氷姫は残照に熔く



1本の剣と、お金と、マント。
アスランはそれだけを携え、目立たぬよう下級騎士の形姿で葦毛の愛馬に飛び乗った。

―――オーブの公女を探し出す。
でもこの広い世界をやみくもに探すわけにはいかない。


オーブ大公殿下は、プラントの東の海岸線を中心に捜索していると言っていた。
東方の島国オーブに帰るまでの道筋だ。
姫は自国に向かっていると思っているのだ。

しかし、アスランはそうは思わなかった。
あんなことをして自国に帰りたいと思うだろうか。
たどり着いたとして、島国だ。逃げることが難しくなる。
そして何より、船を手配しないとオーブに渡れないのだから、そこで簡単に足がついてしまう。
他国に行くにしても関所がある。

ならば、まだプラント国内に・・。



――カガリの、プラントでゆかりある人物や場所、だと・・?

――はい、もしお心当たりがあれば教えて頂けますか。

――たった一つ、あるにはあるが・・もう他界しておるのだ。その家も空き家になっていて、カガリはいなかったと先ほど報告があった。

――それでもかまいません。教えて下さい。

――カガリの乳母夫婦が、オーブからプラントに移住しておってな。昨年流行り病で亡くなるまで、ずっとカガリと手紙のやりとりをしておったのだ…。


アスランは、その家がある町を聞いた。
疑惑はさらに深まった。
アスランはこの国の王族として、オーブ大公よりも多くのことを知っているのだ。
―――この町は、ここ何年も流行り病など報告されていない―――

まずはこの町で情報収集だ。


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