空も風も
俺は、金縛りにあったかのようにしばらく動けなかった。
初めて引き出した彼女の感情は
想像を絶するものだった。
あんな苦しみを…いつも奥底に抱えているのか
傷を抉ったのは俺だ。
今まで理性的に生きてきたと思う。
自分で感情をコントロールできなかったことなんて無い。
なのに…
彼女の前だと何も抑えられない
こんなこと初めてだった。
―――それから、数週間、遠くから彼女を見つめるだけの日々が続いた。
捕まえて謝罪なんてしても、それすら迷惑だろうと思った。
教室で独り、誰とも関わらない、視線を合わせようとしない彼女を
ただ見つめていた。
想いは募るばかりだった。
“私に近付くな…っ”
何が君をそんなふうにしてしまった・・・?