空も風も
初めて血の海を見たのは…6歳のときだった
暴走車から私をかばって、両親が死んだ
知ってた…?血って少量だと赤いけど、多量だと黒いんだ
何度も夢にでてきて、黒い海の中でもがいてた
血も死も、私にとっては日常だった
暗闇から引きあげてくれたのは、児童養護施設で出会ったアフメドだった
毎日話しかけてくれて、笑わせようとしてくれて
私は救われた
でもある日、アフメドは一人で山に行って滑落した…
私にプレゼントする石を探しに行ったって
血まみれで、冷たくなってた
みんな、私に関わらなかったら死ななかった
お父さんも
お母さんも
アフメドも
みんな…
それから私はずっと独りで生きてきた
周りにどう思われてもいい
ただ、生きていてほしい
もう誰も失いたくない
死なないでアスラン―――
「…俺は、生きてるよ」
体温を伝えたくて
俺の手にすがりつくようにしていた華奢な手を握り返した。
「ほら、ちゃんと生きてるから」
「アス…ラン…」
やっと顔をあげた彼女の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていて
不謹慎だけどそれが嬉しかった。
心をさらけ出してくれたことも。
「みんな、きみのことが大好きで…。ただ一緒にいたかっただけなんだよ」
「だから、人を拒絶しないでくれ」
…また一雫。
涙をこぼした彼女を抱きしめたかったが、キスの前科で自重した。
傷だらけの手でそっと、輝く金色の髪を撫でる。
「アスラン…っ…」
「俺も、カガリが好きだから一緒にいたい…」
その涙が止まるまで、俺はずっと撫で続けた。
一緒にいたい。
望むことは本当にそれだけ―――
高校生活は、もう残り3カ月を切っていた。