氷姫は残照に熔く



そのまま杖をついてアスランが向かった先は、昼間水浴びをしていた川。
ザブンと音をたて、躊躇いなく一気に腰まで浸かった。

夜の川はかなり冷たい。
頭と体を冷やすのにちょうどいい。


「はぁ……」


杖を放り出して水中で腰を下ろし、やっと深く息をつく。

・・・カガリを好きだと思う感情が、こんなにも露骨に体の変化に直結するなんて。


だめだと思っても湧き上がるものが止まらない。
汚い欲望に際限がない。
今すぐにでも小屋に戻ってカガリを犯したいくらいだ。

こんな一時しのぎ…、いつまでも通用しないだろう。


父の期限もある。
―――潮時だ。



「!」

ふいに背後から人の気配を感じた。
誰かなんて分かり切っている。
この半径数kmは他に民家もないのだから。


「カガリ…」


暗闇の中、オイルランプも持たず近づいてくる女性。
顔も見える前に声をかけた。

月光は雲に陰っている。


「アスラン、どうした…?眠れないのか?」

「……」

「あ、やっぱり水浴びしたくなった?私もちょっと入ろうかな」

カガリは無邪気に近づいてきて、足首まで水に浸かった。

「わっ冷たっ!」


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