空も風も
“私見たわよ?アスハさんがスーツ姿のオヤジと歩いてるの”
あのとき衝撃を受けたクラスメイトの言葉が、一瞬にして蘇った。
なぜ――――
「カガリ……ッ!!」
飛びだしたのが先だったか叫んだのが先だったか。
頭のネジがぶっとんだようで夢中で叫んでいた。
衝動的に腕をつかむとカガリは大きく目を見開いてた。
「アスラン…!?」
「カガリ…!なにやってるんだ!」
「えっ…」
「行こう」
中年男には目もくれず、俺はとにかくカガリをここから連れ出そうとした。
“援助交際”
“売春”
2年以上前から誰もが知っている彼女の噂に
胸が焼かれそうになった。
コントロールがきかない、激情。
「ちょ…まてよ……っお前…!」
「なんでこんなことするんだカガリ!!もっと自分を大切にしてくれ…っ!」
「待っ…アスラ…」
「私の父だ!」
カガリの一言は、まるでバケツの水を投げ込んだかのようにその場を鎮火した。
「―――え・・」
父・・・?
止まった、時間。
なおも思考が追い付かない俺にカガリがもう一度言った。
「この人は私の養父なんだ」
「どうも、カガリの父です。娘がお世話になっております」
「――――!!」
俺は絶句して、その後の会話はまったく頭が働かなかった。