氷姫は残照に熔く
――アスラン、お前に友など必要ない。切り捨てよ。
――ちちうえ・・
――誰にも心を許すな。ただ国のために生きるのだ。
――はい・・
誰にも・・・
「う・・っ・・」
「よかった。気が付いたか」
アスランは、冷たい水を頬に感じて目が覚めた。
見知らぬ場所のベッドで眠っていたのだ。
体中が、あちこち痛い。
そばに誰かいるようだ。
「おまえ、崖から落ちたんだぞ。よく生きてたな・・」
崖・・。
そうだ、確か山間の危険な道を通ってて・・
「右足の骨折と、右肩の脱臼と、全身打撲だ」
言われてみれば右足がひどく痛む。
触ってみると添木が充てられているのが分かった。
「す、すまない・・」
「ああ、まだ起きちゃだめだ」
ぼうっとしていた頭がだんだんとクリアになり、アスランは無理に起き上がろうとした。
―――そこで、やっと相手の顔が見えた。
「・・か、がり姫―――」
「!!」
互いの時間が止まった。
アスランが2週間探し続けた女性の姿が、そこにあったのだ。