恋唄 第3話
苦しい。
こんなに好きなのに届かない。
自分を見てもらえない―――
ふいに、俺のベッドからカガリの残り香がした。
シーツごと抱き締めたくなって…
昨夜なぜ無理矢理にでも自分のものにしなかったのかと、後悔してる自分がいた。
だめだ。
こういう感情に押しつぶされないように、1年前カガリとの別離を選んだのに。
…どんな苦しみの中でも優しく彼女を想える方法が
あればいいのに
【恋唄 第3話】
「カガリにそんなこと言ったのか!?ルナマリア!」
「え、うん。なんかマズかった…?」
数日後、講義の合間にルナマリアとばったり会うと、
あの飲み会の会話を彼女の口から聞いた。
カガリとはあれから顔を合わせていなかった。
「私にちゃんと彼氏いることは言ったし…。何よりアスランの援護射撃のつもりだったのよ」
「援護?」
「アスランがあの子のことを誰より可愛いって言ってたことを教えてあげたくて…」
きっとカガリはそんなこと言われてももう頭に入ってないだろう。
…できることならカガリにはあまり知られたくなかった、その辺の詳しい話は…。
どんなことがあったとしても、俺がカガリを好きなことには変わりはない。
最初から、余計な情報は無しでそれだけを知って欲しかった。
「ご、ごめんアスラン」
「…いや」
カガリもルナマリアも、何も悪くない。
「元はと言えば俺が悪いんだ。好きな人がいるって言ったから、話が広がって…。」
そんなの普通に考えて居辛いと思う。
入学式の後だってカガリは怒ってた。
なのに俺は…
自分の想いが叶わないからって、八つ当たりした。
「…ちゃんとカガリに謝らないといけないよな」
5年後でも10年後でもいいって言ったのは俺自身。
その言葉に嘘はないから…。