氷姫は残照に熔く
馬に乗って、カガリはその方向に向かった。
「…?」
なにか、奥から動物の鳴き声が聞こえる…?
馬…?
こんなところに!?
「た、たいへんだ・・・!」
カガリは驚いて馬の速度を上げた。
そこには人間が一人、馬が一頭、岩の破片に紛れて倒れていたのだ。
カガリはハッと上を見上げた。
「あの崖から、馬ごと落ちたのか・・」
ゾッとする高さだった。
破片の砂埃から見ておそらく落ちたばかり。
動かない人間と瀕死の馬、カガリは人間の方に触れて安否を確かめた。
――若い男性。
まだ生きてる・・・!
そのとき、カガリの目をくぎ付けにしたものがあった。
この男が腰に携えている剣。
「・・・!」
これは・・プラント王家の紋章・・・
プラントの・・騎士か上位貴族!?
まさか、こんなところに・・
私の追手―――?
「ぅ…、う……」
男が気を失いながらうめき声をあげると、カガリは大きく息を吸い込んだ。
人命が最優先だ・・!
「ルージュ、この人を運ぶぞ!」