた。
そして…
“一生…戻らないかもしれない”
刻々と迫ってくる永遠の別れを―――未だ俺は受け入れられずにいた。
「カガリ………」
今日も、誰もいない河川敷でつぶやく。
出立の準備でもしているのだろうか、
毎日その姿を探しても、彼女はいなかった。
行くあてもなく…
抜け殻のような状態で、風に流されるように下流へ下流へと歩いて行った。
普段来ないようなところでカガリがいるはずもない。
それでも。
無心で金色の髪だけを探し求めている状態で、ふと、奇跡的に視界に入ったものがあった。
草と石ばかりの河川に…異質な、黒のビニール製の――――
「……?」
何かに導かれるように、俺はその物体に近付いた。
丸型のポーチ。
―――見覚えがある。
これは……
“あの日、失くしちゃったみたいで”
カガリがいつも聴いていた
CDホルダー…?
階段から落ちたときに失くして、こんなところまで流されていたのか。
ポーチ自体は濡れていたけど中身は無事かもしない、と。
確認のため開いてみただけだったけれど
そこには、想像を絶する光景があった。
「…なんだ、これ………――――」
CDを1枚1枚めくっていくにつれ、俺は全身の肌が粟立っていくのを感じた。