氷姫は残照に熔く
「カガリっ」
慌ててアスランが杖を早める。
でもこの足ではカガリの体を起こすことはできない。
「大丈夫か?ケガは?」
「大丈夫。びっくりしただけ」
「よかった…」
「あーぜんぶ濡れちゃった。ついでにこの服洗濯しちゃお」
「っ!!」
――アスランは、見てしまった。
全身濡れたカガリが、まるで裸のように躰のラインがくっきりと出ていたのを。
服がピタリと肌にくっついて、鎖骨も胸も、腰のくびれも、ぜんぶが見えるのを。
裾から滴る水。
柔らかそうな曲線。
煽情的な白い脚。
その脚の付け根に……
一瞬か、数秒か、どれくらい見てしまったかアスラン自身も分からないほどに
時間が止まったような感覚だった。
「…アスラン?」
カガリに顔を覗き込まれて、ハッと我に返った。
あわてて視線を逸らしたが、アスランの網膜にはしっかりと焼き付いてしまった。
カガリの躰をぜんぶ。
すべてが男の自分と違う。
心臓がドクンドクンとけたたましい音をたてている。
自分の体が自分じゃないみたいに熱い・・一点に熱が集まっていく。
「おっ、おれ、ルージュの餌みてくるから、ごめんっ・・」
何から必死に逃げるように。
杖をついてない方の腕で顔を隠して、アスランは足早に立ち去った。
…その間もずっと、今の光景が頭から離れなかった。