空も風も
やっと、こうして話せるようになったのに
もう高校生活は残りわずか―――
「大学や専門学校に行くとか…決めてるの?」
「私は、進学はしないよ」
カガリの答えは意外にもあっさり返ってきた。
「じゃあ、就職か…」
俺はほっと息をついた。
安心した。
一番恐れていたことは、カガリが遠くの大学に行ってしまうことだった。
俺の志望大学は自宅から通える。
カガリが就職なら、距離が遠くなることはない。
「アスランはどうするんだ?予備校行ってるだろう?」
「俺は…いちおう、ユニウス大学医学部が第一志望で」
「医学部…、医者になるのか。すごいな」
「あ……」
痛いところをまっすぐ突かれたようにドキッとした。
志望大学は決まっているのに、医者になることはまだ自分の中で決まっていないなんて
情けなくて言えなかった。
「私も…できることなら医者になりたかったな」
「素敵な仕事だと思う」
何か想うように、カガリは遠くを見ながらそう言った。
両親の死を、友人の死を
想っているのだろうか。
俺にはカガリのように近しい人を失ったことも、心を閉ざしてしまうほどの傷を負ったこともない。
自分の将来すら定まらず迷ってばかりで…
それでも、カガリといられるなら
第一志望の受験に全力を注ごうと思った。
卒業後もカガリのそばに…
そのためだけに。