空も風も
「アスハさん、待って……!」
雨の中、河川敷の階段を駆け上っていく。
雑草で凹凸があるうえに濡れて不安定になっている階段を。
「来るな!!」
男女の差か、すぐに追いついてしまうと彼女は取り乱した。
掴もうとした手を振り払われれる。
「もう・・もう嫌なんだ私は・・!!」
「―――危ない!」
瞬間、階段を踏み外した華奢な体が傾くのを、見た。
「わああああぁぁ!!」
ズザザザザッ――――・・・
「……っ」
体中に激しい痛みが走った。
全ての動きが止まったとき、階段の一番下まで転落したのだと分かった。
俺の腕の中に、彼女がいた。
とっさに金色の頭を抱えていたのだ。
「―――おい・・お前・・っ」
ハッキリとした口調が聞こえて、彼女が無事なのだと知る。
よかった…。
「アスラン・・っ!!アスラン・・!!」
遠くなっていく、声。
俺の名前……?
「アスランしっかりしろ!!」
…俺の名前……呼んでくれた…
カガリ…
「アスラン・・・・ッ!!!」
「きれい…だ」
世界で一番美しい涙を見て、俺の意識は途切れた――――