quartet
「あー・・手が出そうになっちゃったのね」
その夜、キラの家では男二人だけが集まっていた。
もしかしていいところを邪魔してしまったのではと、キラがアスランを呼び出したのだ。
本当は面白くてアスランの話が聞きたかっただけなのだが。
「元々はお前らが部室でそういうことしてるからだろ・・。せめてカギかけろよ」
「はは、ごめんごめん」
「カガリも涙目であんなこと聞いてくるし・・」
“アスランは・・誰かと付き合ったり、そういうこと・・したことあるのか?”
パニックで目を潤ませたままアスランを見上げてきて。
その上あの問いかけ。
グラっとこない方がおかしい。
高校に入ってカガリに会うまでまったく異性に縁がなかった、それが真実だというのに。
「きみもさ、いい加減カガリに言っちゃったら? 好きだ、って」
幸せのおすそわけのようなおせっかいで、キラがずばっと核心を突いた。
「ハッキリ言わないとカガリは一生気づかないよ?」
「わかってるよ・・・」
「もう我慢も限界じゃないの」
「限界だけど・・・」
「けど? 向こうはアスランを恋愛対象として見てないって?」
アスランはテーブルに肘をついて項垂れた。
こんなこと言いたくもなかったが、吐き出したいくらいに限界で。
「それ以前の問題だよ・・。男だと思われてない・・・・」
「ええー?なにを根拠に」
「・・先月、俺が部室に入ったら、カガリが着替えながらロッカーの影から出てきた」
「・・・・」
キラはフォローの言葉がなにも思い浮かばなかった。
「好きだなんて言えるわけないだろう?」
「カガリ、高校生・・だよね?こういうのって普通女の子のほうがマセてるんじゃないの・・」
「そういうところがいいんだよ、カガリは」
カガリをバカにされた気がして、少しムッとなりながらアスランは返した。
彼女のそういう純真無垢なところにやられてしまったのだ。
いつか自然に意識してくれる日が来たら・・・と思ってもう1年以上だが。
「前途多難だねぇ」
キラは7割方面白がっているような顔でその場を閉めた。