氷姫は残照に熔く
まただ。
また、私は、公女としてしか決められなかった。
そうじゃない、ただの一人の人間として・・
自分の心で答えをださなきゃいけなかった。
王族としての彼じゃない
ただ目の前にいるアスランを好きになったのに
「アスラン!アスラン・・っ!!」
「!」
アスランの右足はまだ完治していないため
馬を飛ばして追い付くのにそう時間はかからなかった。
山の中腹で濃紺の髪を見つけた。
「カガリ…」
驚いて振り向くアスランを見つめながら、カガリは馬から飛び降りた。
剣はあえて小屋に置いてきた。
…剣を返しにきたわけじゃないから。
“バカ”とか“あんな貴重なもの置いていくな!”とか言うつもりだったけれど
アスランの顔を見たら素直に言葉が出てきた。
「行かないで……」
「…!」
自分でも驚くような言葉と、アスランの反応で、カガリの感情が完全に振り切れた。
気が付けばアスランに抱きついていて、片足でバランスを失ったアスランはカガリを抱きとめながら倒れていた。
「わっ」
「いやだ、行かないで…!!」
…しばらくアスランは呆然として。
カガリの言葉をリフレインさせる。
独りが寂しいから?
友人として…?
でも、自分に抱きついているカガリの腕の強さと、想いがこもった声で
しっかりと本当の意味が伝わった。
「好き…アスラン…」
嬉しすぎて顔が崩れる…。
すぐにアスランもその華奢な体を両腕で包み込んで、愛しさを伝えた。
「…俺も」