空も風も



真っ白になった俺の頭の中で、唯一理解できたのは
冗談なんかじゃない、本気の話だということだけ。

カガリの震える唇も声も…すべてが真実だと告げていた。




俺はカガリの言葉を確かめるように繰り返した。


「ずっと…前から…?」

「ああ」


俺がカガリを好きになる前から

この別れは決まっていた・・・?


「いやだ…カガリ……」

「今まで黙っててごめん…。お前の受験の邪魔をしたくなかった」

「いやだ…!」


いやだ、離れたくない
離れたくない・・・!!

カガリ・・


「アスラン……」


まるで駄々をこねる子どもと、それをなだめる母親のような。
カガリの口調で俺はハッとした。


「じゃあ…!俺も行く……!!俺も、一緒に…!」

「え…」

「カガリと一緒に行きたい、どこの国でもいいから!」



「バカ…!!」

「!」


彼女に一喝されて、怯んだ。
涙でぼやけた俺の視界には、怒った彼女がいた。



「お前にはお前の…やるべきことがあるだろう?」



「医者になるなんて、誰もができることじゃないんだぞ…」



医者…?
やるべき…こと…?

そんなものない

親に言われるまま勉強して
親の決めた大学を受けただけで…

自信も誇りも


俺にはなにも――――!!


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