quartet



「カガリはただ恋愛事に疎いだけで、決して人の気持ちに鈍感なわけじゃない」


はっとして、カガリは顔を上げた。
大きな手が自分の頭の上にぽんっと置かれたのだ。


「ちゃんと人の気持ちを察することができる優しい奴だって、俺は知ってるよ」



風が―――胸を突き抜ける


そう優しく微笑むアスランが、カガリは急に別の人に見えた。
なぜか引き込まれるようにしてアスランを見つめてしまった。



「あの二人はまあ・・ただきっかけがなくて付き合うまでに時間かかっただけじゃないかな」

「・・・」

「ラクスは学校一の美女とか言われてて、キラも自信なかったみたいだったしな」


そこでカガリはハッと現実に戻った気がした。


「あ・・っ、もしかして、アスランもラクスのこと好きだったり・・した!?」

「えっ!?」

「だって私ほんと何も気付かなかったから・・。アスランの気持ちもそうなのかと思って」


アスランは思わず頭を抱えた。
俺がラクスを・・なんて、どうしてそういうことになるんだ・・
という小さな呟きはカガリには聞こえなかった。

この鈍感さはもはや罪に近い。


「あ・・ごめん、こんなこと直接聞くなんて反則だよな」

「い、いや・・」

アスランは折れかかった気持ちをなんとか立て直した。
ショックを受けてる場合ではない、ここはハッキリ否定しておかないと。
こんな誤解は絶対ごめんだ。


・・カガリにだけは。


「俺はラクスに特別な感情はもったことないよ。キラもラクスも大事な友達で、仲間だ」

「そっか…」


カガリはほっと一息ついた。
それは、アスランが傷ついたりせずによかったというもので、他意はない。

そのことをアスラン本人は嫌と言うほど分かっているので
無言で天を仰いだ。




『キラもラクスも大事な友達で、仲間だ』


カガリの名前は入れなかったんだけど・・・

やっぱり気づいてくれない・・か

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