空も風も



君に心を奪われてから、半年―――

よりによって受験戦争まっただ中に恋をした。


最初は話しかけることすらできなくて
勇気をもって話しかけても拒絶されて

君の心の傷を知って
初めての笑顔を見せてくれて



好きな人と笑い合えることはこんなにも世界が変わるものなんだと

君が教えてくれた








「―――終わりです。ペンを置いてください」

試験管のよく通る声で、みんなが一斉に小さく息を吐いた。


「終わった……」


卒業式を一週間後に控えた2月末、俺は大学入試の全日程を終えた。
やっと、やっと受験が終わった。

すぐにでも思い描くのは、彼女の笑顔。


カガリとは、一昨日河川敷で10分ほど会うことができた。


“がんばって、アスラン”


“試験が終わったら、ここで待ってる。どんな天気でも”



嬉しすぎて心臓の音が届いてしまうかと思った。

“待ってる”なんて初めて言ってくれた。


試験会場から直接向かう先は、当然あの場所。
幸いにも今日は天気がいい。



・・・もう一度言ってもいいだろうか。

君が好きだと



あの雨の日にした告白は、君を苦しませてしまったけれど

今なら

今なら笑ってくれるかもしれないと…

うぬぼれてもいいだろうか

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