氷姫は残照に熔く
「あれっアスラン、顔赤いぞ?」
「…っ……」
「そんな日差し強いかな…。日陰に移動する?」
そう言われて初めて、アスランは自分の顔が熱くなっていることに気づいた。
「え…、あ…」
どうしていいか分からない。
顔の熱の冷まし方が、分からない。
「だ、だいじょうぶだ…。久しぶりに動いたから…」
とっさに腕で顔を隠して、下を向いた。
カガリが子どもみたいに無垢に近づいて顔を覗き込んでくる。
「そっか、かなり動けるようになったみたいで、よかった!」
―――美しさと、純粋さと、眩しさと。
すべてを持ち合わせた奇跡の女性。
きみの瞳に俺はどう映っているのだろうか。
人道的に介抱すべき、けが人?
剣の先生?
きっと・・愛しいと
婚約者でいたいと思っているのは
俺だけ―――
「…もう1戦、しようかカガリ」
「うん!」
剣を撃ち合う中で、アスランは明らかに特別な想いをこめてカガリの顔を見つめていた。
仕合の最中ではどれだけ相手を見つめていても不自然ではない。
その特権を使って、いつまでも好きな人の姿に魅了されていた。