氷姫は残照に熔く
――ね、カガリ…俺たちは実はすごく幸せなんじゃないかな
――しあわ…せ…?
隠れ家からの帰路。
二人でルージュの背に乗り、険しい山道を進みながらいろんなことを話した。
この山を越えれば、ついに王都が見えてくる。
――確かに俺たちの一生に、自由はない…
友人と遊んだり笑い合ったりすることもない
常に責任と重圧があって、命の危険があって、人のために尽くしても恨まれることがある……
上に立つ者として、その闇を十分知っているカガリは表情を曇らせた。
でもなぜかアスランは微笑んでいる。
――でも、心から愛する人と結婚できるんだよ
――・・っ・・
――立場上どれだけつらいことがあっても、毎晩カガリと一緒に眠れる。……こんな幸せなことってない
あのとき、澄んだ翡翠の瞳に、自分が映った―――
「・・アスラ・・ッ」
プラントの港町が遠ざかっていく…。
帰国の途につく船上で、カガリは涙が止まらなかった。
悲しみじゃない。
温かさが胸いっぱいに溢れて。
“カガリには俺がいる。もう一人で抱え込まなくていいんだ”
“1年後、結婚しよう”
「アスラン・・・」
ここにいないのにアスランに抱きしめられてるような感覚―――
ああ・・
こんなの一生分の奇跡だ
アスランに出会えて・・よかった
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